第三十七話 別荘の購入と野鶏のたまご
2021/05/30 ケイコのステータス表記を追加しました。
《亜空間ゲート》を設置する為、プラーク街に家を購入した。
購入した家はダンジョンのある繁華街から、一キロ程離れた住宅街に建っていた。
家は大きかったが老朽化が激しく、ほとんど土地だけの値段で安く買う事ができた。
それでも、二千五百万マネーもしてしまった。
別荘という扱いにして、戸籍はリートガルド伯爵領のままである。
「あーあ、とんだ出費だったよ」
「ご主人、太っ腹二ャ」
「これも、《福利厚生》の一貫だから、しょうがないよな」
「日本の会社みたい二ャ」
「村の人達も時間とお金に余裕ができて、暇を持て余しそうだからな。ちょっとした、旅行気分を味わえればいいと思うんだ」
「ご主人は、エシャット村人事部福利厚生課の課長さん二ャ」
「どっちかと言うと、営業の平社員なんだけどな」
この後、老朽化した家をリホームし、家具やベッドや魔道具を置いた。
庭も広く厩舎もあり、こちらもシャルロッテの為にリホームを済ませた。
敷地は壁で囲まれ木が植えられていたので、外からこれらの変化は分かりにくかった。
セキュリティーの《結界》は長期間持続させる為、魔法ではなく魔道具を作成し設置した。
「さて、準備は整ったぞ」
「一旦、村に帰るのか二ャ?」
「いや、転移して来たから、時間を調整する」
「それじゃ、ダンジョンに行くのか二ャ?」
「今は、ダンジョンに行かない。先に、やっておく事があるんだ」
その日は、購入したばかりの家で就寝した。
◇
翌日、朝食を済ませると、シロンとシャルロッテと共に転移した。
僕達が転移した場所は、野鶏のいる森の中だった。
「ご主人、また野鶏を捕まえるのか二ャ?」
「いや、野鶏がたまごを沢山生む為に、試したい事があるんだ」
「いい案が、浮かんだのか二ャ?」
「まあ、見ててくれ」
僕は元気そうな雌の野鶏に目を付けると、一気に駆け寄り捕まえた。
「コケッ! コケッ! コケッ!」
野鶏を両手で抱えると、目と目を合わせた。
すると、観念したのか野鶏は大人しくなった。
「《万能調教》」
そう言葉を発すると、野鶏は白い光りに包まれた。
そして、光りが治まると、目の前にウインドウが現れた。
〔赤色野鶏を、《テイム》しました。名前を付けてください〕
「おっ、できたよ」
「ご主人、今の光りは何ニャ?」
「今のはスキルを使って、こいつをテイムしたんだ」
「ニャにー! テイムニャとー!」
シロンはテイムと聞いて、大声で叫んだ。
「僕に《服従》し、ステータスも上がったはずだ。あと、こいつに名前を付けるぞ」
「名前なんて、どうでもいい二ャ! 動物枠は、もういっぱいニャ!」
「シロン、諦めろ!」
「嫌ニャー!」
シロンの抗議を無視して、僕は野鶏の名前を考えた。
「よし、決めた。お前の名前は、《ケイコ》だ!」
すると、再びウインドウが現れた。
〔赤色野鶏の名前を、《ケイコ》と登録しました〕
そして、ケイコのステータスを確認した。
【名前】ケイコ
【年齢】一才
【種族】赤色野鶏
【性別】雌
【職業】ニコルのペット(テイム中)
【称号】-
【レベル】1
【体力】100/100←10/10(×10)
【魔力】10/10←0/0(+10)
【攻撃力】10←1(×10)
【物理防御力】10←1(×10)
【魔法防御力】5←0(+5)
【筋力】10←1(×10)
【敏捷】20←2(×10)
【持久力】10←1(×10)
【精神力】10←1(×10)
【知力】10←1(×10)
【運】30←3(×10)
【固有スキル】-
【スキル】飛翔(Lv1)new/産卵(Lv1)new
【魔法】-
【武器】-
【防具】-
【アイテム】-
「コケー! コケー! コケー!」
「その鳥は喜んでるみたいニャけど、ご主人ネーミングセンスないニャ」
「そうかー? ヤケイのケイを取って、ケイコって付けたんだけど、駄目だったか?」
「済んだ事は、もういいニャ。それで、そのケイコをどうするつもりニャ?」
「たまごを産めるか、確かめる」
「コケッ!」
「やってみるって言ってるニャ」
「《念話》は使えないみたいだけど、僕の言葉は通じてるんだな。それじゃ、頼むぞ」
「コケッ!」
ケイコを掴んでいる手を離すと、その場で息み出した。
『ポトッ!』
「コケー!」
「産まれたって言ってるニャ」
「おお、よくやった。それにしても、交尾もせずよく産まれたな」
「コケッ! コケッ! コケッ!」
「ご主人の為に、頑張った。でも、一日一個が限界って言ってるニャ」
「そうか、一日一個でも上出来だ。よくやったぞ、ケイコ」
僕はそう言って、ケイコの背中を撫でてやった。
「コケー! コケー!」
「ご主人に褒められて、嬉しいって言ってるニャ。だけど、そのポジションは、シロンのものニャ!」
「シロンは、本当にやきもち焼きだな。ケイコ、このたまごは貰っていいのか?」
「コケッ! コケッ!」
「無精卵だけど、どうぞって言ってる二ャ」
「ありがとうな。それで、これからの事なんだけど、ケイコにはここで子供を増やして欲しいんだ」
「コケッ?」
「ケイコの子供達も、沢山のたまごを産めるようになるか試したいんだ」
「コケッ! コケッ!」
「ご主人様の為に、頑張るって言ってる二ャ」
「ああ、頼む。ケイコには、《トウモローコシ》をあげよう」
生のトウモローコシを《亜空間収納》から取り出し、皿の上に置いた。
そして、錬金術で粒と芯と皮に分離し、芯と皮を取り除きケイコに差し出した。
すると、ケイコはそれをつついて食べた。
「コケー!」
「凄く美味しいって言ってるニャ」
「そうか、また来た時にあげるから頑張れよ」
「コケー!」
多くの野鶏をテイムすればたまご問題は解決しそうだが、敢えてそうしなかった。
ケイコと意思が通じたのに、これから行う事に少し罪悪感を感じたからだ。
自分のステータスを確認すると、《【テイム】ケイコ(赤色野鶏)》という項目が追加されていた。
「それじゃ、帰るぞ」
「コケー!」
ケイコに別れを告げると、僕達は別荘に戻った。
昼食に、ケイコの産んだたまごを、目玉焼きにして食べた。
「美味しいけど、複雑な気分だ。これからケイコの子孫を育てて、それを食べるんだ」
「ご主人、深く考えたら駄目ニャ」
「分かってる。上手く、気持ちをコントロールしないとな」
昼食を済ませると、シャルロッテには留守番をして貰い、僕とシロンはダンジョンへ向かった。




