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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第五章 エシャット村発展編
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第二十七話 ウェンディの思惑

調理場をみんなに案内した後、作業マニュアルを併用し、実際にパン作りを見せる事にした。


文字の得意でない人が多いので、図解入りにして本当に良かったと思った。

文字の勉強は、追々進める事にする。


作業マニュアルには、工程・道具・材料・分量・時間等が記載されている。

これを見ながら作業すれば、ふんわりとした白パンを作れるようになっている。


まずは、貯蔵庫から材料を取り出し並べた。


「ニコルっち。それ、小麦粉なの? 真っ白だね」


「美味しいパンを作るには、この白い小麦粉が必要なんだ。小麦の粒の中身だけ、使ってるんだぞ」


「へー、そうなんだ」



小麦粉・塩・砂糖・イースト菌を混ぜて水を足し、丁寧に捏ねてから三十分程一次醗酵させた生地をみんなに見せた。


「ニコルっち。生地が、さっきより膨らんでるよ」


「これは、イースト菌の働きで膨らんだんだ。だからって、入れ過ぎると膨らみ方が悪くなるからな」


ウェンディの場合、釘を刺して言っておかないと心配だった。



生地をガス抜きし、小分けにして三十分程二次醗酵させ、オーブンで焼いてパンを取り出した。


「ニコルっち。パンが、ふんわりしてるよ」


「材料の分量と手順を間違えなければ、こういうパンができるんだ」


「おいしそー。食べてもいい?」


「ああ、食べていいぞ」


「やったー!」



みんなに出来立てのパンを配り、食べて貰った。


「ニコルっち。凄く柔らかくて、美味しいよ」


「そうだろ。バターを入れると、もっと柔らかくなるぞ。みんなには、こういうパンを作って貰うんだ」


「味見なら、私に任せてよ」


「ウェンディも、パン作り頑張ってみろよ」


「そうだね。頑張る」


ウェンディにやる気を促していると、マルコさんが少し興奮気味に話し掛けて来た。


「ニコル。このパンは、凄いよ。僕はこういうのを、目指してたんだ」


「気に入ってくれましたか。でも、マルコさんこそ凄いですよ。自分で考えて、あそこまで美味しくできたんですから。僕のは、人からの受け売りですから」


本当は、前世の知識と《検索ツール》のお陰なんだけどね。


「そう言って貰えると、嬉しいよ。僕のパン生地は、エールを入れて醗酵させたんだ」


「へー、エールを使ったんですか」


自分の力で、そこに行き着く発想力に関心した。

マルコさんがいれば、パン工房は安泰に思えた。



次の日から、早速みんなにパンを作って貰った。


日頃からやっている事なので、慣れるまでにそれほど時間は掛からなかった。

一人を除いて、数日で作業マニュアル無しで白パンを作れるようになっていた。


「ウェンディ、もう諦めたのか?」


「諦めてないよ。今は約束通り、洗い物や片付けをしてるの」


「そうか、頑張れよ」


ウェンディは、《水属性魔法》を活かして洗い物をしていた。


みんなには、採用を決めた日から一ヵ月後、スーパーで売る事を目標にして貰った。

商品のラインナップは、食パン・丸パン・コッペパン・バターロール・クロワッサンである。


売れ行きがいい事を想定して、発売日までたくさん作り溜めするつもりだ。



発売日当日、噂を聞き付けてスーパーに人だかりができていた。


その様子を、僕とマルコさんは離れて見ていた。


「マルコさん。売り上げ上々ですね」


「本当だね。味には自信あるけど、値段が割りと高いよね」


「これでも、王都の半額以下ですよ。黒パンを自分で作る手間と美味しさを考えたら、妥当だと思いますよ」


「そうだね。僕らの給料も、ここから出るんだったね」


「そうですよ。マルコさんは責任者なんだから、利益の事も考えてくださいね」


「パンだけ作ってる訳には、いかないんだね。やっぱり、断ろうかな」


「そんな事言わず、頑張ってくださいよ。男はマルコさんだけなんですから、みんなを引っ張って行ってください」


「分かったよ。その代わり、困った時には相談に乗って貰うよ」


「大丈夫です。ちゃんと協力しますって」



スーパーを後にしパン工房へ行くと、休憩所ではウェンディが子供と遊んでいた。


実は採用した女性五人の内三人は既婚者で、三人共小さい子供がいた。

たまに僕の家にも来ていたが、二歳と三歳なので面倒を見るのが大変だった。


「ウェンディ、楽しそうだな」


「あっ、ニコルっち。子供好きだし、楽しいよ」


「ウェンディが面倒を見てくれて、助かったよ」


「へへん、私も役に立ったでしょ」


「そうだな。ちゃんと、役に立ってるぞ」


「ところで、ニコルっち。お菓子は、作らないの?」


「パン作りが、落ち着いてからだね」


「そうなんだ。残念」


ウェンディがここで働く理由は、『ここにいればパン以外にも、いつかお菓子が食べれるんじゃないか』と、思っての事だった。

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