表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/401

第三話 マルコさんの実力

焼き上がったスポンジケーキを、オーブンから取り出し型を外した。


「凄い! ふわふわだ!」


「そうでしょう。このふわふわ感が、大切なんです」


「パンとは、全然違うんだな」


「小麦粉の違いが、大きいですね。温度や掻き混ぜ方、材料の分量でも随分変わりますけどね」


「分かった。それじゃ、次は僕の番だ」


事前に材料の計量は済ませてあり、マルコさんは手際良く作業を始めた。


僕が注意したポイントも、ちゃんと押さえている。


『何だこの人、一度説明しただけで。天才か?』


そんな言葉が、頭を過った。


そして、着々と作業は進められ、スポンジケーキは焼き上がった。


「凄い! 一発で上手くいった」


「先生が、良いからだよ」


「いやいや、マルコさんが凄いんです」


僕は何度も失敗したので、本心からそう思った。



マルコさんのスポンジケーキを冷ましてる間に、生クリームの立て方を実演し僕のケーキを仕上げた。


「できました!」


「凄いな、その手際。見惚れたよ!」


デコレーションは、手際良く綺麗に仕上がると、自分でも気持ち良かった。


「ありがとうございます」


「これ、試食させてくれるのか?」


すると、女性陣が一斉に僕の方へ振り向いた。


「どうしましょうか?」


マルコさんには、比較の為に食べて貰っていいのだが、一人だけで済みそうもなかった。

この後、マルコさんが何個も作るし、『食べ過ぎは、良くないな』なんて事を考えてしまった。


「これは持ち帰って、スーパーで売ります」


「「「「「えー!」」」」」


それを聞いて、女性陣から不満の声が上がった。


「今から、マルコさんが美味しいケーキを作ってくれますって。そちらを、食べましょう」


「おいおい、ニコル。僕に、プレッシャーを掛けるなよ」


「頑張ってくださいね」


不満を言いながらも、マルコさんはやる気満々でケーキ作りに取り掛かった。



マルコさんは僕が教えた事を上手にこなし、デコレーションを済ませケーキは仕上がった。


「凄い、本当に凄いよ。マルコさん!」


「言い過ぎだよ。そんなに誉めないでくれ」


「もう、僕の指導が無くても大丈夫です」


「その台詞は、ケーキの味を確かめるまで待ってくれ」


マルコさんは謙遜しているが、僕は本当にそう思った。


マルコさんのステータスを見たら、《調理》スキルがレベル2に上がっていた。

僕はレベル1のままなので、既に抜かれてしまっている。


「それじゃ、お昼も近いし、みんなで試食をしましょうか?」


「そうだね」


「「「「「やったー!」」」」」


女性陣は、みんな声を上げて喜んだ。


パン工房には子供達と僕を含め十人いるので、ケーキは十等分に切り分けられ皿の上に並べられた。

ちなみに、スーパーの苺のショートケーキは、直径二十一センチのホールケーキを八等分にしている。


今回、少し小さくなってしまったが、試食なので大目に見て貰いたい。



昼休みになり、ケーキを休憩室に運んだ。


「おまたせー。ケーキよー!」


女性陣に、運ぶのを手伝って貰った。


「やったー、ケーキだー!」


「「「わー!」」」


ウェンディと一緒に、子供達も喜んでいる。


「これは、僕が始めて完成させた《苺のショートケーキ》なんだ。食べたら、正直な感想を聞かせて欲しい」


「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」


マルコさんが語ると、みんなニコニコしながら返事をした。


この後、『いただきます』をして、みんなで試食を始めた。



「美味しー! マルコさん、天才だね。もっと、たくさん作って食べさせてよ」


「ウェンディ。お前は、遠慮を知らないな!」


「ぶー! だって、食べたいんだもん」


「あまあまー!」


「うまうまー!」


「おいちーね!」


「本当に、美味しいわね!」


みんなには、マルコさんの作ったケーキは好評だった。


「ありがとう。でも、スーパーで売ってるケーキに比べたら、まだまだだね。改良の余地ありだ!」


だが、マルコさんの自己評価は少し違った。



「マルコさん。初めてちゃんとした材料と道具を使って、これだけの物ができるんだ。凄いよ」


「ニコルにそう言って貰えて嬉しいけど、やっぱりこのままでは駄目だ。もっと、特訓しないと!」


「マルコさんは、自分に厳しいんですね。分かりました。マルコさんが納得するまで、付き合います」


「ありがとう。ニコル!」


「でも、材料費が高いので、みんなの試食は一日一個にしてください。その他は、僕が引き取ります。勿論、マルコさんは全ての出来上がりの確認をして貰って、構いません」


「「「「「「「「えー!」」」」」」」」


「ニコルっちのケチー!」


「ケチでもいいけど、試作品の材料は僕が出すんだ。どうするかは、僕が決める」


「ぶー!」


「それに、食べ過ぎたら太るからな。注意しろよ」


「えっ、ケーキって太るの?」


「ああ、毎日たくさん食べたら太るぞ」


「うー、それはやだー!」


普段から良く食べてるので今更なのだが、ウェンディは太るのが嫌みたいだ。

今はまだ若いだけあって、スレンダー体系を保っている。


ウェンディを含む女性陣と子供達は、説得の末一日一個の試食で納得してくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ