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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第五章 エシャット村発展編
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第四十三話 ニコル、突然の遭遇②

対峙する短い間に、僕は脱出方法を閃いた。


『《亜空間農場》になら、逃げれるんじゃないか?』


しかし、それは実行しなかった。


『いや、これからもこのダンジョンに訪れるだろうし、村の狩猟班も来ている。変に関係を拗らせるより、この《余興》に付き合うべきなんじゃないか?』


そんな考えが、頭を巡った。


僕は逃げるのを諦め、《牙狼剣》を鞘から抜き構えた。


大量の魔力を剣に込めると、剣は強力な冷気を纏った。

当然、所持者の僕に影響は無い。



魔王はそれを見て、攻撃を仕掛けて来た。


「行くぞ。《火炎弾》」


《火炎弾》は、目の前で急に角度を変え襲ってきた。


『パーン! パーン! パーン! パーン! パーン!』


その動きは、一度見ている。

今度はそれに反応し、全て切り捨てた。


《火炎弾》は剣に触れた瞬間破裂し、ダイヤモンドダストのように宙を舞った。


「はははっ、やるな。なら、これならどうだ」


今度は多数の《火炎弾》が、意思を持ったように不規則に軌道を変えながら襲ってきた。


「《ブリザード》」


『ゴォーーーーー! ゴォーーーーー! ゴォーーーーー!』


剣を構え技の名前を唱えると、《火炎弾》に向かって暴風雪が吹き荒れた。


『ジュワー! ジュワー! ジュワー! ジュワー! ジュワー!』


暴風雪は《火炎弾》を包み込み、急激に熱を奪った。

そして、僕へ届く前に萎み消失した。


「それなら、これだ。《灼熱竜巻》!」


魔王がそう唱えると、灼熱の炎の竜巻が暴風雪を槍のように突き破り、その先端が僕に迫った。


「《ブリザードトルネード》」


僕は同様に、高密度の暴風雪の竜巻をぶつけた。


『ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! ガッ!』


それらは激しくぶつかり合い、その力は拮抗した。



《牙狼剣》のこの技は、魔法に比べ魔力の消費が激しかった。


「いったい、いつまで続けるつもりなんだ?」


『そうだな。どちらかが、参ったと言うまでにするか!』


騒音で声など掻き消される状況だったが、魔王には聞こえたらしく僕の脳内に《念話》で応えた。


「約束ですよ!」


『随分、自身ありげだな』


「策はあります」


僕は魔王の魔法に対抗するには、このままでは分が悪いと思った。

そこで、《影の英雄》の効果で二倍になった身体能力に掛ける事にした。


もしそれで駄目なら、更に《身体強化》スキルを使うつもりだ。



《ブリザードトルネード》を止め《灼熱竜巻》をかわすと、身体能力に任せて魔王に襲い掛かった。


「なっ! 速い」


魔王は《灼熱竜巻》の軌道を僕に向けるが、僕はその瞬間移動している。


そのせいで、辺りの壁や床は溶けてしまっている。

このままでは、いずれ足の踏み場が無くなる事が予想された。


「くそっ!」


魔王はそう叫ぶと、今度は両手で《灼熱竜巻》を放ってきた。

しかし、僕の動きについて来れず、ついに魔王の後ろを捉えた。


『ガイーン!』


「やはり、《防御結界》か」


「不覚、後ろを取られたか!」


『ガイーン! ガイーン! ガイーン! ガイーン! ガイーン!』


僕は魔王の攻撃を避けながら攻撃を続けたが、《防御結界》を砕く事ができなかった。



埒が飽かないので、僕は一度距離を取った。


「しょうがない。取って置きを使うか」


僕は武器を、《牙狼剣》から《オリハルコンの剣》に持ち替えた。


「行きますよ!」


「何だ、その凄まじい剣は! くそっ、かくなる上はこれだ。《マグマ》」


魔王は僕の持つ剣に、脅威を感じたようだ。

それに抗い、自分を中心に波紋が広がるように、地面をマグマに変えていった。


「マグマだと。くそっ!」


僕は足場が消える前に跳躍し、魔王に迫った。


「引っ掛かったな。《マグマ防壁》」


跳躍中の僕の目の前に、突如マグマの壁が広がった。


ボス部屋内でなら転移できたが、僕は一瞬で判断しこのまま突っ込む事にした。


「ハアッ!」


オリハルコンの剣に大量の魔力を込め、《マグマ防壁》に切り掛かった。

すると、目の前のマグマが吹き飛び、魔王の慌てた姿が目に入った。


その勢いで魔王に切り掛かると、何重にも張られた《防御結界》が、『スー』っと切れていった。


そして、そのまま魔王の喉元に剣を突き付けた。

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