第二十七話 ガーランド帝国、侵入
2020/12/16 全体的に修正しましたが、内容はそれ程変わってません。
ガーランド帝国に降り立ってから、翌日の夕方前に目的地に到着した。
そこは《オルネア街》と言い、勇者達召還者がレベル上げを行うダンジョンがあった。
帝都からは、目と鼻の先だ。
「やっと、着いた」
「何を言ってるニャ。急ぎ過ぎニャ」
『ご主人様、酷いです』
『シャルロッテは、物足りなかったのか?』
『ご主人様を乗せてもっと走りたかったのに、直ぐ《転移魔法》を使うんですもの。プンプン!』
『ごめん、ごめん。移動に、時間を掛けてられなかったんだ』
僕とシャルロッテは《テイム関係》にあるのだが、否定的な言葉を使っても問題無いようだ。
それは僕にとって、有難い事だった。
《絶対服従》なんて、嫌だからね。
そして、シャルロッテが言うように、僕はここへ来るまでに《黙視転移》を繰り返したのだ。
◇
オルネア街で行動を起こす前に、到着する前の出来事を簡単に説明しておこうと思う。
ガーランド帝国で最初に降り立った場所は、砦の前方の街道だった。
道幅は広いが、国交も無く使われてないので、雑草が生い茂っていた。
その両側には森が広がり、開けた場所は砦の周辺だけである。
「上から見たら気が付かなかったけど、雑草だらけだな」
「本当ニャ」
『ご主人様、私なら大丈夫です。走れます』
『いや、急いでるんだ』
僕はそう言うと、街道沿いを《目視転移》した。
数回転移を繰り返すと、《ノースブルム大峡谷》の砦から十キロ程先に、《ガーランド帝国軍》の拠点となる砦の街が現れた。
「ご主人、どうするニャ」
「ここに用事は無い。身分証も無いし、迂回する」
遠回りになるが、迂回する事にした。
「シャルロッテ。壁伝いに、走ろうか?」
『分かりました』
この場所から、勇者達がいる《帝都》は随分と離れている。
できれば兵が集まる前に、勇者達を参戦できないよう何とかしたかった。
シャルロッテを走らせ見通しの良い場所へ行くと、再び《目視転移》を繰り返した。
◇
移動の途中、大きな街が見えた。
「ちょっと、あの街に寄るぞ」
「どうしてニャ?」
「塩を売って、お金に換える」
「お金が必要ニャ?」
「ああ、後々な。その前に、変装をしよう」
そう言うと、僕は魔法袋から《腕輪》と《リボン》と《ハミ(馬具)》を取り出した。
これらは、《変装用》の魔道具である。
勇者達の何人かは《鑑定》スキル持ちで、彼らに素性がばれるのが嫌だった。
なので、ステータスや声も偽造できる物を、事前に作っておいた。
魔法ではできない事が、錬金術でならできたのだ。
僕は左手首に銀の腕輪を取り付け、金髪から茶髪で平凡な顔立ちにした。
新調した武器や防具も、まだ必要無いのでしまった。
シロンには首輪に装着できる赤色のリボンを取り付け、白毛からグレー毛にした。
シャルロッテはハミという口に咥える馬具を付け替え、栗毛から青毛にした。
ステータスも大幅に変更し、一般の人や猫や馬に偽装してある。
「ご主人、元に戻した方がいいニャ」
『私もそう思います。イケメンのご主人様しか、乗せたくありません』
「二人共、我慢してくれよ」
この後、何とか二人を説得した。
街に入ると、寄り道する事なく商業ギルドに足を運んだ。
買い取りカウンターで塩を見せると、十キロ三十五万ギルという今までにない高値で売れた。
ちなみに、《ギル》はこの国の通貨単位だが、価値は《マネー》とおおよそ同等である。
僕達はお金を手に入れると、先を急いだ。
このように、ここへ到着する前、ちょっとした事があったのである。
◇
オルネア街に到着すると、真っ先に《ダン防》へ足を運んだ。
そして、《ダンジョン探索者試験》を申し込んだ。
国交の無いガーランド帝国では、エステリア王国のダンジョン探索者カードは使えないのである。
ここへ来てまでダンジョンに入る理由は、ちゃんとあった。
勇者達を封じ込める作戦を、実行する為である。
ダンジョンならパーティーで行動するので、少人数で対峙できる。
それに、少しくらい暴れられても、周りへの影響は少なくて済む。
お金が必要だったのは、試験や入場料の為だったのだ。
今回も例によって《ご都合主義》が働き、試験は明日受けられる事になった。
試験の申し込みを済ませると、繁華街を見て歩いた。
ふと目に飛び込んだのは、魔道具屋だった。
「二人共、ちょっと待っててくれ。魔道具屋を見てくる」
「ニャー!」
「ヒヒーン!」
手綱を柱に縛り、二人に留守番を頼んだ。
店に入ると、帝都に近い事もあり、魔道具の品数はそれなりにあった。
しかし、僕の目当ては他にある。
「魔法書も、置いてるな」
その目的は、持っていない魔法書を探す事だった。
「あれ? ここいらのって、上級の魔法書じゃないか? しかも、安い!」
僕は、驚いた。
上級の魔法書が、下級や中級の魔法書と一緒に並べられていた。
しかも、ほぼ同額の安い値段である。
「嘘だろ! 《飛行属性魔法》まであるよ! 《ご都合主義》にも程があるだろ!」
今まで諦めていた《飛行属性魔法》の魔法書を手に取り、僕は更に驚いた。




