第二話 ニコル、父さんに相談する
久し振りに自分のベッドで寝た僕は、いつも通り朝早く起きた。
シロンは、僕の部屋でまだ寝ている。
夕べ部屋に入れたら、凄く興奮していた。
『金髪美少年の部屋ニャ。ご主人の匂いニャ。エロ本は、どこニャ!』
あまりの興奮具合に、『煩いと、追い出すぞ』と言ったら、大人しくなった。
シロンとシャルロッテは、昨日の内に家族に紹介してある。
シロンは見た目の可愛さで女性陣に人気で、モフモフされまくっていた。
シャルロッテの方も見た目美しいのだが、『僕にしか懐かないし牡馬を極端に嫌うので、取り扱いに気を付けて』と、言い聞かせた。
ジーク兄さんが騎乗したそうにしていたが、シャルロッテは嫌がっていた。
そして、夕べは母さんが腕を振るって、たくさんの料理を作ってくれた。
豪華な食材は無いけど、久し振りの母さんの手料理は懐かしく、そして美味しかった。
僕は着替えて部屋を出ると、父さんにばったり会った。
「父さん、お早う」
「お早うニコル。長旅で疲れてるんだから、もっとゆっくりすればいいのに」
「大丈夫だよ父さん。それより、お願いがあるんだけど」
「何だ改まって。父さんにできる事なら、何だって聞くぞ」
「それじゃ、家を建てるのに、土地が欲しいんだ」
「家を出るのか? ニコルがいなくなったら、母さん悲しむぞ」
「うっ、そうなんだよね。でも、跡継ぎの兄さんが結婚したし、子供ができたら家が狭くなるよ」
「そうか。それなら、家の横でもいいんじゃないか?」
「うっ、うん。そうだね。でも、他もちょっと探してみたいな」
「村の中ならどこでもいいが、母さんの事も考えてやれよ」
「分かった」
母さんに泣かれるのは、正直めんどい。
家を出る事を、どう伝えればいいか悩んでしまう。
「あと、これ渡しておくよ。村の運営の足しにして!」
僕は《亜空間収納》から、大金貨が二十枚入った袋を父さんに渡した。
《亜空間収納》の能力は、父さんも既に知っている。
「なっ、こんな大金。どうしたんだ?」
「貴族を相手にしている商会に、商品を卸してるんだ。それに、ダンジョンで大金を手に入れたんだ。もっと必要だったら、言ってよ」
「いやいや、充分だ。今まで貯めた村の運転資金は、それなりにある」
「そうなんだ。あと、行商の旅で仕入れた物をスーパーに置きたいんだけど、いいかな」
「ああ、いいぞ。スーパーに珍しい物が並べば、村人も喜ぶ」
「それと、《魔道具》の貸し出しをしたいんだ」
「家で使ってるような、魔道具か?」
「うん。これまで父さんとの約束で、《慎重》に村の発展をしてきたけど、僕も成人したしそろそろいいと思うんだよね」
「そうだな。ニコルはもう、自分で自分を守れるくらい強くなったしな。父さんは、いいと思うぞ」
領主様のところに納税に行く時に、何度か盗賊に襲われた事がある。
そんな時は、僕が一人でやっつけていた。
父さんはそれで僕を強いと言ってるのだが、本当の実力は知らない。
「ノーステリア大公爵領で手に入れた事にして、特別安価で貸したいんだ。そうすれば、みんなの生活が楽になるよね」
「安いのはいいが、これをよそで売られたら困るな。無くしたら、高額の罰金を取ろう」
「それ、いい案だね。それで貸し出し業務も、スーパーでやって貰いたいんだ」
「ああ、いいぞ。細かい条件は、時間のある時でいいか?」
「うん、いいよ。あと、農機具の魔道具も用意してあるんだ。これは共有で使うから、無償でいいよ。使い方は、日を改めて教えるね」
「農機具もあるのか? みんな喜ぶぞ」
「そうだね。最後に、村の安全対策に犬のゴーレムを配備しようと思うんだけど、いいかな?」
「ゴーレムって何だ?」
「動く人形だよ。畑を荒らす獣や、悪意ある人間に反応するんだ」
「凄いな。配備するのは、別に構わんぞ。みんなが驚くといけないから、村の会合で伝えてからだな」
「分かった。とりあえず、八匹配備する予定だから」
「ああ、了解した」
その後、シャルロッテの朝ご飯をあげに、新しく作った厩舎に向かった。




