ジメジメなキノコ狩り2
「さあ、収穫だよ! カゴちょうだい!」
カエルが心底楽しそうにアメにカゴを要求した。
「か、カゴ……!? あ、ああ……」
アメは植物のツルで作ったカゴを、カエルに渡す。
「もう一個ある?」
「もうひとつ……ああ、これ」
アメは辺りを見回して、食材が入ったカゴを渡した。
「トマトとかに、一回外に出てもらってと……」
カエルは中の食材を全部出すと、机に置いてから、カゴをコバルトに持たせる。
「……これは……」
「キノコ狩りしよ!」
「え……ちょっと……カエルちゃん……」
カエルはコバルトを引っ張ると、部屋の奥まで進んでいった。
「そっちは大量にキノコが……」
アメの苦笑をよそに、カエルは目を輝かせていた。
「ヒラタケだ!! シイタケもある!!」
「え? シイタケ!? なんで?」
カエルとコバルトは同時に驚きの声を上げる。
「ベニテングダケだ! こっちはホコリダケ!! めっちゃブナハリダケ!!」
机の足には大量に白いキノコが生えていた。普通ではありえない光景だ。
「赤いのはドクがありそうだけど……この白いのは食べられそう? それよりも……アメとキノコ料理食べられるなんて、幸せ……」
コバルトが頬を染めている横で、カエルは嬉々とした顔で、白いキノコのブナハリダケを収穫していた。
「ブナハリダケは高級品だよ! たしか! お! こっちはアンズダケ!? ポルチーニまであるじゃん! すげー!!」
「……俺は、君がそんなにキノコに詳しいことに、驚くぞ……」
アメはあきれた声を上げた。
「シメジみたいなのとか……エノキみたいのもあるのね……。でもなんか……おっきいのもあるわ……」
コバルトは控えめにカエルの背中を叩いた。
「ん?」
「なんか……おっきいのが……」
「わあ! あれはニオウシメジ!」
「あわわ! やっぱり臭いか?」
アメはカエルの言葉に慌てた。
部屋がキノコ臭いと思ったらしい。
「ん? 臭くないよ? とりあえず、収穫……おもっ!」
ニオウシメジは大きく、おそらく米俵くらいの重さはありそうだ。
「ほら、手伝って! 皆!」
カエルの掛け声に、コバルトとアメが慌ててキノコの収穫を手伝った。
結果、かなりのキノコが狩られ、アメの部屋はスッキリした。
しかし、なぜ、生育環境が違うキノコが発生したかはわからない。
「雨神の変な能力が発動したのかもねー」
雨神達はしばらくしてから、キノコの生えていた椅子に腰掛け、キノコ汁と焼きキノコを食べていた。
「アメの焼いたキノコ、おいしい……わ」
「そ、そうか? ありがとう。焼いただけなんだがな……」
「塩、ふってくれた……うれしいな」
コバルトは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「コバルトのキノコ汁も最高にうまいぞ」
「……!!」
アメの笑顔を見たコバルトは、さらに頬を赤く染め、焼いたハナビラダケを食べた。
「ほぉー……」
カエルはアメとコバルトを交互に見ると、不気味に笑った。
コバルトの方はアメを気になっていて、アメはなんとも思ってなさそう。
「春だねぇ」
「いや、今は梅雨だ」
カエルの発言に首を傾げたアメは、真面目に返答する。
「……これは……ツユでもあるけど、シルでもある……なんて……」
コバルトがキノコ汁に向かい、ひときわ小さく、だが自信満々につぶやいた。しかし、カエルとアメの複雑な表情を見るや、顔を真っ赤にして「……忘れてほしいの」と両手で顔を覆った。
「青いかえるなのに、真っ赤になってる!!」
カエル達は大声で笑った。
梅雨でジメジメしているが、楽しいキノコパーティーとなったようだった。




