表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/401

第二十四話 突然の報せ、再び③

ソフィア様から《ユミナとの結婚》を迫られ、僕は動揺していた。


そして、ユミナにもその意思がある事を知り、更に動揺した。


それらは僕にとって、『戦争』と聞いた時以上の衝撃だった。


「ニコル君。ユミナちゃんは、結婚してもいいそうよ」


「ソフィア様。僕達はそういう関係じゃないし、いきなりそんな事を言われても」


「分かったわ。少し、考える時間をあげる。でも、ニコル君に断られたら、ユミナちゃんはどうなってしまうのかしら。多分、一生誰も愛せないわ。ああ、可哀想なユミナちゃん」


「うっ!」


逃げられないよう、ソフィア様は僕を追い込んでいった。


「あの、僕、もうそろそろ帰ります」


「あら、泊まっていけばいいのに」


「いえ。この後、用事があるので」


勿論、用事など無かった。


「あら、そうなの? それじゃ近い内に、またいらっしゃい」


「はい、失礼します」


何となく、嘘がバレているような気がした。


それでも、ソフィア様から逃れる為に、僕は立ち上がった。



「待って、ニコル君!」


『ビクッ!』


その言葉に驚き、僕は背筋を伸ばした。


「何かな?」


そして、ぎこちなくユミナの方を向いた。


「驚かせて、ごめんなさい。少しだけ、話しをさせて下さい」


「うっ、うん」


何て答えていいか分からず、僕は頷きそのままソファーに座った。


「お母様、席を外して下さい」


「あらあら、私はお邪魔なのね。それじゃ、またね。ニコル君」


「はい」


ソフィア様はユミナの要望に応え、大人しく応接室を出ていった。



「ニコル君。突然こんな事になって、ごめんなさい」


「うっ、うん。少し、混乱してる」


「でも、お母様の言った事は、否定しません。じっくり考えて、その上で答えを聞かせて下さい」


「分かった」


今はまだ、どんな結論を出すか分からないが、改めて《返事の約束》をユミナと交わした。



「それと、《戦争》の件ですけど」


「うん」


「ニコル君が《ガーランド帝国》へ乗り込む時、私も連れて行って下さい!」


「えっ!」


「お願いします!」


ユミナはそう言いながら、胸の前で両手を握った。


「いやいや、駄目でしょ。何が起こるか分からない」


ユミナの《お願い》に抗えない僕だったが、今回は別だ。


「でも、私の能力があれば!」


「それでもだ!」


「私。いつもお願いするだけで、申し訳なくて」


「大丈夫、任せて。一人で何とかする!」


僕は真剣な眼差しで、ユミナを見詰めた。



暫く見詰め合いが続き、折れたのはユミナの方だった。


「分かりました。ニコル君に任せます」


「ああ、任せてくれ!」


「くれぐれも、気を付けてください」


「ああ、気を付ける。それじゃ、そろそろ帰るね」


ユミナに別れを告げ、僕はグルジット邸を後にした。



平民街まで歩き門でチェックを受けると、寄り道をせず自宅に帰った。


「困った」


自宅に帰るなり、出た言葉がそれだった。


「ご主人。何を困ってるニャ?」


「戦争が、また起こるんだってさ」


《結婚話し》にも困っていたが、シロンの前では口にしなかった。


「何でご主人が、悩むニャ」


「ユミナから、『何とかして欲しい』って、頼まれたんだ」


「そんなの国が、何とかすればいいニャ」


「それはそうなんだけど、《ガーランド帝国》が《魔王討伐》の為に《勇者召喚》をしたんだって。それが、《日本人》を四十人もだぞ。


彼らをダンジョンで三年も鍛え、その内三十九人を戦場に送り込むらしい」


ユミナには『内密にして欲しい』と言われたが、猫相手なのでセーフである。



「それって、もしかして《クラス召喚》なのかニャ?」


シロンは以外にも、《クラス召喚》の事を知っていた。


「多分な」


「そいつら、強いニャ?」


「ユミナの《未来視》スキルだと、勇者は一人なんだけど国境の砦を突破するくらいは強いらしい」


「王国の危機ニャ! ご主人、どうする気ニャ?」


「それを、今悩んでたんだ」


「勇者達と戦うのかニャ?」


「人間同士の殺し合いは、したくないな。だからと言って、話し合いで解決できるかどうか。どちらにしても、戦争になる前に何とかしたい」


「もし戦ったら、勝てるのかニャ?」


「分からない。三年も鍛えてるとなると、僕でも危ない気がする」


ステータスの《職業》を元に戻したのは、痛手だった。


前回転職したのが四月初旬だったので、再度《ダンジョン探索者》に転職できるのが、六ヵ月後の十月初旬である。


それを待っていては、《ガーランド帝国軍》の侵攻が始まってしまう。


「ご主人の事が、心配ニャ」


シロンは、僕に体を擦り寄せて来た。


「《ガーランド帝国軍》が侵攻を始めるまで、まだ三ヶ月以上ある。その間に、対策を考えるよ」


そう言いながら、シロンの背中を撫でてやった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ