第十一話 新たなダンジョンの街②
僕が《亜空間》をどう説明しようか悩んでいると、みんなが帰って来てしまった。
「これ、見てくれよ。上手そうなのが、たくさんあったぞ!」
「この街、凄いんだよ。美味しそうな屋台や食堂が、たくさん並んでるの。私、ここに住みたい!」
「肉が、大漁だぜー!」
「兄ちゃん。この街、肉が安いぞ!」
「ニコルちゃん、御釣り渡しておくね」
僕はミーリアから御釣りを受け取り、いくら残ったか確認した。
「結構買い込んだのに、随分余ったな」
「うん。本当に安かったんだ」
みんなが手に持つ五つの籠の中には、結構な量の食べ物が入っていた。
良く見れば、どの籠も肉料理が多かった。
普段食べれないから、肉に飢えているのかもしれない。
みんなが馬車に乗り込むと、落ち着いて食事の出来る場所を探した。
街の外れに原っぱがあったので、そこにシートを敷き、食器と魔法道具の水ポットを並べた。
「「「「「「いただきまーす(だぜー)!」」」」」
「さあ、肉を食うぞー!」
「やったー、肉だー!」
「肉だぜー!」
「兄ちゃん、美味しそうだよ。早く食べようよ!」
「ニコルちゃんは、どれ食べる?」
「僕はシロンとシャルロッテに、ご飯を用意してから食べるよ」
「それじゃ、私も」
「ミーリアは、遠慮しないで先に食べてていいよ」
「うっ、うん。分かった」
シャルロッテを荷車から外し、飼葉と野菜と果物と塩、それと水を与えて背中を撫でてやる。
「シャルロッテ、お待たせ」
「ヒヒーン!」
嬉しそうにするシャルロッテを《鑑定》すると、またレベルが上がっていた。
人数が多くて負荷が大きいのに、道中疲れた様子を見せなかった。
ちなみに、荷車は人数に合わせて改造した。
多少の揺れは吸収し、座席の座り心地は抜群で、トイレが付いていた。
しかも、防音・防臭の洗浄式だった。
「シロンは、何食べる?」
「買って来た物から、美味しそうなのを見繕ってニャ」
「分かった」
僕はシロンが好みそうな物を、選んで取ってきた。
「ほら、鶏もも肉。食べ易いように、ほぐしてやったぞ。それと、バナナと水も置いとくぞ」
「ありがとニャ」
シロンはシャルロッテと並んで、仲良く食事を始めた。
今は人語を話しているが、みんなの前では普通の猫を装っている。
「よし、僕も食べるぞ」
「ニコル! この串焼きうめーぞ!」
「それじゃ、僕もその串焼きをいただこう」
見た目は、日本で言うところの大ぶりな焼き鳥だった。
それを口に運ぶと、塩ダレ味に炭の香りがした。
肉自体も良質で、ジューシーで旨味があり凄く美味しかった。
串焼きを《鑑定》すると、《ウーコッケイ》という名の魔物の肉だった。
これだけ美味しければ、魔物とか関係ないよね。
◇
屋台で買った食べ物は、どれも美味しかった。
五つの籠にあんなにあったのに、全部無くなったてしまった。
ウェンディとスギルが大食いなのだが、今回は食べ物が美味しくて、いつもよりみんな食べていた。
食材はどれもダンジョンのドロップ品のようなので、是非手に入れたくなった。
エシャット村で売るのも、いいかもしれない。
そして、食事が終わったところで、僕はみんなに打ち明ける決心をした。
「みんな! お願いがあるんだ」
「何だニコル。あらたまってお願いなんて、珍しいな」
「これから使う魔法の事を、内緒にして欲しいんだ。できれば人に見せたくないんだけど、ダンジョンで便利だから、約束を守れるなら使おうと思う」
「今までもスゲーと思ってたけどよ、やっぱりまだ隠してたんだな。俺は、守るぜ!」
「僕も守るよ!」
「当然、おいらも守るんだぜー!」
「ニコルちゃん。私も守る!」
「私はねー、たぶん守る」
「ウェンディは、『たぶん』なんだな」
ウェンディは、エレナ姉さんと似たタイプだ。自分でも、自身が無いのかもしれない。
「まあ、いいか。みんな、ありがとう。信じるよ」
そう言いながら、《無詠唱》で周りの視界を遮る《結界》を張った。
みんなは恐らく、《結界》に気付いていない。
「心構えしていても驚くと思うけど、覚悟してね」
僕の忠告に、みんなは無言で頷いた。
「ゲート、オープン!」
声にする必要はないのだが、みんなに分かりやすいように声にした。
すると目の前に、《亜空間農場》に通じるゲートが現れた。
これは、《過去の勇者》が開発した《空間属性魔法》の一種、《亜空間創生》で昔作ったものだ。
みんなは、それを見て『ポカーン』としている。
「みんな。この向こうは《亜空間》と言って、魔法袋の中のようなものなんだ。そこに、人が入れる仕組みになってる」
「ニコル。何か訳分かんねーけど、スゲーな」
「ニコル兄ちゃん。向こうに、家と畑があるよ」
「そうだな。移動するから、取り敢えず馬車に乗ろうか」
僕達は馬車に乗り、《亜空間農場》へと移動した。
「この家と畑、ニコルっちのなの?」
「そうだぞ、ウェンディ。この中の物は、全部僕のだ」
「「「「「スゲー(スゴーイ)!」」」」」
スギルは驚いて、語尾に『だぜー』を付け忘れていた。
「この街にいる間、ここで食事や寝泊りをするから、宿は借りないよ」
そう説明して、この後みんなで畑や家を見学して回った。
「なあ、ニコル。旅の途中も、ここで寝泊りさせてくれたら、良かったんじゃないのか?」
「そうなんだけど、みんなには旅やダンジョンの厳しさを、肌で感じて欲しかったんだ」
「そうなのか?」
「『旅やダンジョンなんて楽勝』なんて思い込んで、後で痛い目を見て欲しくないんだ。だから、ここを使うって事は、言ってる事とやってる事が本来矛盾してるんだよね」
「そうか。ニコルは俺達の為に、気を使ってくれてるんだな」
「まあ、そういう事かな」
見学が終わると、この街の《ダン防》に行って、試験の申込みをした。
この街では試験を毎日やっているらしく、明日試験を受けられる事になった。
『ご都合主義が、また出た』と思いつつ、帰りに屋台を回って、ダンジョンで食べる食料を買い漁った。




