第四十七話 ダンジョンコアに近付く為の準備
ニコルの兄夫婦の子供が出てきますが、第五章四十一話に追記し出産した事にしました。
ダンジョンで手に入れたニーワトリの肉で、大量に唐揚げを作った。
それを専用の魔法袋にしまい、エシャット村に帰った。
そして、父さんを見付け早速相談した。
「ニーワトリの唐揚げを、スーパーで売るのか? そりゃ、大歓迎だ。収穫祭で、みんな喜んでたからな」
「それじゃ、いいんだね」
「ああ、別に構わないぞ。ところで、他の二つの料理は、売らないのか?」
「二つ? ああ、そっか。あの時、一口豚カツとローストビーフも振る舞ったんだっけ」
父さんはローストビーフが好きで、たまに作ってあげると喜んでいた。
「そのうちね。最初は、唐揚げだけにしとくよ」
「そうなのか?」
父さんはそう言いながら、がっかりしていた。
許可が出たので、大量の唐揚げが入った魔法袋と店先に陳列する為の保温ケースを父さんに預けた。
保温ケースは、王都の露店でトルネードポテトを売った時と同じ仕様の物だ。
お客さんが購入する時は、容器や皿を持参して貰う事にした。
この為に容器を作って、村のゴミを増やしたくなかったのだ。
ちなみにパンの販売も、籠を持参して貰っている。
「父さん。後は、よろしく頼むね。僕は、ジーナを見てから戻るよ」
「ああ、任せろ。ジーナなら、部屋で寝てるぞ」
「うん。じゃあ、寝顔を見てくる」
僕は生まれて間もない姪のジーナの寝顔を見てから、プラーク街の別荘に戻った。
◇
別荘に戻ると、サムゼル様との会話を思い出していた。
「ダンジョンコアから出る魔素って、人に害があったんだ。死に追いやったり、凶悪な魔人に変えてしまうなんてまずいよね。僕達ダンジョンにいて、大丈夫なんだろうか?」
今までダンジョンにいて、魔素の影響を感じた事は無かった。
しかし、魔素の事を知り心配になった。
そういう訳で、《検索ツール》で少し調べてみた。
結果だけ言うと、大丈夫なようだ。
どのダンジョンも、できた当初は魔素が充満し危険だった。
しかし、次第に魔王が全体を制御するようになり、空気中に魔素を漏れなくしたらしい。
現在魔素は、地面や壁や天井を伝って各階に供給されている。
ついでに魔人について、調べてみた。
「魔人って魔族と同類だと思ってたけど、実際は違うんだ」
魔人は魔素の影響で人が変異し魔族に近い存在になっただけで、純粋な魔族とは別物だった。
「死んだり魔人になるのは嫌だけど、魔力や経験値は欲しいよなー。どうすれば、ダンジョンコアに近付けるんだ?」
少し考えて頭に浮かんだ方法は、上級の《結界属性魔法》・毒ガス用の防護マスクと防護服・宇宙服だった。
「あれ、ちょっと待てよ。このペンダント、《強力な状態異常耐性》が付与されてるじゃないか!」
僕は首に掛けて、服の中にしまってあったペンダントを取り出した。
「コカトリスの《石化攻撃》も防げたし、魔素だって大丈夫だよな」
僕は、他に危惧する事を考えた。
「ダンジョンコアの近くは、空気中の魔素が濃過ぎて酸素濃度が低いって事も考えられるな。それだけクリアすれば、いけるんじゃないか?」
そう思い立つと、直ぐに《酸素吸入》の魔道具を作り始めた。
そして、製作はその日の夜まで掛かった。
「完成だ! これなら、水中でも使えるぞ!」
僕が製作したのは、小型で口に咥えるタイプの酸素吸入の魔道具だった。
必要か分からないが、ついでに《水中眼鏡》も作った。
こうして、ダンジョンコアに近付く準備は整った。
◇
翌朝の朝食後、一人でダンジョンに行く事を、シロンとシャルロッテに打ち明けた。
「ご主人。危険な事は、駄目って言ったニャ!」
「ヒヒーン!」
「まあまあ、ちゃんと対策したから大丈夫だ」
「対策は分かったニャ! でも、魔王は危険ニャ!」
「ヒヒーン!」
「大丈夫だ。もう、戦わないよ」
「そんな事言って、魔王が攻撃してきたらどうするニャ!」
「ヒヒーン!」
「今度は、《亜空間農場》に逃げ込むよ」
「それでも、行っちゃ駄目ニャ!」
「おいおい、それはないんじゃないか?」
「そこまで言うなら、《コカトリスの唐揚げ》を置いてけば許すニャ!」
「おっ、本音が出たな。でも、やらないぞ」
「そんニャー!」
僕は引き止める二人(二匹)を置いて、サムゼル様に渡すお土産を持参しダンジョンへ向かった。




