冬眠近づく11月2
「いや……それは……ワシは……その」
長老の歯切れが悪いので、カエルは首を傾げた。
「どうしてそこはハッキリしないの?」
カエルが眉を寄せていると、アメが突然カエルに頭を下げた。
「すまん。カエル!」
「え? なに?」
「長老にカエルの神力のことを話したのだ。だから、『コバルト』の他に長老も知っている……」
アメは申し訳なさそうに頭を下げた。
「なあんだ。話しただけか。あたしはてっきり、龍神に力を取られているって知っているのかと……あ……」
カエルは言ってから後悔した。イチゴとキオビが戸惑いながらこちらを見ていたからだ。
「どういう……ことなんだい?」
イチゴはすかさず尋ねてきた。
彼らは本当に外の話を知らないようだ。
「……まさか……」
カエルはイチゴとキオビの不安そうな顔を見て、ある仮説にたどり着いてしまった。
……あたしがこの話を持ちかけてしまったから、普遍であったこの島の時間を進めてしまったのか?
外の内容がこれほどまでに入って来ないのはなかなかに異常だ。
彼らの島はもしかすると、なんらかの結界で守られていたのかもしれない。
「な、なんでもないよ! 気にしないで……」
「……実はな……」
カエルが何事もなかったかのように振る舞う中、長老が口を開いた。視線が長老に向く。
「実は、ワシが外の内容を遮断し、結界を張って島を神格化させたのじゃ。データが変わらぬように。……知っておったよ。外では龍神が雨神になっていること、我々がある一地域のみに信仰されていること。毎年、そうめんをある海岸線まで取りに行くのは、結界の綻びを確かめるため、そして龍神に会うため……」
「龍神に会うため?」
アメ達は目を見開いたまま、長老の話を聞いている。
「我々は特殊な雨神じゃ。ヤドクカエルから選ばれた神。人々はそのおもしろさに惹かれ、参拝客があとをたたない。単純にその地域に蛙好きの芸術家がいて、美しいヤドクカエルを広めようと雨神として祭ったのが始まりじゃ。
故、我々は龍神に雨神の力を取られていると思われてはならないのじゃ。自分を疑えば神力データも不安定になる。そういう常識は神から始まる事もあるのじゃよ。我々は蛙神が『自分達は本当に雨神なのか』と疑うことを恐れているのじゃ。データが変わると消えてしまうからの。龍神に会うのは雨神のデータ照合と確認のためじゃ」
「……そうだったの? あたし、余計なことしたんだね」
カエルは一通り聞いてから下を向いた。アメ達は慌ててカエルの背中をさする。
「コバルトが消えた原因はなんだ? ケケー」
キオビが皆の代わりに質問した。長老は迷いながら唸った。
「実際にはわからんのじゃが……我々の常識が非常識になり、データが不安定になって消えてしまったのではないかと疑っておる……」
「それはないんじゃないかい? コバルトはアメ一本で、他をまるで考えられないヤツだよ?」
イチゴは困惑しながら長老に答えた。
「ま、まあ、細かい話は良い! とりあえず、探そうぞ!」
アメが声を上げたので、一同は捜索方面に頭を持っていった。




