第十七話 子爵邸での闘争
《悪事矯正リング》を百個作り終えた後、僕は変装し子爵邸の庭に《転移》した。
警備が更に増えているのかと思えば、そうでもなかった。
「メイドさんが庭の掃除をしてるのは分かるけど、門番もしてるのか」
敷地内を探ってみると、屋敷の玄関や裏口にもメイドさんが立っていた。
警備兵の宿舎もあるけど、いるのは管理や給仕をする人達だけみたいだ。
今、屋敷の外にいる男性は、庭師だけだった。
屋敷の中を《検索ツール》の《地図》で確認してみると、昨日より多くの人がいた。
どうやら、警備兵が閉じ込められてるらしい。
「思った以上の、効果があったみたいだ。何も知らず、屋敷に入ったんだろうな」
屋敷にいる全員が悪人という訳ではないが、子爵家に仕える者の大半がいるようだ。
「げっ、昨日の今日で、地下牢に二人の子供が捕まってる」
どちらも、昨日の子供のようだ。
僕はこの状況に、呆れてしまった。
◇
屋敷の裏口に回り、メイドさんに声を掛けた。
「手荒な真似を、したくない。扉を開けろ」
「あなたのその頭、黒髪。分かりました。今、開けます」
そう言って、直ぐに扉の鍵を開けてくれた。
先日、奪った鍵を持っていたが、使う必要が無くなった。
「随分、素直だな」
「『黒髪の男が来たら、屋敷に入れろ』と、命じられてます。中では大勢、あなたを待ち構えてますよ」
「そうか。親切に、済まないな」
「いいえ、仕事ですから」
僕は礼を言い、堂々と裏口から屋敷に入った。
◇
扉を開けると、男が二人いた。
「てめえー、現れやがったな」
「黒髪だー! 裏口に、黒髪が現れたぞー!」
その声に、他の男達が集まって来た。
「てめえが、俺達を屋敷から出られなくしたんだな!」
男は、随分お怒りのようだ。
「知らんな」
「しらばっくれるな! 夕べ、屋敷の外にいたただろうが!」
そう言えば、昨夜僕を発見した奴かもしれない。
「さあな」
「くそっ! 取り押さえるぞ!」
「「「「「「「「「おうっ!」」」」」」」」」
逃げようと思えば逃げれたが、子供達が捕らえられてるので戦闘の構えをとった。
男達は棍棒やダガーナイフを手に、襲い掛かって来た。
「おりゃー!」
『ドスッ!』
「ウボッ!」
「うりゃー!」
『ドゴッ!』
「ガハッ!」
僕は一瞬で、鳩尾と顔面に拳を叩き込み、二人の意識を奪った。
「待て! こいつは、強い。素手だからと言って、舐めるな」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
後ろいる指揮官らしき男が声を掛けると、男達は気を引き締め少しずつ間合いを詰めてきた。
「いくぜ」
「ああ」
小声で合図をすると、二人は同時に襲い掛かって来た。
しかし、それらの攻撃はフェイクで、僕の横を駆け抜けていった。
そして、すかさず前からは残りの男達が詰めて来た。
「挟み撃ちか。一応、考えているな」
「お前は、強い。動きを見て分かった。いったい、何者だ?」
指揮官らしき男が、質問してきた。
「そんな事、教える訳ねえだろ」
「そうか。それじゃ、質問を変えよう。屋敷に張った結界は、お前が死んだらどうなる?」
「結界? さあ、何の事やら」
「あくまでも、シラをきるんだな。お前ら、殺さぬ程度にやれ!」
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」
その合図に、警備兵達は襲い掛かって来た。
『ドカッ! バキッ! グシャ! ドスッ! ドカッ! バキッ! グシャ! ドスッ!』
男達は戦闘慣れした動きではあったが、僕はその上をいく動きで蹴散らした。
「ふっ、一瞬か。本当に、強いのだな」
「お前らが、弱いだけなんじゃねえか?」
「我等は、それ程弱くはないのだがな」
「そうかい」
『タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ』
そこに、複数の足音が聞こえてきた。
「何だ。お前らまで来たのか?」
「ああ。だが、来て正解みたいだな」
鑑定したところ、こいつらは《裏の部隊》だった。
「それじゃ、頼んだ」
「ああ、任せろ」
すると、後から来た六人が前に出て来た。
僕は誘うようにゆっくりと、床に落ちているダガーナイフを拾った。
そして、その屈んだところを狙って、二人の男からナイフが飛んできた。
『キンッ! キンッ!』
そのナイフを、僕はダガーナイフで弾いた。
『『バッ!』』
次の瞬間、一気に二人に間合いを詰められた。
『シュバッ!』
しかし、僕はそれを予期して、《瞬動》スキルで後ろへ下がった。
『『シュン!』』
そして、僕がいた場所では、二本のダガーナイフが空を切った。
『ダッ! ダッ! ダッ!』
その二人の間から、槍を持った男が一気に間合いを詰めた。
「せりゃー!」
狭い廊下で振るうには不利な武器だが、槍使いは◯斗百◯拳のような勢いで突いてきた。
『キンッ! キンッ! キンッ! キンッ! キンッ! キンッ! キンッ! キンッ! キンッ! キンッ!』
しかし、それもダガーナイフで、全ていなした。
「どけっ!」
「ムッ!」
その指示に、槍使いは素早い動きで下がった。
「《空気圧壁》」
今度は魔法を唱え控えていた男が、逃げ場の無い程の大きさで《高密度の空気の壁》を放った。
「はっ!」
『バシーン!』
僕はそれを、空いてる左手に魔力を込め、気合いと共に相殺した。
「馬鹿な!」
「《連続水矢》」
『シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ!』
今度は別の男が水の矢を放ったが、ダガーナイフに魔力を込め、切り裂くと同時に全て消失させた。
「なっ!」
水矢を放った男は、僕の芸当に驚きを示した。
「どうやら、ただならぬ者のようだな。しかし、これではどうかな?」
その言葉を発した男が横にずれると、ナイフを突き付けられた子供二人が現れた。
「「おじさーん」」
子供達は戦闘中に、地下牢から連れて来られたようだ。




