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最終話 雪原の滝1

 雪が降る中、カエル達はコバルトを探す。あれから二週間が経過した。雪は吹雪に変わり、何度も捜索を断念していた。


 たまたまの晴れで久々に捜索に出たカエル達は雪の多さに悪戦苦闘しながら、夕方近くまで捜索を続けた。


 しかし……

 見つからず、日が傾いた頃に一同はアメの家付近に集まってきた。


 「見つからん……」

 「……イチゴは?」

 カエルが帰ってきた面々を見回すと、イチゴが帰ってきていなかった。


 「いない……」

 「まずいのぉ……イチゴもまさか」

 長老は青い顔でイチゴを探すが、近くにはいないようだった。


 「……あたしのせいで消えたの?  イチゴー! 返事してよー!」

 カエルは半泣きでイチゴを呼ぶが、生物のいなくなった雪原に声が響いただけだった。


 「カエル、落ち着け。あれから二週間近く探しているが見つからんということは、探している場所が悪いのだ。カエルのせいで消えたとは思えん」


 「適切な冬眠をしないと、死ぬ……ケケー……」

 キオビは度々、夜も捜索に出かけていたようだ。眠っていないのか、疲れた顔をしている。


 「キオビ、ごめんね。なんとかしないと……」

 カエルは焦っていた。去年の冬、雪が降っていたのは確認したが、冬のはじまりにこんなに雪が降るとは思っていなかった。

 他の蛙神達は冬眠しているため、雪とのつきあい方がわからない。


 「カエル、島の反対側に行ったことはあるかの?」

 「……ないかも。大きな滝があって危なそうだから寄っていなかった。だいたい、あっちは友達がいないでしょ」

 カエルは以前、島に来た当初に少し散策をしていた。そこで、かなり長い距離の(がけ)と滝を見つけたのだ。


 「あそこは結界の切れ目じゃ。人間は主に龍神を川に例えた。川のくねりが龍に見えるからじゃ」

 「ん? うちらは(かえる)だよね?」

 突然によくわからないことを言い始めた長老にカエルは首を傾げる。


 「つまり、何が言いたいかと言うと、あの滝の先は我らの結界ではなく、龍が住んでおるのじゃ」

 「驚いた! この島、龍神もいたの!?」


 「ああ。たまに結界の管理をしに、戻ってくるだけなのじゃが。夏の時期、そうめんを受け取りにいくのはそいつからじゃ。海神(わだつみ)でもある故、海岸線でも良く出会うのじゃがな。その龍神に会いに行ってくれぬか? おそらくこの時期は冬休み。テーマパーク『竜宮』の社員も冬休みをもらっているはずじゃ」

 長老はその龍神が関与していると思ったようだ。


 「テーマパーク『竜宮』とは、なんだ?」

 アメが眉を寄せつつ、長老に尋ねた。

 「高天原にある、龍神が経営している神の娯楽施設じゃ」

 アメはこの島以外のことはわからない。故に、そういうものがあることにとても驚いた。

 「そんな場所があるのか……」

 「その龍神が怪しい? ケケー!」

 キオビも龍神が怪しいと思ったようだった。


 「……疑ってはいかんが、今年は多々、結界がほころんだ。何か知っている可能性はあるのじゃ」

 「わかった! 行ってみる!」

 カエルは深く頷いたが、アメが慌てて止めた。


 「ま、待て! 雪が深い! 危険すぎるぞ」

 「でも、行かないと」

 「もう日が暮れる!」

 「明日、吹雪くかもしれないから、今から行く!」

 「雪は危険だ!」

 カエルとアメはお互い退かずに言い合いを始めた。


 「いっきに蛙神が結界を越えるのは危険じゃ。ワシは残らねばならん」

 二人の言い合いを割るように長老が入り込んだ。


 「キオビは神力がやや低下しておる。結界付近に連れていくのは危険じゃ」

 「ケケー……」

 キオビの返答を聞き流しながら、長老はアメとカエルを仰いだ。

 「危険だが、行ってくれないか」

 長老に言われ、カエルは顔を引き締め、アメは複雑そうにうつむいた。


 「アメは行く必要はないぞい。消えてしまうかもしれぬ故」

 「では、カエルひとりで行かせろというのか!」

 長老の言葉にアメは頭を抱えた。


 「……アメもいくのかえ?」

 「……いく」

 長老に問われ、悩んでいたアメは結局、カエルと行くことにした。

 

 

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