第三十一話 野鶏の捕獲と食材の確保
2021/06/06 シロンのレベルと一部の文章を修正しました。
プラーク街の郊外に転移すると、馬車で目的の森へ向かった。
「シャルロッテ、ちょっと待ってくれ。目的地は、この先の森なんだ」
街道を進むと、森が見えた。
しかしその場所は馬車では近付けず、一旦停止した。
「ヒヒーン!」
「ここからは、騎乗して行く」
「ヒヒーン!」
荷車を《亜空間収納》にしまい、僕とシロンはシャルロッテに騎乗した。
「さあ、行こう」
「ヒヒーン! ヒヒーン!」
いつもの事ながら、シャルロッテは僕を背に乗せ喜んでいた。
◇
森を奥へ行くと、開けた場所があった。
そこは雑草が生い茂り、崩れ掛けた石積みの家が二十軒程建っていた。
人の気配は無く、既に廃れた集落の様だ。
「コケッ!」
「コケッ!」
「コケッ!」
そして、この場所には目的の《野鶏》が、数え切れない程いた。
こんな廃れた集落にいるなんて、昔ここで飼われてたのかもしれない。
その野鶏達はこちらを見つめ、明らかに警戒している。
「いっぱいいるニャ」
「これだけいれば、エシャット村の肉とたまご事情は改善できるぞ」
「シロンの狩猟本能が、疼くニャ」
「ふっ、まるで猫みたいだな」
「シロンは、れっきとした猫ニャ」
「人語をしゃべるけどな」
「そんなのどうでもいいニャ。早く捕まえるニャ」
「待ってくれ、シロン。生け捕りにしたいから、僕一人で捕まえる」
シロンが狩ったら、折角の野鶏を傷付けてしまう。
「そんニャー。でも、生け捕りならしょうがないニャ。その代わり、ダンジョンに連れてってニャ」
「ああ、連れて行ってやる。元々行くつもりだったしな」
シロンはやる気満々だったが、僕の意見を尊重してくれた。
◇
僕は《瞬動》スキルを使い、一瞬で野鶏の前に移動した。
「「「「「コケッ?」」」」」
野鶏は、何が起こったのか理解していなかった。
すぐさま二羽の首を両手で鷲掴みにし、《亜空間農場》に投げ入れた。
「コケー!」
「コケー!」
「コケー!」
野鶏はやっとその状況を理解したらしく、一斉に逃げ出した。
しかし、僕から逃げられる筈も無く、片っ端から捕まえて《亜空間農場》に放り込んだ。
「よし、五十羽は捕まえたぞ。これだけいれば、充分だ」
「この調子で、豚や乳牛も確保するのかニャ?」
「そう思ってたけど、良く考えたらこいつらを飼育するのって結構大変なんだよな」
「今頃、そんな事言ってるニャ」
「本当だよな。でも、一応確認しておくか」
将来の為に、《検索ツール》で豚や乳牛を探してみた。
「野良の豚や乳牛はいないな。猪や品種の違う野生の牛ならいるけど」
「それじゃ、駄目なのかニャ?」
「猪はいつでも捕まえられるし、牛は生クリームやバターやチーズ用に牛乳を確保したかったんだ」
「そうだったニャ」
「取り敢えず、野鶏だけでいいや」
「それは良かったニャ。用事が済んだなら、さっさとダンジョンに行くニャ!」
「分かったよ」
「久しぶりのダンジョンニャ!」
「ヒヒーン! ヒヒーン?!」
「私は、留守番ですか?って言ってるニャ」
シャルロッテは、今の会話を聞いていた。
だが、今回も連れては行けない。
「シャルロッテ、すまない。今回も《亜空間農場》で、待っててくれないか?」
僕はシャルロッテの首を、優しく撫でてやった。
「ヒヒーン! ヒヒーン!」
「しょうがない。ご主人の為に待つって言ってるニャ」
「ありがとな」
そして今度は、頬擦りをしてやった。
「ヒヒーン! ヒヒーン!」
「ああ、幸せって言ってるニャ。くっ、羨ましい!」
シャルロッテが満足したところで、《亜空間農場》に入って貰った。
「それじゃ、シロン。ダンジョンに行くぞ」
「はいニャ!」
僕とシロンは、プラーク街のダンジョン近くに転移した。
◇
僕達はダンジョンに入場すると、五日間狩りまくった。
前回のようにサジ達がいないので、自由に動けて大量の食料を確保できた。
シロンも活躍し、首に小型の魔法袋をぶら下げ、自分でドロップ品を回収していた。
「何だ、あのネコ。魔物を狩ってるぞ!」
「ドロップ品を、魔法袋に回収してやがる!」
「あのネコ、可愛いなー!」
シロンの狩りが人目に付き、噂になるという一幕があった。
しかし、この事は予想していたので、僕とシロンは《変装魔法》で姿を変えていた。
「クロン。これくらいで充分だ」
シロンは今、黒ネコのクロンになっている。
「もう、いいのかニャ?」
シロンは、終始狩りを楽しんでいた。
「ああ、今度はエーテル街に行くぞ」
「また、ダンジョンの街ニャ」
「悪いけど、ダンジョンには行かない。孤児院に行く」
「それは、残念だニャ」
シロンは嘆きつつも、レベルが一つ上がりレベル25になっていた。
 




