第五話 女の子の成長は早いな
エシャット村をシロンとシャルロッテに案内しながら、僕は家を建てる土地を探していた。
「それにしても、家を建てるいい場所って、なかなか見付からないな。母さんに来て貰わないといけないから、やっぱり実家の横が一番いいのかもな」
「独り立ちするのに、実家の横って無いニャ」
シロンにそんな事を言われたが、合理性を考えると実家の横が良かった。
不都合があったら、セカンドハウスを建てるという策もある。
結局いい土地は見付からず、家に着く頃には夕方になっていた。
◇
家に着くと、シャルロッテを厩舎に入れ食事を与えた。
「シャルロッテ、僕特製の食事は美味しいか?」
今あげている飼葉は、この村で取れたものを使っている。
それに栄養バランスを考慮し、穀物をいろいろと混ぜてみた。
「ヒヒーン!」
シャルロッテは、頷いている。どうやら、気にいってくれたようだ。
「ご主人、シロンもお腹すいたニャ」
「そうか、ならここで食べるか?」
「食べるニャ」
僕は《亜空間収納》から、シロン用に調理してある《ミノタウロス》のひれ肉を出してやった。
「やったニャ! 今日は《ミノタウロス》ニャ!」
シロンは、匂いで分かるらしい。それを、美味しそうに食べ始めた。
僕が二人(二匹)の様子を見ていると、そこに父さんがやって来た。
「ニコル、帰ってたのか」
「うん。ちょっと、前にね」
「そうか。馬と猫に、餌をやってるんだな」
「もう、夕食どきだからね」
「そうだな。ところで、その猫『シロン』って言ったか? 随分、上手そうな肉を食べてるな」
「ま、まあね」
今朝、我が家の食卓に上がった《ミノタウロス》の肉とは、言いづらかった。
丁度いいので、父さんに家を建てる場所の話しをしてみた。
「父さん。今日村を回って考えたんだけど、やっぱりこの家の隣りに僕の家を建てる事にするよ」
「おお、そうか。それは良かった。それなら母さんも、許してくれるだろう」
「それで、近々着工しようと思うんだけど、場所をちゃんと決めたいんだ」
「分かった。もう遅いし、明日でいいか?」
「うん」
家を建てる場所はほとんど決まったが、『母さんに、先生になって貰いたい』という事は、まだ伏せていた。
あくまでも僕の勝手な希望なので、家を建ててから相談する事にした。
「あれっ? 何か忘れてるような気がする」
「そう言えば、ミーリアが来たな。『ニコルは、帰って来てない』って言ったら、落ち込んでたぞ」
「あー、忘れてたー! ちょっと、ミーリアの家に行って来るよ!」
「ニコルも、大変だな」
父さんに、同情されてしまった。
だが、その言葉に返事を返さず、僕は慌ててミーリアの家に向かった。
◇
『トントン』
「はーい」
「こんばんは。遅くにすみません』
「あら、ニコルちゃんじゃないの。ミーリアにお土産、ありがとね」
「いえ」
「ミーリアなら、部屋に一人でいるわよ。元気が無い様だから、頼むわね」
「はい、おじゃまします。あとこれ、お土産です。《落花生》と言う名前の豆で、殻を割って食べてください」
「あら、悪いわね」
僕は落花生の入った袋をおばさんに渡し、家にお邪魔した。
『トントン』
僕は、ミーリアの部屋のドアを叩いた。
「ミーリア、入ってもいいか?」
「ニコルちゃん? 来てくれたんだ。入っていいよ」
僕はドアを開け、部屋に入る。
そして、ミーリアの目が赤い事に気付く。
「ミーリア。遅くなって、ごめんな」
「遅いよ、ニコルちゃん。ワンピースに着替えて、ずっと待ってたんだから」
ミーリアは、お土産の白いワンピースと赤い靴を身に着けていた。
「どうしたら、許してくれるんだ?」
「『ギュッ!』としてくれたら、許してあげる」
「えっ!」
思わず、聞き返してしまった。
「『ギュッ!』として」
僕は、正直照れてしまった。だが、直ぐに覚悟を決めた。
「分かった」
そう言うと、僕はミーリアに体を寄せ、両腕を背中に回し優しく抱きしめた。
すると、ミーリアも僕の背中に腕を回し抱き返した。
どのくらい、時間が経っただろうか?
「もう、大丈夫」
ミーリアが、腕を解いてそう言った。
僕も腕を解いてミーリアの顔を見ると、ミーリアは『ニコッ』と微笑んだ。
僕はその笑顔に、『ドキッ』としてしまった。
「ニコルちゃん。このワンピースと靴、私に似合ってる?」
「ああ、凄く可愛いよ」
「やったー! ニコルちゃんが、可愛いって言ってくれた」
ミーリアは、ワンピースと靴を身に着けたところを、僕に見せたかったらしい。
「それじゃ、夕食の時間だし帰るよ」
「うん。また、明日ね」
僕はミーリアの家を、お暇した。
そして家までの帰り道、『今まで妹みたいに思ってたけど、女の子の成長は早いな』なんて、呟いていた。




