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第十一話 子供達の救出

子供達の救出が第一だが、身バレは避けたかった。


一度地下牢から脱獄している身なので、疑われては困る。

バレでもしたら、僕との関係からエミリとユミナに迷惑が掛かるかもしれない。


今回は、それだけの事をするのだ。


ちなみに、今変装している姿は、前世で死ぬ前の自分だった。


「後は、目撃者が必要だな」


面倒だが、わざと目撃者を作る事にした。



屋敷の裏口には、男が一人立っていた。


「おい、お前! 人攫いを追っていたら、ここに辿り着いた。今直ぐ、屋敷に入れるんだ!」


一応、声質と口調を変えて喋っている。


「なっ、どこから入りやがった!」


『ドスッ!』


「うっ!」


鳩尾を一発殴ったら、男は意識を失ってしまった。

一応、手加減はしている。


「第一目撃者、完了」


その後、男を木の影に隠し、鍵を奪って屋敷に侵入した。



屋敷の中では、人に出くわす事無く階段室まで辿り着いた。


「裏口の方は、あまり人が近付かないようだな」


そう呟きながら、扉の取っ手に手を掛けた。


『ガチャ、ガチャ!』


「鍵か、いいや壊しちゃえ」


すると、鍵の部分に手を翳し、錬金術で破壊してしまった。

《無属性魔法》の《開錠》を使わなかったのは、前回囚われた時に使ったからである。


扉を開け階段を降りると、子供達が囚われている地下二階の扉の前に辿り着いた。


扉の向こうには、見張りが二人と牢屋に子供が十人いる。


『さて、どうやって入るか』


扉を鑑定してみると、鍵は内側と外側の両方に付いていた。

外側は開いているようだが、中からは鍵が掛かっている。


侵入方法はいろいろあったが、僕が選んだのはこれだった。



『ドン! ドン!』


「おい、開けてくれ。ガキを連れてきたぞ!」


「おっ、またか。今開けるから、待ってくれ」


『ガチャ!』


『ギー!』


鍵が開けられ、扉がゆっくり開いた。


「お前、誰だ? それに、ガキなんかいねえじゃねえか!」


「ちっ、バレたか」


「おい! こいつ、怪しいぞ!」


「そうだな。捕まえるぞ!」


「「うぉりゃー!」」


『ドスッ!』


「うっ!」


『ドスッ!』


「うっ!」


ワンパターンではあるが、鳩尾を殴り意識を飛ばした。


「第二・第三目撃者、完了」


そして、男達から鍵を奪った。



牢屋の前まで行くと、男の子と女の子が向かい合わせの部屋で、別々に五人ずつ入れられていた。


子供達は床に座りながら、不安な顔で黙ってこっちを見ている。

見張りと争っていた声や音は、聞こえていた筈だ。


『ガチャ!』


『ギー!』


「《睡眠》」


牢屋の鍵を開けて中に入り、まずは男の子を眠らせた。


『ガチャ!』


『ギー!』


「《睡眠》」


続いて、女の子も眠らせた。


「《転移》」


そして、次の瞬間転移した。



「おい、お前達起きろ!」


子供達の《睡眠》を解除して、起こしてやった。


「あれっ、ここはどこ?」


「ここは、平民街の空き地だ。俺は、お前達を助けてやった」


「たすかったの?」


「そうだ。助かったんだ。お前は、自分の家の場所は分かるか?」


「わかんない」


「そうか。それじゃ、一緒に探そう」


「うん!」


「他の奴らはどうだ?」


「「「「「「「「わかんなーい!」」」」」」」」


子供達は、首を横に振って答えた。

どうやら、今いる場所が分からないらしい。


「ボク、かえるばしょがない」


「んっ、親はいないのか?」


「うん。しんじゃった」


「今まで、どこにいたんだ?」


「スラム」


「そうか。それじゃどうするか考えるから、みんなを家に帰すまで待ってくれ」


「うん」


身寄りの無い子がいるとは思わず、直ぐに答えが出せないでいた。



「お前ら、お腹は空いてないか?」


「「「「「「「「「「すいたー!」」」」」」」」」」


「そうか、何か食べさせてやる。その前に、体を綺麗にしよう」


子供達に《清浄》の魔法を掛けて、綺麗にしてやった。


「わー、綺麗になったー!」


「ほんとだー!」


「わーい!」


「ついでに、《初級回復》も掛けてやる」


そう言って、《初級回復》の魔法を全員に掛けてやった。


「あれっ! ぶたれたところが、いたくないや」


「わたしもー!」


「ぼくもー!」


あいつらは、幼い子供に手を上げていた。


「くそー、あいつら!」


もっと痛め付けておけばよかったと、後悔した。



魔法袋から、シロップの掛かったパンケーキとホットミルクを取り出し配った。


「お前達、食べていいぞ。腹が減ってたら、歩けないからな!」


「「「「「「「「「「うん!」」」」」」」」」」


子供達はフォークを握り、パンケーキを食べ始めた。


「おいしー。こんなのはじめてたべたー!」


「おいしーね!」


「おー、うめー!」


「お代わりもあるぞ。欲しい奴は言ってくれ」


「ほしいー!」


「わたしもー!」


「ぼくもー!」


「みんなの分あるから、大丈夫だ」


「「「「「「「「「「やったー!」」」」」」」」」」



パンケーキを食べ終わったところで、子供達の家を知っている範囲で聞いた。


それを地図に設定して、近い順に回る事にした。


「よし。これから順番に、家に送るからな!」


「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」



子供達の家は、繁華街から外れた住宅街にあった。

平民の中でも、中流層の家庭のようだ。


順番に子供達を送り、いよいよ最後の子になった。


「ボクのうち、こっちだよ!」


「そうか」


家の近くまで来ると、子供達はみんなホッとしていた。


「ここだよ!」


「そうか。早く、家族に顔を見せてやれ」


「うん!」


「じゃあな」


「ありがとう!」


家に入るのを見送ると、直ぐにその場を離れた。


今回、どの家族とも顔を合わせなかった。

事情はいろいろあるのだけれど、その説明は敢えてしない。


「さて、どうするか」


身寄りの無い子供が、まだ一人残っていた。

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