第四十九話 魔力変換の思わぬ弊害
ステータスを開き、職業を《大魔導錬金術師》に設定した。
すると、僕は白い光りに包まれた。
体の構造とステータスが変化し、《転職》が完了すると光りが収まった。
何の因果か転職の切っ掛けは、前回同様《魔王》との出会いだった。
「お主。職業を変えんでも、良かったのだぞ」
「いいんですよ。いずれ、変えようと思ってましたから」
「しかし、随分弱々しくなったな」
「サムゼル様に、比べたらですけどね。だけど、弱々しくなったからって、殺さないでくださいよ」
「ふっ、お主は《友》だ。そんな事はせん」
「お願いしますね」
「ところで、先程の土産を貰ってもいいか?」
「ええ。そうでしたね」
そう言いながら、移動する時にしまったケーキとインスタントコーヒーを、《亜空間収納》から取り出しサムゼル様に手渡した。
サムゼル様はそれらを受け取ると、インスタントコーヒーの瓶を空中に浮かせ、ケーキの箱の蓋を開けた。
「どれ、一ついただくか」
そして、モンブランケーキを手に取り口に運んだ。
「おおっ、創造以上に美味いな。お主が作ったのか?」
「ええ、錬金術ですけど」
「ほー、便利だな」
「そうですね。錬金術のお陰で、色々と助かってます。ところで、コーヒーを入れましょうか?」
「ああ、そうだな。頼む」
そう言うと、空中に浮かんだ瓶が僕の方へ移動してきた。
僕はそれを受け取り、《亜空間収納》からテーブルと椅子と食器とお湯用の魔道具のポットを取り出した。
「サムゼル様、こちらを使ってください」
手掴みでケーキを食べているサムゼル様に、皿とフォークを渡し椅子を勧めた。
「済まん。はしたなかったな」
サムゼル様は椅子に座り、改めてケーキを食べ始めた。
僕はそれを確認し、コーヒーを入れた。
「良い香りだな」
「ええ、どうぞ飲んでください」
「ああ、いただこう。『ごくごく』 うむ、苦いな」
「慣れですよ。その内、美味しく感じます。どうしてもって言うなら、砂糖とミルクを入れましょうか?」
「いや、このまま我慢して飲むとしよう」
「そうですか。それでは、私は魔素をいただきますね」
「ああ。危険な場合、直ぐに止めるぞ」
「ええ、お願いします」
僕はダンジョンコアの保管部屋の前に立ち、その順備に取り掛かった。
◇
「お主、いつまでやるのだ?」
「えっ!」
「ダンジョンで、魔物が《リポップ》しなくなるぞ」
「それは不味いですね。気が付きませんでした。それに、もうお昼過ぎてますね」
別荘に戻り、シロンとシャルロッテに食事を用意しなければならなかった。
僕はそれに気付くと、《ダンジョンコア》の保管部屋の壁から手を離した。
この場所は空気中に魔素が漏れる事も無く、《酸素吸入》の魔道具の出番は無かった。
しかし、壁に伝わる魔素は非常に濃く、変換率は二百パーセントを越えていた。
一回の変換で魔力を100000MP消費し、200000MP回収する事ができた。
それを何百回と、繰り返した。
この場所でなら、経験値を得ながら魔力を増やす事が可能だった。
そして、レベル158から割りと直ぐにレベル159になり、今はレベル160になっていた。
「お主。その体に、どれだけの魔力を貯められるのだ?」
「制限は、無いようですよ」
「困ったものだ。上の奴等の迷惑になる。ここへ来るのは、今回だけにしておけ!」
「そうですね。ダンジョン探索者の不評を買ってまで、できませんね」
本心とは違ったが、大人の対応をした。
サムゼル様は《魔眼》の持ち主なので、もしかしてばれてるかもしれない。
「こんな人族がおろうとは、お主には驚かせられる」
「いやー、お恥ずかしい」
「ところで、昼食はどうするのだ?」
「家で猫と馬がお腹を空かせて待ってるので、帰ってからとります」
「そうか。では、また日を改めて来い。ケーキも忘れずにな」
「はい、分かりました。それでは、失礼します」
この場を、早々にお暇させて貰った。
◇
僕は別荘に、直接転移した。
「ただいま」
「ご主人、遅いニャ!」
「ごめん、ごめん。お腹空いたろう。でも、もう少し待っててくれ。先に、シャルロッテに食事をあげてくる」
「しょうがない。シロンも一緒に行くニャ」
厩舎へ行くと、シャルロッテにも謝った。
「ヒヒーン! ヒヒーン!」
「大丈夫。待つのは慣れてるって言ってるニャ」
「何だその意味深なフレーズ。でも、突っ込まない方が良さそうだ」
「ヒヒーン!」
「前世の事って言ってるニャ」
「よし、分かった。ご飯を食べたら、騎乗して出掛けよう」
「ヒヒーン!」
「嬉しいって言ってるニャ」
シャルロッテは少し落ち込んでいたようだが、僕が騎乗すると聞いて元気になった。
僕はシャルロッテの首を撫でてやり、食事の用意をした。
僕とシロンも、この場で一緒に食事をとった。
「ご主人、この後どこに行くニャ?」
「ケイコのところに、行こうと思う」
「げっ、新しい動物枠のところニャ。別の場所がいいニャ!」
「ケイコは、僕がテイムしたんだ。仲良くしてやってくれよ」
「ポンポン哀願動物を増やされても、困るニャ」
「シロンは、シャルロッテの時もそうだったな」
「今でも、シャルロッテにご主人を渡す気無いニャ!」
「ヒヒーン!」
「何、言ってるニャ! ご主人は、シロンのものニャ!」
「ヒヒーン!」
「おいおい、喧嘩は止めてくれ!」
最近この件で争いは無かったのだが、どうやら決着してなかったらしい。




