第十五話 危機一髪ニャ!
僕は変装した姿で、シロンの後を追った。
僕達のいる場所は、標高二千メートルを越える岩山の中腹で、比較的人が通れる足場があった。
だが、この地点まで登るには、絶壁に近い状態である。
普通の人は、まず登って来れない。
「ご主人、いたニャ!」
「本当だ。ロープにぶら下がって、絶壁で何かしてる。あの感じは、ガーランド兵だな」
絶壁には、等間隔に五人が並んでいた。
トンネルを掘って攻めてくるような奴等だし、今回もとんでもない事をしてくるはずだ。
エステリア王国に被害が出ても嫌なので、放っとく訳にいかなかった。
僕は目に《身体強化》スキルを使い、何をしているか確かめた。
「岩に穴を開けて、筒状の物を差し込んでる。筒状の物からは、紐のような物が出てるな」
「ご主人、あれは《爆弾》じゃないかニャ?」
「えっ! 爆弾なんて、この世界にあるのか?」
「でも、あれは岩を爆破する準備をしているように見えるニャ」
「そう言えば、そうだな」
「《鑑定》で、調べてみるか」
僕は奴等が持っている筒状の物に焦点を合わせ、《鑑定》してみた。
「シロンの言う通り、爆弾だったよ。しかも、ダンジョンのドロップ品だ」
「ダンジョンで、爆弾がドロップするニャ。危ないニャ!」
「そうだな。どうやら奴等、あの辺一帯の岩壁を、砦と街に落とすつもりだ。中心地までは届かないにしても、山に近い場所では被害が出るだろうな」
「阻止するニャ!」
「奴等、ロープにぶら下がってるから、それを利用して魔法で縛っちゃおう」
僕達は、ロープをぶら下げいる場所に移動した。
そして、僕は五本のロープに魔法を掛けた。
「《捕縛》」
「うっ、うわー!」
「なっ、なんだこれは!」
「ロープが、体に巻き付いてくる!」
「あん、いいわー。もっと、きつく縛ってー!」
「お前はこんな時に、何を言っている。これは、魔法だ。誰か、いるぞ!」
最後の奴が縛られた不自由な状態ながらも、体に仕込んだ何かを操作し、赤い煙がもくもくと上がった。
「着火したのか? でも、爆発しないぞ」
「ご主人、あれは狼煙ニャ。どこかに、合図をしたニャ」
「狼煙? ガーランド帝国軍に、失敗した連絡でもしたのか?」
狼煙が何の合図だったのか考えていると、シロンが叫んだ。
「ご主人! 砦の向こうの山にも、人がぶら下がってるニャ!」
「何だって! 向こうにもいるのか? とりあえず、こいつらを引き上げよう」
僕はこの後一人ずつロープを引き上げ、《睡眠》の魔法で眠らせた。
「シロン。こいつら、見ててくれないか?」
「分かったニャ!」
僕達がそんなやり取りをしている隙に、それは起こった。
『ドカンッ!、ドカンッ!、ドカンッ!、ドカンッ!、ドカンッ!』
音のする方向を集中して見ると、砦の向こうの山で爆発が起こっていた。
その爆発で、岩壁に亀裂が走ったようだ。
『ドカンッ!、ドカンッ!、ドカンッ!、ドカンッ!、ドカンッ!』
時間差で、先ほどの下の方で爆発が起こった。
岩壁の亀裂が、大きく広がった。
『ドカンッ!、ドカンッ!、ドカンッ!、ドカンッ!、ドカンッ!』
さらに下の方で爆発して、とうとう岩壁が大きく崩れ始めた。
「不味い! 《防御壁》一万倍!」
僕は咄嗟に、爆破した岩山の下の砦や街に、屋根を被せるように《防御壁》を張った。
『ドゴッ!、ゴガッ!、ガツッ!、グガッ、ガシッ!』
「どうやら、間に合ったようだな!」
「危機一髪ニャ!」
岩の塊は《防御壁》に遮られ、地上に大惨事を起こさずに済んだようだ。
「シロン、ちょっと行って来るよ!」
「気を付けてニャ!」
僕は落ちて来た岩を回収しに、《目視転移》で現場に向かった。




