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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第五章 エシャット村発展編
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第三話 チョロイン

父さんにいろいろ話したけど、直ぐには実行できなかった。


仕入れ値を元に、僕とスーパーの取り分を決めて、売値を決めなければいけなかった。


《エシャット村》はお金を流通させたばかりで、物価が極端に安い。

村で採れた物は安く売っているが、隣街等で仕入れた物は高額で、《贅沢品》になっていた。


僕が仕入れた物も一緒で、利益無しの仕入れ値で売っても、高額でなかなか買えない物も多い。

《特売品》として短期間で売るなら《赤字》でもいいけど、継続的に売り続けるとなると、僕がずっと赤字を背負い込む事になった。


それに、スーパーの陳列棚もいきなり多く置けないので、調整する必要があった。



それでも今日は《僕が帰って来た》という事で、先行して販売しようと思う。

その商品は、エーテルのダンジョンで手に入れた《ミノタウロス》と《ブルドボア》のロース肉である。


これらは《超》が付く贅沢品だが、みんなが買える値段に設定した。

それぞれ一人二百グラム×家族の人数分というように数量に制限を付け、《本日限り》の販売にした。


村人の舌が肥え過ぎるのも心配だし、これらの肉は《特別な日》に振舞おうと思う。



僕はスーパーの開店前に、《ミノタウロス》と《ブルドボア》のロース肉を、エレナ姉さんに託した。


「それじゃ、手筈通り頼むね。僕は、ちょっと出掛けてくるよ」


「任せて。上手くやっとく」


エレナ姉さんは、昨日僕からお土産を貰い、素直に言う事を聞いてくれた。

《お洒落な下着》に、母さんとマリア姉さんと一緒に興奮して喜んだ。


僕はとある事情で、スーパーの裏手からこっそりと外に出た。


スーパーの前を窺うと、開店を待つ村の女性陣が集まっていた。



姉さんが店を開けると、女性陣が騒ぎ出した。


「ニコル君が、帰って来たんだって。久しぶりに、イケメン拝ませて!」


「ニコルお兄ちゃん。遊ぼー」


「キャー、ニコルくーん!」


みんな買い物より、僕が目当てだった。僕は昨日、この状況に懲りているのだ。



「あのー、みなさん。ニコルは、もう出掛けたわ」


スーパーの店員のエレナ姉さんは、恐る恐る僕がいない事を告げた。


「「「「「えー、いないのー!」」」」」


みんなして、がっかりしている。


「でもニコルが仕入れた物を、今度スーパーに並べるから、楽しみにしてくださいね」


「そうなの? ニコル君が、どんな物を仕入れたか楽しみね」


「今日は先行して、ダンジョンで獲れた高級なお肉を、超お買い得価格で販売します。ただし、今日しか売らないので、買いそびれないでね。今朝食べたけど、ほっぺが落ちるくらい美味しいんだから」


「そんなに美味しいの?」


「もちろん。こっちのお肉なんて百グラム二百マネーの値札を付けてるけど、王都で買ったら百グラム三千マネーだって」


「えっ、そんなに安くしていいの? ニコル君ったら、太っ腹なイケメンね」


「ふふっ。今焼いて、少しだけ食べさせてあげる」


「「「「「きゃー、やったー!」」」」」


この試食は、僕と打ち合わせ済みであった。



エレナ姉さんは店先に、炭火の入ったバーベキューセットを用意した。

道具は、僕が用意した物だ。


ミノタウロスのロース肉に塩と胡椒を振り、軽く焼いてサイコロ状に切り分けて皿の上に乗せた。

それに爪楊枝を刺して、お客に差し出した。


ちなみに爪楊枝は僕が作った物で、村ではすでに売られていた。


「はい、これ。お肉の試食。一人一つずつね」


お客は、我先にと肉を奪った。


「何これっ、美味しい!」


「本当に、ほっぺが落ちそう!」


「もっと、食べたーい!」


その噂が広がり、今日のエシャット村の食卓に、ミノタウロスとブルドボアの肉が上がった。



僕は女性客達の目を盗んで、途中からミーリアの家に来ていた。


「ニコルちゃんってば、帰ってくるの遅いよ。寂しかったんだから」


「ごめんよ。正直に言ったら、引き止められそうだったから」


「私も付いて行くって、言ったかもね」


「うっ、それは困っただろうな」


「ところで、ニコルちゃん。旅に出ている間、かわいい女の子と仲良くなってないでしょうね!」


「な、な、な、なってないよ」


「あー、今の絶対怪しいー!」


「ミーリア、何を言ってるのかな?」


「浮気した上に、嘘を付くニコルちゃんなんか嫌い!」


ミーリアは、頬を膨らませて怒ってしまった。



浮気と言われるほどミーリアとは深い関係では無いが、このままだと不味いので機嫌を取る事にした。

僕は魔法袋から、お土産に買った白い袖付きのワンピースと赤い靴を取り出した。


「ミーリア。お土産を買ってきたんだけど、受け取って貰えないか?」


ミーリアは、ちらっとワンピースと靴を見る。


「あっ、かわいい。これ、私にくれるの?」


もう、機嫌が直ってしまった。ミーリアは、《チョロイン》だった。


「ああ、お土産だからね。ミーリアが着てくれると、嬉しいな」


「それじゃー、着てあげる」


ミーリアは嬉しそうに、僕からワンピースと靴を受け取った。


「ミーリアは、おばさんの手伝いが終わってないんだろ。また後で、来るよ」


「えー、行っちゃうの?」


「僕も、する事があってね」


「後で、絶対に来てね」


「分かった。絶対来るよ」


僕はこの後、この約束を忘れてしまう。

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