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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第四章 行商仕入れ旅編
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第八話 ノーステリア大公爵領の鍛冶屋

僕達は商業ギルドで紹介された、鍛冶屋の前に着いた。


そこは鍛冶屋と言っても、武器販売の看板も掲げていた。


「それじゃ、行ってくるよ。何かあったら、呼ぶんだぞ」


「分かったニャ」


「ヒヒーン!」



僕は馬車を店の前に止め、店に入った。


店には恰幅のいい筋肉質のおじさんが、一人暇そうに椅子に座っていた。


「すみません」


「何だ?」


「行商人のニコルといいます。こちらで《鋼のインゴット》を買い取りしてくれると、商業ギルドで聞いて伺いました」


「鋼のインゴットだと。俺の名は、ゴーシュだ。この店の店主兼、鍛冶師をしてる」


「ゴーシュさんですね。よろしくお願いします。それにしても、随分暇そうですね」


失礼だと思いつつも、思わず言ってしまった。


「ああ、材料不足でな。まともに、注文を受けられねえんだ」


「なんで鋼のインゴットが、不足してるんですか?」


「最近、軍専属の鍛冶屋に材料が流れちまってな。戦争でも、おっぱじまるんじゃないかって噂だ」


「戦争ですか? それは物騒ですね」


「あくまで、噂だがな」


「本当に、噂ならいいですね。早速ですが、商品を見て貰っていいですか?」


僕はそう言いながら、魔法袋から十キロの鋼のインゴットを一個取り出した。


ゴーシュさんは、それを手に取って品定めを始めた。



「おいおい、随分上等な鋼のインゴットだな。不純物が見当たらねえ。これは、《玉鋼》じゃねえか?」


「そうですね」


エーテルの街の武器屋のおじさんは、その名前を口にしなかったが、玉鋼は日本刀にも使用される高品質の材料だ。

通常、日本刀を一本作るには十キロの玉鋼が必要とされるが、この玉鋼は不純物がほぼ無いので数本作れる。


「どこで、手に入れた?」


「リートガルド伯爵領の《エシャット精錬所》です」


僕は、事前に考えていた適当な設定を応えた。


「エシャット精錬所なんて聞いた事ねえが、品質がいいのは事実だ。だが、金額だな」


『やっぱり、そうだよね。暇にしてるし。もしかして、商業ギルドの方が高く買い取ってくれたかもしれない。しくじったか?』僕の頭に、そんな事がめぐった。


「まとまった数を買ってくれるなら、いつも仕入れてる金額でいいですよ」


「俺の言い値でいいのか? 安く提示するかもしれねえぞ」


「大丈夫です。こちらにも、考えがありますので」


「俺を、試してるのか?」


「ふふっ」


僕は、不敵に笑ってみた。


不純物のほとんど無いこのインゴットなら、片手剣なら八本前後作れる。

さて、幾らの値が付くやら。


「いっ、一本十五万マネー。十本で百五十万マネーでどうだ」


「そうですね。まあ、いいでしょう。今回は、十本で百五十万マネーで売りましょう」


ゴーシュさんは、何だか『ホッ』としている。


この品質なら、一本五十万マネーの価値がある。

どうせ元値はタダだし、《亜空間収納》の肥やしになってるので、卸し先を獲得する方を優先して妥協した。



僕は残りの鋼のインゴットを取り出し、ゴーシュさんはそれらの品質を確認した。


「全部、上等品だ。今、金を持ってくる。待っててくれ」


ゴーシュさんは店の奥に金を取りに行き、しばらくして戻って来た。


「百五十万マネーだ。確認してくれ」


「はい」


僕はゴーシュさんから、小金貨十五枚を受け取った。


「はい。確かに受け取りました」


「それでよ、他の連中にも紹介したいんだが、まだあんのか?」


「紹介して貰うのはありがたいんですが、こんなに安くするのは今回だけですよ」


「えっ! 値上げするのか?」


「今日は、初めてお売りしますから特別価格です。商品の良さを知っていただければ、多少高くても欲しくなると思いますよ」


「くっ、痛いところを突いてくるな」


ゴーシュさんが言うには、他の鍛冶師はライバルでもあり仲間でもあるそうだ。


みんな困っているのに、自分だけ材料を手に入れるのは、引け目を感じるらしい。

僕はその気持ちを汲んで、今回は同じ金額で売ると約束した。


在庫の話しになり、『四十本ある』と告げると、店を閉めて人を集めにいった。

本当は《亜空間収納》に七千本程あったが、それは言えない。


僕はゴーシュさんが帰って来るのを、馬車で待った。



一時間程して、ゴーシュさんが帰ってきた。


連れて来たのは、武器や防具を作る鍛冶師だけでなく、農具や日用品を作る鍛冶師もいた。

全部で、八人いる。


「ニコル。みんなに、鋼のインゴットを見せてやってくれ」


「分かりました」


場所を作業場に移動し、僕は鋼のインゴットを四十本取り出し、鍛冶師達に品質を見定めて貰った。


「何だこれ。すげーぞ」


「玉鋼らしいどー。でもよ、こんなの見た事ねーど」


「農具になんて、勿体なくて使えねーよ」


「包丁にしたら、切れ味良さそうだべ」


「おう、お前ら。品物を確認したら、分けるぞ。一本十五万マネーだからな。喧嘩するなよ!」


「「「「「「「「おうっ!」」」」」」」」


ゴーシュさんが仕切ってくれて、その後みんなからお金を集めてくれた。

僕はゴーシュさんが集めた六百万マネーを、受け取った。


「ニコル。俺ら、みんな助かったぜ」


「喜んで貰えて、嬉しいです。でも、適正価格で買っていただけると、もっと嬉しいですね」


「うっ、それを言うか。だが、今回手に入れた鋼のインゴットで、たくさん儲けて金を作ってやるよ」


「お願いしますね」


「ああ、分かった。それで、今度いつ来るんだ?」


「えーと、どうでしょう。分かりません。でも、手に入ったらまた来ますよ」


「そうか、しょうがねーな。まあ、なるべく速く頼む」


僕は鍛冶屋のみなさんに挨拶をして、その場をお暇した。

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