プロローグ 神になるなら、異世界転生なんかするんじゃなかった!
2021/06/03 文章を修正しました。
初投稿です。
「ここは、何処だ?!」
何者かに、《召還》された様だ。
わしは今の今まで、《古代竜》との宴の席にいた。
そこは広くて豪華な部屋で、壁には無数のモニターが掛けられている。
そして、人々の生活を映し出していた。
「監視でもしているのか?」
「違うわ。見守っているのよ」
「うわっ!」
声のする方を振り向くと、そこには《超絶美女》が立っていた。
「はい、これ。今からあなたが、この世界の《神様》ね!」
超絶美女はわしにそう言いながら、満面の笑みで《バトン》のような物を差し出した。
わしは言葉の意味を理解せず、年甲斐も無くその余りの美しさと神々しさに思わず見とれてしまった。
そして何も考えず、その差し出された物を握っていた。
わしはそれを受け取らなければ良かったと、後になって悔やむ事になる。
「うっ、うわーーーーーーーーーー!」
バトンのような物を手にした瞬間、頭の中に走馬灯が廻った。
それは神様が岩と砂だけの不毛の地に、緑や生物を誕生させる場面から現在に至る長い歴史。
永遠に続くと感じられたそのビジョンの奔流が終わった時、信じられない力が身体に漲った。
そして、わしのステータスの種族が、《仙人》から《神》に変わった。
「《神》? ハッ、そうだ!」
回りを見渡すと、超絶美女の姿は既に無かった。
「何故、わしが神などに?」
この状況に理解が追いつかず、そして大量の情報を頭に詰め込んだせいで、わしはその場で呆けていた。
◇
「お邪魔するよ」
するとそこに、神々しい爺さんが現れた。
「久し振りじゃの。新しい神よ」
顔は兎も角、目の前にいる爺さんの神々しさに僅かだが覚えがある。
それに、今の台詞。
それは前世で《日本人》のわしが死んだ時、《異世界転生》をさせてくれた《神様》だと理解した。
「お久しぶりです神様。その節はありがとうございました」
「随分昔の事じゃ。気にするでない」
「はい。ところで、何故わしは神になってしまったのです?」
目の前の神様は、一瞬固まった。
「なんじゃ、前任者は何の説明もせなんだか?」
「はい」
「ほんに済まん。わしの所へは、お主と《神職》を代わったと連絡が来てのう。ここへは、お主を《転生》させたよしみで来たんじゃ。直ぐに来て、良かったわい」
神様は事の経緯を、簡単に説明してくれた。
前任の女神様が《結婚退職》すると決めて、地上界から《神になる資格》を得る存在を《二千年以上》待っていたというのだ。
その時わしは、『結婚退職だと!』と、心の中で突っ込んだ。
そして、わしが《神になる資格》を得てしまったが為、了承も得ず神界に強制召喚したそうだ。
《神のバトン》を受け取った者は、《神力》を授かり《神》となる。
そして、《守護神》の職を引き継ぐ《義務》が生じるとの事だ。
今思えば何の説明もせずバトンを差し出したのは、わしに反論する余地を与えない為だったのだろう。
◇
「実はお主を転生させる時、敢えて伝えんかった事がある」
「えっ!」
「女神に頼まれて、《元日本人》のお主は最初から《神の候補》じゃった。じゃから、それに見合う能力を授けたのじゃ」
「えーと、今からでも辞退したいのですが」
「すまんな。辞退はできんのじゃ。神の加護の無い世界は、滅びてしまう」
「滅びる?」
「そうじゃ。星は生命が耐えられん地に、戻ってしまう」
「そんな勝手な。他に神様は、居られないんですか?」
「居るには居るが、神界に交代を買って出る者は居らんだろう」
「そんなっ! わしは《異世界のんびり生活》ができれば、それで充分だったのです」
「まあ、良いではないか。チート能力で人生を謳歌し、《二千年》も生きたんじゃ。もう地上でする事はなかろう」
「だからって・・・・・」
「もう、後戻りできんのじゃ。お主が思うまま、地上を運営するが良い。守護神が嫌なら、地上から後継者を探せ。さすれば、お主は自由じゃ」
「後継者ですか?」
「そうじゃ。後で、お主の部下を寄越す。それと一緒に、頑張ってみい」
そう言って神様は、去って行った。
「何故こんな事になった? 神になるなら、異世界転生なんかするんじゃなかった!」
そう呟き、遠い昔転生した頃の事を思い返した。
これは、そんな主人公が転生してから神様になるまでの物語である。