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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第五章 エシャット村発展編
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第二十四話 ニコル、盗賊から奪い返す

僕は検索した場所まで、《目視転移》を十数回繰り返し辿り着いた。


「やっと、着いた」


その場所は森の中の洞窟で、入口には見張りが二人立っている。

盗賊の人数を《検索ツール》で調べると、洞窟の中にも十三人いた。


「全部で十五人か。それ程多くはないな」


普通の盗賊では、僕にとってたいした人数ではなかった。


「今回は、魔法で姿を変えるか」


去年までは仮面を被ったが、今回は《変装魔法》で姿を変える事にした。


「準備も整ったし、行くか」


僕は《瞬動》スキルを使い、一気に洞窟へ近付いた。


「「なっ!」」


盗賊は僕が急に現れた事で驚き、声を漏らした。


「《睡眠》」


盗賊に抵抗する隙を与えず、《睡眠魔法》で眠らせた。

この魔法は、半径二メートル以内であれば、人数に制限無く使えた。


今回はこの調子で、武力を使わず制圧する予定である。



洞窟の奥へ進むと、盗賊達は完全に油断していた。


酒を飲みながら、たわいのない話しで盛り上がっている。


「《睡眠》《睡眠》《睡眠》《睡眠》《睡眠》」


僕は《瞬動》スキルで移動しながら、《睡眠魔法》を掛けていった。


「よし、みんな寝たな。ゴルド村の魔法袋は、あの宝箱の中だな」


宝箱の蓋に手を掛けると、鍵が掛かっていた。


「《解錠》」


『カチャ』


魔法を唱えると、宝箱の鍵が開いた。

この魔法は、グルジット邸にあった魔法書で覚えた《無属性魔法》である。


僕は早速、宝箱の蓋を開けた。


「結構、宝石や硬貨を溜め込んでるな。お目当てのゴルド村の魔法袋は、これだな」


そこには、目立つように『ゴルド村』と、大きく書かれた魔法袋が入っていた。


この国の法律では盗賊を退治した場合、そいつらの金品は一旦街や村に預けられる。


一年間保管され持ち主が現れないようであれば、それは預けた者の所有となる。

持ち主はその価値の三割を支払い引き取る事ができたが、自分の物だと証明する必要があった。


《鑑定》スキルを持つ者に依頼すれば証明できたが、その経費は自分持ちであった。


「手続きで身元が割れるのは嫌だし、魔法袋だけでいいな」


僕は魔法袋だけ手にし、他はそのままにした。


「武器だけは、回収しなきゃな」


そう呟きながら、後から来るであろう兵士の為に武器を回収した。



「後は、こいつらの引渡しだな」


盗賊を追っている兵士は、まだ遠くにいた。

ここを探し当てるには、時間が掛かりそうだ。


「よし、地図を書くか。道らしい道は無いから、ところどころ目印の張り紙をすれば分かるだろ」


盗賊達を《無属性魔法》の《捕縛》で縛り上げ、逃げないように入口を鉄格子で塞ぎ扉に鍵を掛けた。

扉の鍵は、地図と一緒に兵士に渡すという寸法だ。


地図を書き上げると、兵士達の元へと移動した。

所々に、目印を置くのも忘れない。


兵士達の元へ辿り着くと、地図と鍵を投げ付けた。

そして、そこから直ぐに移動し、彼らが拾うのを観察した。


「何だ? 何か飛んで来たぞ」


彼らはそれを拾うと、丸まった紙を広げて内容を確認した。


「見ろよ! 盗賊のアジトの地図だってさ。鍵まで付いてるぞ」


「それに書いてある内容って、信じてもいいのか?」


「分からん。取り敢えず、隊長に報告だな」


地図と一緒に書かれた内容は、次の通りだ。


『盗賊十五人、アジトに監禁済み。この鍵は、監禁した洞窟の扉の鍵。ゴルド村の魔法袋は、回収し持ち主に渡す』


「これで信用するかは不安だが、彼らも手掛かりを探してたから、足を運んでくれる事を期待しよう」



この後、地図と鍵は隊長の手に渡った。


「何っ! 今年も現れたのか? どれ、見せてみろ」


「はい、これです」


「確かに怪しいな。だが、今までのやり方と一緒だ。信じても大丈夫だろう」


「今までも、現れたのですか?」


「そうだ。ここ数年、この時期になると現れる。この私の手柄を奪い忌々しく思うが、同時に礼を言いたい」


暫く様子を窺っていると、どうやら地図の場所に向かうようだ。

彼らは三十人もいるので、問題なく盗賊を連れて帰れるだろう。


「後はゴルド村の人を探して、魔法袋を返せば終わりだな」


僕は魔法袋の持ち主を《検索ツール》で探し、その人のところへ向かった。



魔法袋の持ち主はゴルド村の村長で、リートガルド伯爵邸の門の前の広場にいた。


どうやら、盗賊を討伐に行った兵士達の帰りを待っているらしい。

村長の他にも、馬車の御者と付き添いの人もいる。


僕は不安そうにしている村長に、話し掛けてみた。


「失礼ですが、ゴルド村の村長さんですか?」


「んっ? ああ、そうじゃ。わしは、ゴルド村の村長じゃ」


「良かった。ある人物に頼まれて、渡したい物があるんです」


「渡したい物?」


僕は普通の肩掛け鞄から、『ゴルド村』と書かれた魔法袋を取り出した。


「そっ、それは、盗賊に奪われた魔法袋!」


ゴルド村の村長は、魔法袋を見て叫んだ。


「『盗賊から取り返したから、困ってる村長さんに返して欲しい』と、言われたんです。念の為、身分証があったら、見せていただけますか?」


「ああ、分かった。これじゃ」


村長は首からぶら下げた銅で作られたプレートを、見せてくれた。


「どうやら、大丈夫そうですね。それじゃ、お渡しします」


僕はそう言って、魔法袋を差し出した。


「ありがとう。本当に助かった。わしはもう、死にたいくらい落ち込んでたんじゃ」


「そんな、死にたいだなんて。ところで、中身は大丈夫ですか?」


「待ってくれ。今、確認する。・・・・・おおっ、大丈夫じゃ。全てあるぞ!」


「良かった。他に、何か奪われましたか?」


「小銭袋を盗られたが、分散して隠してたので、それほどの額ではない」


「なら、それはいいのかな?」


「ああ、構わない。魔法袋さえ戻れば、充分じゃ。人頭税の小麦俵は、魔法袋に入れても五回運ばんといかんから、助かったわい」


ゴルド村の村長は、満足げな顔をしていた。


「そうですか。それでは、僕は失礼しますね」


「待ってくれ! お主に、礼をしたいんじゃが」


「いえ。僕は渡してくれと、頼まれただけですので」


「しかし」


「まあ、いいんじゃないですか。善意は、素直に受け取りましょう。もう奪われないように、気を付けてくださいね」


僕はその場を去り、人のいない場所で変装を解き父さんのところへ戻った。

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