表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/402

第二十三話 突然の報せ、再び②

ユミナはニコルと久し振りに会えた嬉しさを圧し殺し、真剣な面持ちで向き合った。


「今日は、エミリは来ないの?」


「はい。来ません」


「へー、そうなんだ」


ユミナの醸し出す雰囲気で、応接室に緊張感が漂っていた。


「ニコル君。お願いがあります」


今回の《お願い》は、隣国のスタンピードの時より切実に感じられた。


「いったい、何があったんだ?」


ニコルはそれに応じ、真剣に問い返した。


「私の《未来視》スキルで見た事を、聞いて下さい」


「《未来視》スキル? 分かった。聞くよ」


ニコルはこの時、『何かやばい事が、起きるんだ』と思った。



ユミナから語られた内容は、近い内に起こる《ガーランド帝国軍》との《戦争》の事だった。


「《魔王討伐》の為に《勇者召喚》された三十九人の日本人が、戦争に利用されるのか」


「はい。この事は、内密にしてください」


「それは、約束する。でも、この事を僕に伝えて、それで終わりじゃないんだろ」


「それは・・・」


ユミナはここへきて、ハッキリと伝えられずにいた。



「ユミナが言いたい事は、理解してる。僕にどうにかして欲しくて、話したんだろ」


言い出せないユミナに、ニコルは自分から切り出した。


「私は卑怯です。自分の口で言わず、ニコル君に言わせるなんて。でも、どうするかは、ニコル君が決めて下さい」


ニコルはできる事なら、戦争に関わりたくなかった。

しかし、戦争での被害や自国が負けた時の事を考えると、そんな事を言ってられない。


エシャット村の為にも、ニコルは決意した。


「分かった。戦争が始まる前に、何とかしてみる。人間同士の殺し合いなんて、嫌だからね」


「ありがとう。ニコル君」


ユミナは自責の念に駆られ、涙を溢した。


「ユミナ、泣かないでくれ。誰か来たら、不味い!」


「ごめんなさい」


しかし、ユミナの涙は、暫く止まらなかった。



やっとの事で、ユミナの涙が止まった。


「ごめんなさい。いつまでも、泣いちゃって」


「謝らなくて、いいよ。ところで、今日は伯爵様はいないの?」


「はい。お父様もこの件で、動いてます。諜報員からの第一報が、来たみたいなので」


「そうか。大変だね」


口ではこう言ったが、伯爵様に会わなくて済んで安堵した。


「それで、お父様が言うには、召喚者は元々四十人のよです」


「それって、《クラス召喚》の《追放》パターンかもね」


「何ですか、それ?」


「《小説サイト》の《テンプレ》だよ。一人無能と思われて王城から追放されるんだけど、実はそいつが主人公なんだ」


「そうなんですか。その辺の事に疎くて、ごめんなさい」


ユミナは前世で七歳の時に死んだので、《小説サイト》に興味を持つ年齢ではなかった。


「いや、こんな事を知ってる人は、前世でも少ないから」


「そうですか」


ユミナはニコルの知らない一面に触れて嬉しいのだが、《年代ギャップ》を感じていた。



『トン! トン!』


話しが丁度途切れたところで、扉を叩く音がした。


「お邪魔するわね」


そう言って応接室に入って来たのは、伯爵婦人のソフィア様だった。


「ニコル君。お久し振りね」


「お久し振りです。ソフィア様」


「あら、ユミナちゃん。瞼が腫れてるけど、泣いたの?」


「いえ、お母様」


ユミナは否定したが、ソフィア様は疑い思案している。



「何があったか分からないけど、これはニコル君に責任を取って貰いましょう」


「「えっ!」」


「ユミナちゃんのお婿さんに、なって貰います」


「「ええーーー!」」


この突拍子もない発言に、二人は叫んだ。


「お母様! いきなり、何を言ってるの?」


「あら、私は本気よ」


「どうして?」


「ユミナちゃん。あなた、このまま縁談を断って、《シスター》になるつもり?」


「いえ、その」


「お母さんは、分かっているのよ」


ユミナは、黙り込んでしまった。



「ニコル君!」


「はい、何でしょう」


「あなたも、ユミナちゃんの気持ちに気付いてるのでしょう?」


「それは・・・」


「気付いてるのね」


「はい」


「だったら」


「お言葉ですが、僕には故郷に結婚を考えている娘がいます。それに身分の差も」


その言葉に、ユミナの顔が固まった。


「そうでしょうね。それだけのイケメンで、強くて経済力があるんですもの。婚約者の一人や二人や三人いたって、おかしくないわ。それに、ユミナちゃんの幸せを考えるなら、身分の差はこの際関係ないわ」


しかし、ソフィア様は動じなかった。


「結婚を考えているのは、一人なんですけど」


「そうなの? まあ、いいわ。ユミナちゃんの事も、よろしくね」


「いや、あの、その・・・」


「ユミナちゃん! あなたも、いいわね!」


「はい」


ユミナは、小声で小さく頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ