第五話 勇者のステータス
2021/04/16 サブタイトルを変更し、神崎勇也のステータスを追加し、一部内容の修正をしました。
僕はこの時、神様との会話を思い出し、こんな事を考えていた。
『そう言えば転生する時、神様は《勇者》になる事を勧めていたような気がする』
『僕は《錬金術師》を選択したけど、もし《勇者》を選択していたら僕がこの立場だったかもしれない』
そんな後ろめたい気持ちが浮上し、この勇者を無碍にしていいのか悩んだ。
『でも、魔王かー。上昇率の悪い今のステータスでは、全然敵う気がしない』
『まして、この勇者にしてみたらもっと不安に違いない』
この勇者を《鑑定》してみたら、一年間何をしてたんだというくらいレベルは低かった。
【名前】神崎 勇也
【年齢】十五歳
【種族】人族
【性別】男
【職業】勇者
【称号】料理研究家
【レベル】7
【体力】2200/2200
【魔力】2080/2080
【攻撃力】490(190)
【物理防御力】410(160)
【魔法防御力】160
【筋力】190
【敏捷】166
【持久力】166
【精神力】160
【知力】160
【運】160
【固有スキル】食材探索(Lv5)/調味料調合(Lv5)/魔法無詠唱
【スキル】鑑定(Lv3)/空間転移(Lv3)/アイテムボックス(Lv3)
剣術(Lv2)/体術(Lv1)
魔力感知(Lv1)/危機感知(Lv1)
魔力操作(Lv1)/身体強化(Lv2)
体力回復(Lv1)/魔力回復(Lv1)
料理(Lv5)
【魔法】火属性魔法(Lv2)/水属性魔法(Lv2)/生活属性魔法(Lv2)
【武器】鋼の剣(攻撃力:+300)
【防具】鋼の鎧(物理防御力:+250)
【アイテム】-
しかし、レベルの割りにステータスの数値は高かった。
レベルさえ上げれば、《魔力》を除き僕より高くなる。
だが、称号とスキルが変に偏っているのが気になった。
「おい、どうした?」
「あっ、すみません。唐突なお誘いなもので、考え込んでしまいました。《魔王襲来》はお伽話しで、聞いた事があります。本当の事だったんですね」
「ああ。この国の王様に、聞いた話しだ」
「失礼ですが、騙されていて戦争に駆り出されたりしませんか?」
「俺は戦争に加勢する気は無いし、俺をいいように利用しようとすれば、この国を見捨てるつもりだ」
「そうですか。ところでお仲間は、今何してるんです?」
「仲間は、ダンジョンの街で待機中だ」
「ダンジョンですか?」
「興味ありそうだな?」
「ええ、まあ。ところで勇也さんは、どうしてここにいるんです?」
「武器や防具を新調したくてな。国に要求する前に、武器屋で下調べしてたんだ。《空間転移》スキルがあるから、一人なら簡単に行き来できる」
《鑑定》スキルで見たなら、僕が《転移魔法》を使える事を知った筈だ。
だが、この事は敢えてスルーした。
「勇也さん。申し訳ないですけど、この件少し考えさせて下さい」
「ん、そうか。だが、一応理由を聞かせてくれ?」
「理由ですか? そうですね。僕は二ヶ月掛けて、今日王都に着きました。目的は王都で稼いで、そのお金で故郷の貧しい村に何か買って帰る事です」
「貧乏村か・・・・・」
そう言うと、勇也さんは右手で顎を触り考え込んでしまった。
「分かった。それじゃ三日後の昼、この店の前で待合わせしないか? 近くの飯屋で、食べながら返事を聞こう」
「いいですよ」
こうして返事を先延ばしした事で、三日後また会う事になってしまった。
ここの会計は勇也さんが済ませてくれて、僕達は分かれた。
◇
勇也さんと別れ、僕は仲間になる事より今日の宿の心配をした。
普通に泊まったら、王都だけに高くついてしまう。
「塩を売って二百万マネー以上あるけど、節約はしないとな。商業ギルドに行って、安宿でも紹介して貰うか?」
僕はその足で、商業ギルドへ向かった。
商業ギルドは、直ぐ近くにあった。
そして、その建物はどの街より立派で大きかった。
「やっぱり、王都だけの事はある」
そして、受付も美人揃いだった。
「あら、イケメン君! 御用件を承りますよ」
「えーと、安い宿を探してます」
「そうですか。それなら、私の所はタダですよ!」
「いえいえ。タダより高いものは、ありませんから」
こんな遣り取りはあったが、小さな平屋を一ヶ月借りられた。
勇也さんとの事もあったが、長期の方が断然割安だった。
歩いて三十分程の場所だが、ギルド会員価格の一割引で七万二千マネーである。
僕の今までの生活からしたら大金だが、王都の相場からしたら安いようだ。
僕はこの後、買取りカウンターで塩を売った。
そのついでに、これから王都で売る予定の《ボックスティッシュ》を五箱取り出した。
「紙の箱ですね。どういう用途に使うんですか?」
「ちょっと、待って下さい」
そう言うと、見本で一つ口を開けた。
「箱の中から、こう摘んで取り出します。そして、鼻にあてて」
『チーン!』
そして、鼻をかむ仕草をした。
「もしかして、ハンカチの代用品ですか?」
「そうです」
「随分、薄い紙ですね?」
「ええ、でも肌触りはいいですよ」
僕は新しいティッシュを取り出し、手渡した。
「本当ですね。うーん、どうしましょう? こんなの初めてだわ」
すると、買取り担当者は値段が付けられず、悩んでしまった。
「上司に確認してくるので、少々お待ちください。これ、お借りしますね」
「あっ、はい」
僕はその場で、待たされる事になった。
暫くすると、買取り担当者が手ぶらで帰って来た。
「すみませんニコルさん。応接室に来ていただけないですか?」
「応接室? 何か、問題でもありました?」
「いえ、そういう訳では」
僕は買取り担当者に、応接室へ案内された。
部屋に入ると、そこには禿げたごつい《おっさん》がいた。




