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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第四章 行商仕入れ旅編
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第十二話 突然の報せ

僕は領都に滞在期間中、毎日買物に明け暮れた。


生産者から直接買う方が安く買えるのだが、この《ノーステリア大公爵領》ではできなかった。

みんなギルド経由で、販売先が決まっていた。


それに、食品を長期に渡り保存できる技術もあった。


また、この領の各ギルドに所属していれば、いろんな融資を受けられたり、魔法袋等の魔道具を僅かな利子で分割販売してくれた。

それを聞いて、『この領は、恵まれてるな』と思った。


しかも、この領都は大都市なのに物価が安い。

大量生産と大量消費を、自領で行えている。

一方、武器や防具や魔道具等を他領に売り、しっかり外からのお金を稼いでいた。


この領地は、他領とは違う技術や経済の進化を遂げているようだ。

知れば知るほど、この領地の凄さが分かる。



六日目の朝、ノーステリア大公爵領の領都を発つ日がやってきた。


欲しいものが大量に買えたので、満足している。

《転移魔法》でいつでも来れるので、ゆっくり観光しても良かったが、王都にいる時に行商人らしい事をあまりしなかったので、今回は頑張った。


結局、アレンさんを題材にしたと思われる《光の英雄伝説》の演劇は、見なかった。

《エシャット村》に帰って、落ち着いたら一人で来ようと思う。

その時まで、上演している事を願うばかりだ。


そして、商業ギルドで借家の鍵を返していると、とんでもない報せが飛び込んできた。


「大変だ。《ガーランド帝国》が、十万の兵で行軍してきたぞ。三日後には国境の《ノースブルム大峡谷の砦》まで到着するそうだ」


「「「「「何だってー!」」」」」と、それを聞いた人達は、僕を含めみんな叫んでいた。


「おい、それは本当か?」


「本当だ。今、軍の方でも準備を進めてる。今日明日中に、この領からも行軍するはずだ」


「あと三年もしないうちに魔王が来るというのに、何で戦争なんか仕掛けてくるんだ。くそっ!」


そんな会話を聞いて、僕はこの後の事を考えた。


「この国が負けて、奴隷なんて事になったら嫌だな」


僕と家族だけならどうにでもなるけど、エシャット村のみんなを抱えては逃げられない。


「よし、国境に行こう」


僕は戦争に加わりたくないが、戦況を見て判断する事にした。



領都内には、もう知れ渡っているようだった。


それでも領都の門は、まだ通る事ができた。

僕達は、来た時とは反対の北門から出た。


移動速度を上げる為、途中から荷車をしまい僕はシャルロッテに騎乗した。


「シャルロッテ、速いな!」


「ヒヒーン!」


シャルロッテは、飛んでしまいそうな勢いで駆けた。



「シャルロッテ、前に馬車がいる。速度を落とすんだ!」


「ヒヒーン!」


「馬車を飛び越えるって、言ってるニャ」


「シャルロッテ、駄目だ止めろ!」


「ヒヒーン!」


次の瞬間、シャルロッテは馬車を飛び越えた。


「うわっ、何だ。馬が、飛んできたぞ!」


「すみませーん! 急いでるんです!」


「ふざけんなー!」



「シャルロッテ、怒られただろ! 横に通れるスペースあるのに、馬車の上を飛び越えるなんて非常識だぞ!」


「ヒヒーン!」


「ご主人に、いいところを見せたかったと、言ってるニャ」


「人に迷惑を掛けるから、もう駄目だぞ!」


「ヒヒーン!」


「ごめんなさいと、言ってるニャ」



三日後の昼前、僕達は切り立った山脈の麓まで辿り着いた。


その山脈が二つの国を分け、山頂をなぞった線が国境となっていた。

山脈の中間には峡谷があり、そこには《エステリア王国》の砦が建っていた。


砦の手前にはノースブルムと言う名の街があり、常時三万人程の軍関係者が滞在している。


そして周辺の領地からも、徐々に兵士が集まり始めていた。



山脈は険しくて、シャルロッテの足でも厳しかった。

ここからは、僕の《目視転移》で登る事にした。


「シャルロッテ。ここからは、僕の魔法で山を登る。じっとしてくれないか」


「ヒヒーン!」


「それじゃ、行くぞ」


僕は山の中腹まで、一気に転移した。


「ヒヒーン!」


シャルロッテは、初めての《転移魔法》に酷く驚いていた。


「驚かして、ごめんな。あと数回、我慢してくれ」


《目視転移》を繰り返し、僕達はガーランド帝国を見渡せる場所にいた。



「どうやら、まだガーランド帝国軍は到着していないようだ」


「ご主人、どうするニャ」


「分からない。ここまで来て言う事じゃないけど、本当は戦争なんて関わりたくないんだ」


「でも、ご主人は強いニャ」


「強くても、人を殺したくない。何をするかは、状況次第だ」


こうして僕達は、戦争が始まるのを待つ事になった。

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