第四話 給料大幅アップ
僕はミーリアの家を出た後、実家に戻った。
父さんと、商品の売り値について相談しようと思ったからだ。
商品の種類と数量と仕入れ値をまとめたリストは、既に旅の途中で作ってあった。
仕入れた商品は、大きく分けて二つに分類できる。
それは、店や農家で売れなくて困っていて安く買い取った物と、普通の値段で買った物だ。
前者は僕とスーパーの利益を乗せず、仕入れ値でなら何とか売れそうけど、低価格で定期的に仕入れするは難しかった。
後者は定期的に同じ価格で仕入れできそうけど、村人からしたら仕入れ値でも高額で、購入は難しかった。
「あっ、ニコル君見付けた!」
「「「「「えっ、どこにいるの!」」」」」
「ほら見て、あそこ!」
「あっ、本当だ!」
「わー、ニコルおにいちゃんだー!」
僕は家に辿り付く前に、みんなに見付かってしまった。
気付かれては無視する事もできず、女性陣に自ら歩み寄った。
「みんな、ただいま。元気そうだね」
「お帰り。ニコル君」
「あー、久し振りにイケメンを拝めたわ」
「ニコル君。見ない間に、男らしくなったんじゃない?」
「キャー! 旅で何かあったのよ!」
「ニコルおにいちゃん、なにかあったの?」
「ばっ、馬鹿な事言わないでよ。何も無いよ!」
「「「「「怪しいー!」」」」」
僕はしばらくその場から離れる事もできず、愛想を振り撒いていた。
◇
お昼時になり、ようやく村の女性陣から解放された。
「父さん。お昼ご飯を食べたら、仕入れた商品の売り値を決めたいんだ。時間ある?」
「ああ、大丈夫だ。ニコルは父さんと同じで、モテて大変だな」
「ハハッ、そうだね」
父さんに、さっきの状況を見られていたようだ。
お昼ご飯を食べ終わり、僕は父さんとリストを見ながら値段の検討をしていた。
「それだと、ニコルが大赤字だぞ」
僕は売り値を仕入れ値より、大幅に下げてもいいと提案した。
「これからも稼げる目星は付いてるし、村の為になるなら別にいいよ」
「それは、たまたま運良く稼げたからだろ。普通の行商人は、そんな事しないぞ」
「それはそうだけど」
「もうそろそろ、村人の給料を大幅に上げてもいい時期なのかもな。村で取れた野菜や果物も、それに合わせて値上げすれば帳尻が合う。ニコルから貰った《二千万マネー》があれば、それも可能だ」
エシャット村は数年前から一つの会社に見立て、村の労働者は毎月給料を貰っていた。
「そうだね。それがいいかもしれないね」
「それじゃ、村の会合でみんなと相談して決めるとしよう」
「うん。任せたよ」
何とか解決案が出て、僕はホッとした。
◇
一段落ついたところで、シャルロッテに騎乗しシロンを僕の前に乗せ家を出た。
「二人共。これが僕の故郷だけど、何も無いだろう」
「畑だけだニャ」
「ヒヒーン!」
「人口の少ない農村だからね。しょうがないよ。宿も無いし、商人も立ち寄らない。それでも、十年掛けて良くしたんだ」
「ご主人は、ここにずっと住むのかニャ?」
「故郷だからな。近々、家を建てるつもりだ」
「そうなんニャ」
「今だって、村を案内しながら、家を建てる土地を探してるんだぞ」
「シロンは、ご主人がいればどこでもいいニャ」
「ヒヒーン!」
「シャルロッテも、同じって言ってるニャ」
「そうかい」
シロンとシャルロッテの言葉に、僕は少し照れてしまった。
「ご主人は、どんな家を建てるニャ?」
「そうだな。実は、一つだけ決まってる事があるんだ。村の子供達が自由に使える図書室と勉強を教えられる教室を、一緒に作りたいんだ」
「ご主人は、先生になるのかニャ?」
「僕は行商で、村にいない事が多くなるからな。最終的に、母さんにお願いしようと思ってるんだ。母さんはおっとりしてるけど、勉強ができるんだよね」
「ママさんは、頭がいいニャ。でも、店はいいのかニャ?」
「毎日じゃ無くて、週一とかでいいんじゃないかな? 子供達が、文字の読み書きと算数ができればいいと思うんだ」
「そうなんニャ」
この後も僕達は、他愛の無い会話をしながら、エシャット村を散策した。




