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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第五章 エシャット村発展編
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第二十五話 盗賊退治した者の行方

僕が父さんのところへ戻ると、商店を見て回っているところだった。


「父さん、ただいま」


「おー、ニコル。もう済んだのか?」


「うん。ゴルド村の村長さんに、魔法袋を渡して来たよ。中身も大丈夫だって」


「それは、良かったな」


店先では話しづらいので、場所を移動して先程までの出来事を掻い摘んで説明した。


「そうか。今年も盗賊のお宝は、置いて来たのか」


「そうだね」


父さんは、少し残念そうな顔をした。


「おい、ニコル。だからって、父さんが欲しかったとか勿体無いとか、そういう訳じゃないぞ」


父さんは、慌てて言い訳を始めた。


「父さん。僕は、何も言ってないからね」


「そ、そうだな。でも、今回も兵士達がお宝を持ち帰るんだろ。持ち主が現れなければ、全てこの領都の運営費に回されてしまうな」


「別にいいじゃない。今は、僕も稼げるようになったんだから」


「ふっ、どうやらニコルの方が、父さんよりずっと大人のようだな」


父さんは、笑いながら言った。どうやら、お宝の事は諦めがついたようだ。



「ところで父さん、買い物は済んだの?」


「いや、今年は何も買わなかった。必要な物は、ニコルから手に入るからな」


「そうだね。だいたいの日用品は、僕の錬金術で揃えられるね」


「ニコル、これからも頼むぞ」


「うん、任せて。それで、父さん。話しは違うんだけど、今度はパン工房を建てたいんだ」


「パン工房か。どうしてだ?」


エシャット村では、以前《ライ麦》で作った固い《黒パン》を食べていた。

ライ麦は痩せた土地でも育てられる村人用で、小麦は比較的良い土地で育てた人頭税用だった。


今は土地を改良して村人も小麦のパンを食べているが、《全粒粉》のパンなので幾分硬く茶色かった。

栄養面ではこちらの方がいいので、今までは黙っていた。


「王都で白パンを、食べたんだよね。この間の収穫際のパンより、もっと美味しいよ」


「白パン? そんなに美味しいのか?」


「食べてみる?」


「あるのか?」


「ほら、これ。《クロワッサン》っていうんだ」


僕は魔法袋からクロワッサンを取り出して、父さんに渡した。


「どれ、食べてみるか。もぐもぐ、何だこれは柔らかくて美味いぞ! 白パンとは、ここまでの物なのか?」


「気に入ったようだね」


「ああ、気に入った。パン工房を作ったら、毎日これが食べられるんだな」


「そういう事。ちなみに、僕の錬金術でも作れるよ。黙ってて、ごめんね」


「なっ、何ー!」


「詳しい話しは、また今度ね」


父さんは、パン工房の建設に乗り気になったようだ。



翌日、宿で朝食を済ませ、エシャット村に帰る準備を整えた。


「ニコル、ずっと御者をさせて済まないな」


「慣れてるから、大丈夫だよ」


そう会話を交わすと、父さんは馬車の座席へ乗り込んだ。


「シャルロッテ。帰り道、また頼むぞ」


僕はそう言いながら、シャルロッテを撫でてやる。


「ヒヒーン!」


シャルロッテは、元気に頷いた。


「シロンは、また御者台でいいのか?」


「ニャー」


シロンは一鳴きしてから、御者台に駆け上がった。


僕も御者台に座り手綱を握って、シャルロッテに発進の合図をした。


「それじゃ、行こうか」


「ヒヒーン!」


馬車は動き出し、宿の駐車場を後にした。



馬車を走らせると、朝早いというのに兵士がそこらにたくさんいた。


「黒髪黒目の少年を、見た者はいないかー!」


「情報を提供した者には、褒美をやるぞー!」


兵士は、人を探しているようだ。


「あれ? 黒髪黒目って、昨日変装した僕と一緒だ。もしかして、僕を探してるのか?」


この国では、黒髪黒目の人間は少なかった。そういう訳で、かなり目立った。



《その頃、領主邸では》


「聞き出した情報によると、盗賊を捕まえた人物とゴルド村の村長に魔法袋を渡した人物は、同じ黒髪黒目だ。まず、同一人物で間違いないだろう」


「しかし父上、我々の前に現れた時間とゴルド村の村長の前に現れた時間に、差が無いように感じます。そのような移動が、可能なのでしょうか?」


「それだけ、優れた手立ての持ち主なのだろう。盗賊の証言からも、おそらく単独行動」


「単独で十五人の盗賊を制圧し、洞窟の入り口に短時間で鉄格子を作り、高速の移動手段も持ち合わせている。そんな人材であれば、是非我がリートガルド伯爵家の家臣に招き入れたいですね」


「ああ。しかも、盗賊の金品には手を付けず、魔法袋と武器だけ持ち去った人徳のある者なのだろ」


「はい、その通りです」


「こやつが現れるのは、決まってこの時期。何か手掛かりが、あるはずだ」


「今朝討伐から帰って父上から話しを聞いて、休む間も無く兵士に聞き込みに行かせたのですが、見付かればいいですね」


「ああ。だが、去年までは仮面を被って、人目を避けてた節がある。今年になって、顔を晒したのが気になるな」


「どういう心境の変化ですかね?」


「ふっ、わしにも分からぬ」


この後、兵士達の聞き込みで、黒髪黒目の少年が見つかる事は無かった。

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