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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第五章 エシャット村発展編
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第二十話 収穫祭

今年に入りエシャット村の改善は、新たな段階に入った。


僕はいい機会だと思い、地味で質素な《収穫祭》にも手を加える事にした。


そうは言っても一度にいろんな事はできないので、まずは食べ物と飲み物を提供しようと考えた。


「収穫祭で、何を出せば喜ばれるかな?」


「ご主人、何を悩んでるニャ?」


「シロン、いたのか。それがさ、今度収穫祭があるんだけど、そこで出される料理が質素なんだよね。それで、美味しい食べ物でも、提供しようかと思うんだ」


「それなら、《肉》がいいニャ!」


「そうだよな。最近は以前より食べられるようになったけど、毎日食べられる訳でもないもんな」


「でも、ご主人が美味しい物を振舞ったら、ウェンディみたいな食いしん坊に付き纏われるニャ」


「そっか、それは問題だな。母さんに、頼んでみるか」


僕はシロンの提案を聞いて、肉料理を作る事にした。


「上手くいったニャ。これ以上余計な虫は、付いて欲しくないニャ。ご主人は、シロンだけのものニャ」


「シロン、何か言ったか?」


「何でもないニャ。料理の味見は、シロンに任せてニャ」


「なんか、怪しいな。でもまあ、味見くらいはさせてやるよ」


「やったニャ」



翌日、メニューも決まり、料理ができ上がった。


前世では珍しくないが、村には無い料理を選んだ。


「さて、料理も飲み物も準備はできたぞ。それに、母さんの了承も得たし、後は収穫祭を待つだけだ」


だがその前に、約束通りシロンに味見をして貰った。


「美味しいニャ。ご主人、料理屋を開いても食べていけるニャ」


「そんな事言っても、これ錬金術で作ったんだぞ。料理屋となると、違和感無いか?」


「美味しければ、問題無いニャ。ご主人の料理は、収穫祭でも取り合いになるニャ」


「おっと、そうか。それは、考えて無かった。料理を出すタイミングも、考慮しないとな」


僕はみんなの腹が、少し膨れてから出すのがいいと思った。



いよいよ、収穫祭当日になった。


天気は晴れて、お祭り日和である。


お昼前の村の広場にはテーブルが並べられ、その上に今年収穫した小麦で作ったパンと料理が並べられた。

収穫祭は立食パーティー形式で行われ、好きな物を自分で取るようになっている。


料理は村の中で担当を決め、当日作って持ち寄ったもので、材料はスーパーから無料で提供されている。


僕からは錬金術で美味しくした《赤ワイン》と、村の特産品のオレンジから作った《つぶつぶオレンジジュース》を樽で用意した。


「今年の酒は、エールだけじゃないのか。俺は、その赤ワインを貰おうかな」


毎年村では、収穫際用に安いエールを街で購入している。


以前の村では、エールは気軽に飲めるような物ではなかった。

最近は、僕がエールを仕入れたのと村人の給料が上がった事もあり、普段から飲む人も現れた。


だが、赤ワインは高くて今まで買う事ができず、聞いた事はあっても見た事のない人が多かった。

それに赤ワインは、こんな日の為に父さんに渡していない。


なので、スーパーで売られる事も無かった。


「あら、今年のオレンジジュースには、つぶつぶの果肉が入ってるわね」


「これ、ニコル君が作ったの?」


「ええ、そうです。砂糖も入ってるので、甘いですよ」


「まあ、そうなの。飲むのが、楽しみだわ」


いつもは絞っただけのオレンジだったので、酸味が少しきつかった。



そして、みんなに飲み物が行き渡ったところで、村長である父さんの簡単な挨拶が行われ、乾杯の音頭となった。


「それでは話しはこれくらいにして、食事をいただくとしよか。乾杯!」


「「「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」」」


みんなは、手に持つ飲み物を飲み始めた。


「この赤ワインっていうやつ、うめーな。って言ってるそばから、樽の前に行列ができてやがる。くそー、出遅れた。俺も並ぶぞ!」


「おい、お前ら! そんなに、なみなみ注ぐなよ。後ろのやつの分が、無くなっちまうだろ!」


「へん! こんな美味い酒、早い者勝ちだぜ!」


「オレンジジュース、美味しいわね。ニコル君が、作ったんですって」


「ジュースが甘くて、粒は程よい酸味があって、いつもより飲みやすいわね」


「あまくて、おいちー。つぶつぶ、ぷちぷちするー」


僕の用意した飲み物は、概ね好評だった。

一部争っている人もいたが、みんなからは笑顔がこぼれていた。


僕は赤ワインに行列ができるのを見て、樽を二つ追加する事にした。


「赤ワインの樽、二つ追加するよー。まだあるから、喧嘩しないでねー」


「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」


僕の声に歓声が上がり、この後追加された樽に行列は分散された。

赤ワインが無くならないと知り、安心して料理に手を伸ばす人もいた。


村人の作る料理は例年通り変わらず、野菜の蒸し焼き・ポテトサラダ・豆類の煮物・野菜スープ等だ。

パンも硬さは以前程ではないが、未だに黒パンだった。



僕が食事をしていると、エレナ姉さんの婚約者のハンスさんが話し掛けてきた。


「ニコルは凄いなー。魔道具や美味い食べ物や飲み物を、一人で仕入れて。行商人って、そんなに儲かるのか?」


「普通の人は、僕みたいに上手くいかないよ。僕には、錬金術があるからね」


「そうだよな。前に、お前の兄ちゃんと街で野菜や果物を売りに行った時、そんなたいした金にならなかったしな」


「ハハッ、そうですね」


僕にはチート能力があって、たまたま《ダニエル商会》という商売相手にも恵まれた。

僕を見て、行商人に夢を持つのは危険だよね。


そんな事を考えていると、僕の周りに人が集まって来た。


「ニコルちゃーん。お姉さんと一緒に、料理を食べましょ」


「ニコル君は、私と食べるのよ」


「ニーニー、わたちもー」


「はいはい。みんな仲良く食べようね。特別に、苺ジャムをあげるから」


僕は最近スーパーで売り出した苺ジャムを、魔法袋から取り出した。


「「「やったー!」」」


僕は年上の女性や幼女に囲まれ、喧嘩をしないようみんなの仲を取り持った。



乾杯から一時間ほど経った頃、みんな落ち着いてきた。


「みなさーん。サプライズのお肉よー!」


そこに母さんやエレナ姉さん達が、僕の作った料理を持ってやって来た。

運ばれて来たのは、《ニーワトリの唐揚げ》・《ブータの一口豚カツ》・《ウーシのローストビーフ》である。


「「「「「「「「「「わー、肉だー!」」」」」」」」」」


それを見て、人が集まりだした。


肉は一人一つずつ、母さん達が配った。

自由に取らせると、食べられない人が出てくるからである。


「外はカリッカリで、中はジューシー。味付けもまた、最高だぜ!」


「お肉も美味しいけど、回りのサクサクしたのと黒いソースも美味しいわ」


「この肉、まだ赤いぞ。大丈夫なのか? もぐもぐ。何だこれ、柔らかくてうめー!」


お肉を食べた人の感想が、あちらこちらから聞こえてくる。

やはり、美味しい食べ物は人を笑顔にする。


それを見て、僕も自然に笑顔になった。

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