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18.ソラ、父と再会する

 私はガイの声を振り切り、二人の元に向かった。


 父はリュカとフォルの攻撃を軽々とかわしているところだった。

 その身のこなしは軽くとても40代とは思わない程だ。しかし、感心してばかりもいられない。


 私は剣を交える二人の間に無理やり割って入ろうとするが、タイミングがつかめない。

 しかも全員戦いに集中している。アセスもどうして良いのか分からないように戸惑っている。


(あぁ。もう最悪……)

 私は焦りでイライラしていた。

 人の話を全く聞かない男ばかりだ。


「あんた達いい加減、人の話を聞きなさいよ!!」


 私はアセスから降りると、さらに二人に近づいた。

 その時、ちょうどフォルが父に口から炎を放ったのだ。父は悠々と上空に跳ね交わしたが、炎はちょうど背後にいた私にそのまま直進してきた。


(もう……本当に……最悪……!!)


 避けられず思わず目を瞑った。

 ……が、熱くない。


 ゆっくりと目を開くとリュカが私の体に覆い被さっていた。


「ソラ、大丈夫か?」


「リュカ? 大丈夫? ごめん……どうしよう」


 フォルの黒炎を直撃したリュカの服は激しく焦げていて肉の焼けるような臭いが鼻についた。私を庇ったせいでこんなことに……。泣いている場合では無いのにボロボロと目から涙が落ちてくる。


「ソラ!?」


 父も慌てて私に駆け寄ってきた。


「お父様……お願い。私の……話を聞いて」


 泣きじゃくりながら父に懇願する。

 父の前で涙を見せるなんて何年ぶりだろう。私はぼんやりと考えていた。


「……分かった」


 父は私が落ち着くようにもう一度優しく抱きしめてくれた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「フォルと消えたかと思ったらリュカが丸焦げで帰ってくるし、しかも勇者も一緒になんて……一体何があったのさ?」


 いつもは飄々(ひょうひょう)としているルヴァンもさすがにこの状況には驚いているようだ。

 私だってこの急展開には付いていけない。


 父がリュカに応急手当はしてくれが、直撃を受けた為か傷が酷かった。そこで仕方なしにリュカを魔城に連れて来たのだ。

「そのまま放置して早く人間界に帰るべき」とガイは最後まで主張していたが、父がなんとかとりなしてくれた。リュカが私の身代わりになったことが大きいのだろう。その辺りの考えは引退したとは言え、実に『勇者的』な考えだと感じた。


 ルヴァンにリュカの治療を任せると、私達はとりあえず自室で待機することになった。

 主を丸焦げにしそうになったフォルも心配だったが、とりあえずは父に現状を説明しなければいけない。

 私は2人に魔界に連れて来られてからの日々を説明した。

 説明している間、ガイはもちろん、父もさすがに落ち着かない様子だった。いつでも剣を抜けるように鞘から手を離さない。


 寵姫にされたことを説明するときは、明らかに父の目の色が変わったが「あくまでも勇者の娘を陥れる為であって、形式上の寵姫」という事でなんとか納得させた。

 一通り話終わると、父はふぅっとため息とついた。


「ソラ、大変だったな。迎えに来るのが遅くなってしまって本当にすまない」


「そんな……迎えに来てくれただけですごく嬉しいよ。でも、どうやって魔界(こっち)に来れたの?」


 魔界と人間界のゲートが開くのはまだずっと先の筈だった。

 だからこそ、それまでの間にカルアを助けにいかなければいと思っていたのだ。


「あぁ。それは、これを使ったんだよ」


 父がポケットから手の平程のサイズの石を取り出した。白銀の石で周りには金色の装飾が施されている。貴重な石なのだろうか?

 よく見ると石の中央には亀裂が入っている。


「これは僕が勇者の時に妖精王からもらった物なんだ。魔王を倒すときに使ってくれと託されたんだが、結局使わなくてね。この宝石を割ったときの魔力を使って魔界と人間界のゲートを無理やりこじ開けたんだよ」


「嬢ちゃん、その宝石は本当だったら国宝級の代物だったんだからな。セインの奴、あっさり割っちまってもったいない。売れれば一国買えるくらいの価値はあったんだぜ」


 あまりの話に私はなんと言って良いのか言葉が出なかった。

 私が魔界にさらわれてしまった為に、そんな大切な物を破損させてしまっていたなんて。私の気持ちを察したのか父が頭を撫でながら、


「ソラ、僕にとって、いや母さんと僕にとっては君以上に大切なものは居ないんだよ。毎日毎日、ソラが無事でいてくれる事だけを祈っていた」


「そうだ! お母様は元気?」


「あぁ。ソラが居なくなって一時は寝込んでいたけれど、今は大丈夫だよ。ソラの帰りを待っているんだ。とにかくケガが無くて良かった。僕たちもそれだけが心配だったんだ」


「まぁ、思いのほか元気そうだったけどな」


 ガイが茶化すように笑った。


「しかも、嬢ちゃん、召喚獣まで使えるようになっていたなんてスゲーじゃないか! やっぱり血は争えねーな!」


「ガイ」


 何故か父が目配せするとガイは慌てたように、


「う、うん。まぁ、そうだな。さすがセインの……勇者の娘だな。俺も元パーティーとして誇らしく思うぞ」


 と付け加えた。

 私は2人のやり取りには違和感があった。


「ねぇ。お父様。どうして私には召喚士(サモナー)の力が、」


「お待たせ~!! リュカの治療が終わったよん!」


 そこで、能天気な声でルヴァンが部屋に飛び込んできた。


「僕たち四天王もいるから、ソラちゃんも勇者もその他一名も謁見の間まで来てくれるかな? 今後について話をしよう」


 ルヴァンの口調と表情は明るいが、目は全く笑っていなかった。

 私達にも緊張が走る。


「分かった。僕たちも娘の今後について話がしたい」


 父が落ち着いた口調で応じた。

続き執筆しました!少しずつですが話を進めていきたいです!

目指せ完結!(まだ先ですが……)引き続きよろしくお願い致します。

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