表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/401

第二十六話 それぞれの動向、再び

国防の要《ノーステリア大公爵領》の領主執務室に、自領の放った諜報員から報告が届いた。


「王都の諜報部からの情報は、正しかったという事だな」


「はい。私共の諜報員からの連絡によると、『食料・武器・兵士の動きに、戦争の兆し有り』と、あります」


「開戦は、いつ頃になりそうだ?」


「どうも、秋頃に動き出しそうです」


「それも王都からの情報と、合致するな」


「王都には、優れた諜報員がいるのでしょう」


「我が領の諜報員も、優秀なのだがな」


「そうでございますね」


この情報はユミナの《未来視》があっての事なのだが、二人は知る由も無かった。



「先の戦争から二年も経たず、《魔王襲来》まで一年を切ったというのに。奴等は、何をトチ狂っておるのか?」


「はい。それで勇者達なのですが、ダンジョンを攻略しているとの事です。戦場に投入されるかは、今のところ不明です」


「そうか。王都からの情報が、間違っていればよいのだが」


「そうですね」


「それで、三十九人の勇者達は、どれくらい強くなったのだ?」


「勇者が率いる最強パーティーは、もう幾つかのダンジョンを攻略しています」


「そこまで強くなっているのか。我が国に、どれだけ対抗できる者がいるだろうか?」


「ここは、アレン殿に動いて貰わねば」


「そうだな。《勇者》に対抗しうるは、《魔王》を除くと《英雄》だろうな」


「はい」


「しかし、加勢してくれるかどうか?」


「そうですね」


「私から、『参戦依頼』の手紙を書く。探し出して、渡してくれ」


「分かりました」



「欲を言えば、我が領から巣だった王国騎士団員達や、ラングレイ伯爵やグルジット伯爵がいてくれれば良いのだが」


「その方達は、王都の守備の要ですからね」


「そうだな」


「しかし、大公爵様はその強さを凌ぐのでは?」


「何を言う。わしは、もう歳だ」


「いえいえ。まだまだ、お若いですよ」


「兎に角、戦争の準備を進めなければな」


「はい。各領主へ、その様に伝えます」


こうして、国境付近の領地でも、本格的に戦争の準備が進められた。



一方、ガーランド帝国帝都の、勇者達に与えられた屋敷では。


「よー、戦争だってよ。どうする?」


「俺らなら、楽勝だろ。何てったって、勇者御一行様だからな」


「でもよー。ショッパナ《魔王》を殺せって言ってたのに、話しが違わねえか?」


「そんなの、どうでもいいんだよ! チート能力を、ぶっ放せりゃ!」


「キーヒッヒッ! 堂々と、人殺しができるぜ!」


「ギャハハッ! 皆殺しだ!」


「俺はもっと、贅沢してえな!」


「それなら、たんまり褒美を掠めねーとな!」


「爵位はどうだ?」


「おう、それいいな。ついでに、新しい女も追加だ!」


「おう、お前ら。国から奪える物は、全て奪うぞ。勿論、《皇帝の座》もな!」


こんな会話が、されていた。



そして、ガーランド帝国帝都、皇帝城の会議室では。


「くそっ、勇者共め。爵位に金に私達の娘だと! 何と欲深いんだ。頭に乗りおって!」


勇者達の参戦の条件を聞いた皇帝は、頭にきていた。


「陛下、如何致しましょう?」


「あんな奴等に、姫はやれぬ。お前達の娘もだろ!」


「「「「「「「「「「その通りで御座います!」」」」」」」」」」


「では、《戦勝後》にエステリア王国の姫と、貴族の娘を差し出すとしよう」


「「「「「「「「「「おおー!」」」」」」」」」」


「戦争に勝てば、国土も金も手に入る。爵位も金も女も、後払いだと伝えろ!」


「分かりました」


その後、物資や戦術その他もろもろを話し合い、会議はお開きとなった。



会議室には、皇帝と宰相だけが残った。


「奴らを召還して直ぐ、無理矢理にでも《隷属の首輪》を嵌めれば良かった」


「奴等の中に聡い者がいたのは、誤算でしたな」


「召喚して、いきなり指摘しおった。まだ、首輪を目にしてないのに」


「《テンプレ》とか、言ってましたな」


「ああ。だがあやつは、使い者にならんかった。警戒心だけは、強かったがな」


「邪魔なので帝都を《追放》しましたが、結局奴のせいで他の連中も警戒を強めましたな」


「ああ。今となっては、悔やまれる。やはり、我らの力だけで何とかならぬのか?」


「あの砦を越えるには、圧倒的な力で一気に攻め込まないと駄目です。長期戦になると、その後の戦況に響きます」


「そうか。だが、奴らを統率できるのか?」


「はい。ギルガメッシュ大将軍なら、勇者達を御せるかと」


「分かった。ギルガメッシュ大将軍に託そう」


「ご決断、ありがとう御座います」


こうしてガーランド帝国皇帝は、改めて勇者達の参戦を認めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ