第二十二話 お嬢様達との再会
貴族街へは、ラングレイ伯爵家から貰った通行証を見せると、すんなり入る事ができた。
相変わらず街並みは綺麗で、屋敷はでかく豪奢だ。
やはり、僕には場違いである。
歩いてラングレイ伯爵家へ向かい、到着するといつぞやの執事が出迎えてくれた。
「お待ちしておりました。ニコル様」
僕を呼び出し、いずれ訪れる事は聞いていたらしい。
しかし、伯爵様もエミリも屋敷にいないので、応接室で待つ事になった。
エミリの方は学園が終わり、じきに帰って来るそうだ。
◇
『ドンッ!』
お茶を飲みながら待つと、ドアを勢い良く開け、エミリが応接室に入って来た。
「酷いよ、ニコル君。全然、顔も出さないで!」
エミリは僕の顔を見るなり、声を張り上げた。
「久しぶり、エミリ。元気だった?」
「見ての通り、元気よっ! それで、何普通に挨拶しちゃってるのよっ! こっちは、怒ってるんだからね!」
「やっぱり怒ってるんだ。それなら謝るよ。ごめん」
「ニコル君、本心から謝ってないでしょ。『取り敢えず、謝っとけ』っていうのが、見え見えよっ!」
『やばっ、《魔眼》スキルの持ち主だった』と、心の声。
「ほら、僕にも事情があってさ。村を発展させたり、行商の仕事も忙しいからね」
「だからって、少しくらい時間作れるでしょ!」
『コン、コン!』
エミリと言い合いをしていると、ドアがノックされた。
「どうぞ」
エミリが返事をすると、メイドに案内されて、ユミナが入って来た。
「お久しぶりです。ニコル君。元気そうですね」
久しぶりに見たユミナは、益々綺麗になっていて見蕩れてしまった。
「久しぶり。ユミナも、元気そうだね。少し、背が伸びたんじゃないか?」
「うん、五センチ位。でも、ニコル君も伸びたでしょ?」
「座ってても、分かるんだ。僕も、五センチ位伸びたかな」
「何かそこだけいい雰囲気に、なってるわね」
エミリが、二人の再会に横槍を入れて来た。
「そんな事無いよ。普通に、挨拶してただけじゃない」
「二人共、立ち話も何だし座って話そうか?」
「そうね。そうしましょ」
二人がソファーに座ると、メイドさんが来て紅茶を淹れてくれた。
◇
メイドさんが部屋を出ると、エミリがとんでもない事を言い放った。
「ねえ、《ガーランド帝国》の進攻で、《エステリア王国》の二度の危機を救った《英雄》って、ニコル君だよね?」
「えっ! 何それ、何の事?」
「私に、嘘は通じないわよ。それに、ステータスの称号に《影の英雄》ってあるしね」
「うっ! これって、何か知らないうちに付いてたんだよね」
「白を切るつもりね。でもね、ユミナが《未来視》でガーランド帝国が攻めてくる事と、ニコル君が関わる事を見てるのよ」
「そんな事言われてもなー」
「ニコル君は認めないけど、もう分かってるんだから」
「ニコル君は、エステリア王国を救った英雄です!」
「困ったなー」
「ふふっ、内緒にしたいようね。弱みを握ったわ」
「うっ、嫌な予感がする」
「何を言ってるの? とてもいい事よ。また私達と、《ダンジョン》に行けるのだから」
「やっぱり、思った通りだ」
「不服なの?」
「僕には、仕事があるんだ。それに、君らはもう充分強いんだから、僕がいなくても大丈夫だろ?」
「だって、後二年で《魔王》が来るじゃない。だから、強くならないといけないのよ。ニコル君となら、むちゃできるでしょ」
「強くなりたいなら、学園なんか行かず毎日ダンジョンに行ったらいいんじゃないか? それに魔王なら、既にこの大陸に大勢いるぞ」
「えっ、魔王ってもういるの?」
「ああ、ダンジョンの数だけいるぞ。しかも、みんなレベル300オーバーだ。対策とかしても、今更どうしようもないよ。それに、魔王達はこの世界を襲う気は無いらしい」
「どうやら、ニコル君の言ってる事は本当みたいね。でも、どうしてそんな事知ってるの?」
「二人には内緒にしてたけど、この間のスタンピードで魔王に会ったんだ。スタンピードの原因も、勇者が魔王に干渉したからなんだって」
「それを聞いたら、ダンジョンに行くの怖くなってきたわ」
「この情報は、秘密だよ。下手に魔王を刺激すると、またスタンピードが起こりかねない」
「脅かさないでよ!」
「ニコル君。ダンジョンに一緒に行くのは、無理なんですか?」
「ユミナ、ごめん」
僕は村の改善を優先したいので、たとえユミナの《お願い》が発動しても、今回は断るつもりだ。
「話しは変わるけど、私のお父さんとユミナのお父さんが、ニコル君に会いたがってたわよ」
「何で?」
「私の剣とエミリの杖を、改造してくれたお礼がしたいんだって」
「私のお父様ったら、『杖を譲ってくれないか?』って、言ってました。もちろん、断りましたけど」
「王都だったら、もっといいのが売ってるんじゃないか?」
「そんな事、ありません。ニコル君のした《付与》は、凄いんです」
「そうかなー?」
「そうです!」
「ところで、ここに呼び出したのは伯爵様、それともエミリ?」
「私だけど」
「だったら、伯爵様に会わなくてもいいよね?」
「えっ、会わないの? 私達の急成長と改造した武器を見て、報酬が少なかったと嘆いてたわ」
「別に、気にしなくていいよ。大事な書物を、見せて貰ったからね」
「そんな事言って、私達やお父さん達から逃げようとしてるんじゃないの?」
『ギクッ!』
「そ・ん・な・こ・と・な・い・よ」
僕は図星をつかれ、言葉が片言になってしまった。
「それは嘘ね! そうか、ニコル君はそう思ってるんだ」
「だって、しょうがないじゃないか。貴族と関わると、高確率で厄介事に巻き込まれるだろ!」
「それを言っちゃうのね! 否定できないから、余計に悔しい!」
その後も話しは続いたが、結局ダンジョンに同行するのも親に会うのも断った。
ただ、僕に用事がある時は、ダニエル商会支店経由で連絡を貰う事になった。




