第十一話 くっ、僕は行商人だぞ!
2020/12/12 二ヶ所カインだったところを、アレンに修正しました。
南地区へ行くと、劇場が見えた。
そして、掲げられている看板の絵に目が留まった。
「あれっ、これってアレンさんに似てるな」
アレンさんは、Aクラスのダンジョン探索者だ。
そして、僕のダンジョン探索者試験の試験官を担当した人だ。
僕は実技試験で全然歯が立たなかったし、アレンさんが凄く強い事を知っている。
「アレンさんって、もしかして有名人なのか? それとも、他人の空似?」
看板には、演目も書かれていた。
それは、どこかで聞き覚えがあった。
看板の演目には、『光の英雄伝説』と書かれていた。
「これって、エミリが言ってたアレンさんの《称号》じゃないか?」
僕は、《ダン防》での出来事を思い出した。
「やっぱり、アレンさんだよな。だったら、どんな活躍をしたのか見てみたいな」
「ご主人、知り合いかニャ?」
「ああ、エーテルのダンジョンの試験官だったんだ。こてんぱんに、やられたよ」
「それは、凄いニャ!」
「もしかして、八年前の戦争を止めた英雄ってのも、アレンさんかもな」
「戦争を、止めたニャ?」
「ああ。さっき食堂で、そういう英雄がいたって聞いたんだ」
そんな話しをしていると、劇場の敷地から見るからに貴族という豪華な馬車が出てきた。
すると、馬車の中のカーテンが突然開き、外を見る人物がいた。
その視線は、僕に向けられてるような気がした。
《その頃、馬車の中では》
「お爺様。どうなさったのですか?」
「いや、外に強い気を感じてな。そこには、馬に騎乗した少年がいた」
「少年ですか? 何者でしょうね」
「それは分からぬが、ただ者ではないな」
馬車は、そのまま貴族街に向かって走っていった。
僕は演劇の内容が気になったが、シロンとシャルロッテを待たせる訳にもいかず、繁華街へ買い物をしに向かった。
◇
南地区でも、目ぼしい食品を買い終えた。
昨日行った店の店員には、『また、そんなにたくさん買うのかい?』なんて、言われてしまった。
僕はめげずに、『明日も来ます』と、言ってやった。
そして今、入店しようか悩んでるのは、女性用下着の販売店。
「くっ、僕は行商人だぞ! 何を、恥ずかしがってるんだ!」
僕は店の中に、なかなか入れないでいた。
エシャット村には、この店で売っているようなお洒落な下着は、普及していないはずだ。
僕は周りの目を気にしながらも、勇気を振り絞って店に入った。
「あら、かわいい坊やね。今日は、誰かにプレゼントかしら? それとも、自分で着けるの?」
魅惑的なスタイルの女性店員が現れ、とんでもない事を言ってきた。
「ちっ、違います。僕は行商人で、商品を仕入れにこの街に来たんです」
「ほんとに? 怪しいなー。綺麗な男の子に有りがちなのよねー」
「本当ですって。これ、商業ギルドの会員証です。それに、仕入れた商品です」
「あら、本当みたいね。疑って、ごめんなさいね」と言って、ウインクをしながら舌を『ぺろっ』と出した。
『はいはい。年下の男を、からかったんですよね』と、心の声。
「田舎の村の店で売るんですけど、どんなのがいいですかね?」
「君は、どんなのが好みかな?」と言って、僕に腕を絡ませてきた。
「いやいや、まじめにお願いしますよ」と言って、僕は店員の腕を振り払った。
「もう。ちょっとくらい、いいじゃない」
僕はこの人に頼ったら、駄目な気がした。
彼女のペースになる前に、僕は行動に出た。
「それじゃ、これと、これと、これと、・・・・・・・・・・・・・・・」
僕はサイズを問わず、安いのからブラを五十着とパンツを五十着選んだ。
その中には、上下セットのも含まれている。
「こんなに買うの?」
「はい」
僕はお金を支払うと、そそくさと店を後にした。
金額は三十五万マネーくらいだったが、慣れない商品を買うのに精神的に疲れてしまった。
◇
買い物を終え、僕達は借家に帰った。
「シャルロッテ、お疲れ様」
「ヒヒーン、ヒヒヒーン!」
「今日はご主人様を乗せて走れて、嬉しかったと、言ってるニャ」
シャルロッテは僕から見ても、終始上機嫌だった。
「シロンは、シャルロッテの首しか見えなかったニャ。次は、ご主人の服の中から顔を出して乗りたいニャ」
僕はその光景を、想像してしまった。確かに、普通の猫なら可愛らしいと思う。しかし。
「暑苦しいな。却下だ」
「そんな言い方、酷いニャ」
「そんなに景色が見たいなら、鞄に入ってろ」
「ご主人の温もりを、もっと感じたいニャ」
「却下だ!」
「それじゃご主人、暑いなら半ズボンはどうかニャ? それなら、今日の場所でもいいニャ」
「シロンは、僕にどんな妄想をしてるんだ。却下に決まってるだろ!」
その後、『留守番にするぞ!』と言ったら、シロンは大人しくなった。




