第五十話 ケイコの変化
2021/06/12 ケイコのステータス表記を追加し、一部内容の修正をしました。
昼食後シャルロッテに騎乗し、野鶏のケイコのいる森に出掛けた。
「ヒヒーン!」
「そうか、嬉しいのか」
シロンは機嫌が悪いようで通訳してくれなかったが、これくらい僕にも分かった。
暫く走ると、目的地の森に着いた。
「コケー!」
「出たニャ! ケイコ!」
他の野鶏が警戒してる中、一羽の金色掛かった野鶏?がやって来た。
シロンは、それに向かって『ケイコ』と叫んだ。
「あれっ、お前ケイコなのか?」
「コケー!」
ケイコは一鳴きすると羽ばたき、騎乗する僕の元に飛んできた。
「シャー! 来るニャー!」
しかし、シロンはケイコを威嚇し、近寄せようとしなかった。
ケイコはそれに反応し、飛んで逃げて行った。
「シロン、止めるんだ!」
「ご主人、止めるニャー!」
「そうか、止めないんだ。なら、しょがない」
僕はシロンを掴み、胸の前で抱えた。
「ご主人、離すニャ!」
「ほら、止めろって」
そう言いながら、シロンの頭を撫でてやった。
「フニャー」
シロンは先程までの勢いは無くなり、大人しくなった。
うるさい時には、これが良く効く。
◇
数回頭を撫で、シロンに声を掛けた。
「どうだ。落ち着いたか?」
「ご主人、ずるいニャ」
「もう、ケイコに手を出さないか?」
「出さないニャ。でも、もう少しこのままいさせてニャ」
「少しだけだぞ」
シロンが大人しくなるのを見計らって、空中へ飛んで逃げていたケイコが僕の肩に止まった。
「ケイコ。随分長く、飛べるんだな。それに、羽が金色っぽくなってる」
以前の羽色は、薄茶色にこげ茶が混ざっている様な感じだった。
「コケッ、コケッ、コケー!」
「どっちも、数日前に変わったって言ってるニャ」
シロンは機嫌が直り、通訳してくれた。
「数日前? 何だろうか」
ケイコを鑑定してみると、レベルがかなり上がっていた。
【名前】ケイコ
【年齢】一才
【種族】赤色野鶏
【性別】雌
【職業】ニコルのペット(テイム中)
【称号】-
【レベル】16
【体力】250/250
【魔力】40/40
【攻撃力】40
【物理防御力】40
【魔法防御力】20
【筋力】40
【敏捷】80
【持久力】40
【精神力】40
【知力】40
【運】120
【固有スキル】-
【スキル】飛翔(Lv2)1up/産卵(Lv2)1up/毛艶(Lv2)new
【魔法】-
【武器】-
【防具】-
【アイテム】-
「ケイコ。レベルが上がってるぞ。何かしたか?」
「コケッ、コケッ、コケッ、コケッ、コケー!」
「レベルが何か分からないけど、今日と数日前に体の変化を感じたって言ってるニャ」
「そうなんだ。自分で、何かした訳じゃないんだな」
「コケー!」
「そうだって言ってるニャ」
「ふーん」
不思議に思い、《検索ツール》で調べてみた。
その結界、僕がダンジョンで魔物を倒した経験値が、ケイコに入っている事が分かった。
僕自身には、魔物を倒しても経験値は全く入らない。
パーティーを組んでいる場合は、僕の分の経験値は他の人に振り分けられる。
だがテイムしたケイコには、その場にいなくてもパーティーメンバーと同様の経験値が入るらしい。
ケイコが経験値を得たのは、一回目はシロンと初めてコカトリスを狩りに行った時で、二回目は今日の午前中の出来事だった。
◇
シロンとケイコをシャルロッテの背に乗せ、僕は下馬した。
そして、みんなに向き合い、その情報を教えてやった。
「そんなのずるいニャ!」
すると、一度落ち着いたシロンが騒ぎ出した。
「ヒヒーン!」
シャルロッテも、不満なようだ。
「コケー!」
ケイコは、羽ばたきながら喜んでいた。
「まあまあ、落ち着け」
「落ち着いてられないニャ!」
「ヒヒーン!」
「シロンは僕と一緒にダンジョンに入れるし、シャルロッテは走る度に経験値が入るだろ」
「ケイコは、何もしてないニャ」
「ヒヒーン!」
「そんな事言ったら駄目だ! ケイコには、たまごを産んで育てて貰ってる。それに自立してるから、世話をしなくて済んでいる」
ケイコは今、三回目のたまごを温めているところだった。
二回目は十個中七個が雌の雛で、既にダリルさんに預けてある。
「贔屓ニャー!」
「ヒヒーン!」
「そんな事言ってもケイコはテイムしてるだけで、僕の意思とは関係無く経験値が入るんだ」
「ヒヒーン! ヒヒーン!」
「ニャに?!」
シロンが、困惑した顔になった。
「シャルロッテ、それ本気で言ってるニャ?!」
「シロン。シャルロッテは、何て言ってるんだ?」
「私もテイムされるって、言ってるニャ」
シャルロッテが、思い掛けない事を訴えてきた。
「分かってるのか? 前世が人間の君が、僕の言いなりになるんだぞ!」
「ヒヒーン! ヒヒーン! ヒヒーン!」
「ご主人様と繋がれるなら、それでもいいって言ってるニャ」
僕はそれを聞いて、言葉に詰まった。




