鬼とチョコレート2
「バレンタインは愛情!」
「愛情?」
雪を積み重ねながら輝かしい笑みを向けるカエル。
「本当は好きな男にチョコをあげるみたいだけど、日本は関係ないね。愛情があればなんだっていいのさ」
「ふむ」
アメは興味深そうに頷いた。
「好きな人にチョコをあげるなんて素敵だよねー。でもさ、義理チョコはあげる意味ないよねー。愛情ないし」
「義理でチョコをあげることもあるのか?」
「あるよー。愛情がないのにお世話になりましたみたいな感じであげるの。相手も返さなきゃいけないみたいになるから愉快じゃないね。元々のバレンタインから離れてるし」
カエルは積み上げた雪を手で固めている。アメも真似して固め始めた。
「なるほど」
「ねー。意味ないっしょ? ……よし、できた」
カエルが雪山を掘り始め、だんだんカマクラに近くなってきていた。
「カマクラー!」
穴を掘り、人が中に入れるくらいになってからカエルは中でくつろぎ始めた。
「おお……すごいな。中に入れる」
アメもお邪魔して中に入る。
「意外にあたたかいな」
「でしょ? あったかいよねー! 愛情もきっとこれくらいあたたかいはず」
「ふむ。……しばらくここにいてもいいか?」
「どうぞ」
アメはカマクラ内の不思議なあたたかさに興味がわいた。
「冬眠していたらわからなかったな……」
「まあ、そんなもんだよ! 常識も。地球内の常識が宇宙では全然違うかもしれないし。ところで、あんたの仲間ってこの島にどんだけいるの?」
カエルはどこからか葉を沢山持ってきて地面に敷いた。
「ああ……えーと……あと三神だな」
「三神かあ。冬眠中?」
「ああ」
敷いた落ち葉の上にカエルは寝転がると「会ってみたいなあ」とつぶやいた。
「春になれば会える」
アメも腰をかけ、外を眺めながら答えた。カマクラの外は太陽により眩しいくらいに輝いていた。
「春になればか」
「ああ」
しばらくカエルとアメは一緒にいた。