第五十一話 シャルロッテの覚悟
2021/06/12 シャルロッテのステータス表記を追加しました。
先程ダンジョンで職業を《大魔導錬金術師》に戻したが、固有スキルの《万能調教》は今でも使える。
レベル1のままだが、シャルロッテをテイムするには問題無い。
しかし、元人間の彼女に対して使うのは、奴隷にするみたいで引け目を感じた。
「ヒヒーン! ヒヒーン! ヒヒーン! ヒヒーン! ヒヒーン!」
「ご主人様とケイコの関係は、見ていて嫌な感じはしない。むしろ、羨ましいって言ってるニャ」
僕が黙り込んでいるので、シャルロッテの方が話し掛けてきた。
「羨ましいのか? でも、このスキルの本質は、僕に《服従》させる事なんだ」
「ヒヒーン! ヒヒーン! ヒヒーン!」
「ご主人様を信頼してるし、別に構わないって言ってるニャ」
「別に構わないったって」
「コケッ、コケッ、コケー!」
「ケイコは、口出さなくていいニャ!」
「コケー!」
「おいおい、また喧嘩をする気か」
「ご主人様に飼われて、幸せなんて惚気るからニャ」
「そうか。幸せなんだ、ケイコ」
僕はそう言いながら、ケイコの背を撫でてやった。
「コケー!」
「ムカつくニャ!」
「ヒヒーン!」
「何ニャ、シャルロッテ。話しが逸れてるって言いたいニャ!」
どうやら、シャルロッテのツッコミが入ったらしい。
◇
「ヒヒーン! ヒヒーン!」
シャルロッテが何か訴え掛けているが、僕には分からなかった。
「シロン。シャルロッテは、何て言ってるんだ?」
「ご主人様、覚悟はできてますって言ってるニャ。それで、ご主人はどうするニャ?」
「そうか、覚悟ができてるのか。気は進まないけど、そんなに望むならテイムするよ。だけど、不要だと感じたら取り消すからな」
「ヒヒーン!」
「それでいいって言ってるニャ」
「分かった。それじゃ、いくぞ!」
「ヒヒーン!」
「《万能調教》」
手を翳しそう呟くと、シャルロッテは白い光りに包まれた。
その光りが治まると、目の前にウインドウが現れた。
〔馬のシャルロッテを、《テイム》しました〕
シャルロッテのステータスを確認すると、全てが以前の数値の二倍になっていた。
【名前】シャルロッテ
【年齢】三才
【種族】馬
【性別】雌
【職業】ニコルのペット(テイム中)
【称号】-
【レベル】8
【体力】3400/3400←1700/1700(×2)
【魔力】240/240←120/120(×2)
【攻撃力】480←240(×2)
【物理防御力】3400←1700(×2)
【魔法防御力】32←16(×2)
【筋力】480(160×3)←240(80×3)(×2)
【敏捷】480(160×3)←240(80×3)(×2)
【持久力】480(160×3)←240(80×3)(×2)
【精神力】32←16(×2)
【知力】32←16(×2)
【運】32←16(×2)
【固有スキル】走行経験値取得(負荷変動)/[?]
【スキル】筋力上昇(Lv2)1up/敏捷上昇(Lv2)1up/持久力上昇(Lv2)1up
体力回復(Lv2)1up
【魔法】-
【武器】-
【防具】-
【アイテム】-
「シャルロッテ。テイムできたぞ」
「ヒヒーン! ヒヒーン! ヒヒーン! ヒヒーン!」
「力が漲ってる。ご主人様と繋がってるのを感じられて、嬉しいって言ってるニャ」
「そうか、良かったな」
そう言いながら、シャルロッテの首を撫でてあげた。
◇
その後、《念話》を試したが使えなかった。
「《万能調教》のレベルを、上げてみるか」
《スキルポイント》は大事に使っているので、まだ大分残っている。
ステータスを開き、早速レベルを上げてみた。
〔《万能調教》が、レベル2に上がりました。《魔物(下級)》のテイムが行えます。テイム対象と《念話》が行えます〕
「ははっ、ここでも《ご都合主義》が出たよ」
僕はシャルロッテに、《念話》で話し掛けてみた。
『シャルロッテ、聞こえるか?』
『えっ! この声、ご主人様ですか?』
驚くシャルロッテの声の印象は、上品で綺麗な声質だった。
『そう、僕だ。テイムするスキルのレベルを上げたら、《念話》が使えるようになった』
『嬉しい』
そう言うと、シャルロッテの目から涙が零れ落ちた。
『大袈裟だな』
『そんな事無いです。こんな日が来るとは、思ってませんでした』
『これからは、シロンの通訳はいらないな』
『ふふっ、そうですね』
シャルロッテはさっきまで涙を溢していたが、既に笑顔になっていた。
◇
「ご主人とシャルロッテ、何ニヤニヤしてるニャ」
不思議に思ったのか、シロンがツッコんできた。
「今、《念話》で会話をしてたんだ」
「ニャに、《念話》!」
「ああ、頭の中で会話するやつだ」
「そんなのずるいニャ!」
「コケー!」
「ケイコも、《念話》するか?」
「コケー!」
「よし、それじゃいくぞ!」
そう言って、《念話》でケイコに話し掛けてみた。
『ケイコ、聞こえるか?』
『コケー!』
『あれ? 鳴き声しか聞こえないぞ』
『コケー?』
ケイコとの会話は、いつもの鳴き声しか聞こえなかった。
「ケイコとは、《人語》で会話できないみたいだ」
「コケッ?」
「どうして?って言ってるニャ」
「ちょっと、調べてみるか」
《検索ツール》で調べてみると、シャルロッテが元日本人という事が関係していた。
思考が人間なので、言葉が通じたようだ。
一方ケイコは僕の言葉が理解できても、人間の言葉で思考できないでいた。
この場合、僕かケイコが言語系のスキルを取得しないと、通じ会えないらしい。
「ケイコ。念話は使えるけど、聞こえる言葉は今までと同じらしい」
「コケー!」
「どうにかならないかって言ってるニャ」
「ごめんな。今は、方法が無いんだ」
「コケッ、コケー!」
「それならしょうがないって言ってるニャ」
「そうか、随分素直だな。ところで、シロンはいいのか?」
「うっ、直ぐに答えは出せないニャ」
「そうか。別に今のままで、いいけどな」
その後ケイコにトモローコシを与えると、ケイコは雄のパートナーと子供達に分け与えた。
そして、トモローコシを食べ終えると、『たまごを温めたい』と言ってきた。
「そうだな。それじゃ、帰るぞ」
「コケー!」
僕が別れを告げると、ケイコは羽ばたいて見送ってくれた。
お読みいただき、ありがとうございます。
悩みましたが、《第五章》はここまでにします。




