よしのぼりとこいのぼり2
「こいのぼりって、恋がのぼるってことか? つまり、成功すると!」
アメの発言に長老は首を傾げた。
「ん? ちょっと何言ってるかわからんのじゃが、鯉がのぼるのは間違いないぞい」
長老の言葉に、今度はアメが首を傾げる。お互い噛み合わない。
「じゃあ、長老! こいのぼり、作る?」
カエルは長老の手を取ると、満面の笑みで尋ねた。
「おー、いいのぉ! どう作るか?」
「葉っぱで作る?」
長老とカエルが仲良く話しているのを見て、アメはやや頬を膨らませた。
「恋は作るものではなかろう」
「それが、鯉は作れるんだよ」
噛み合わないアメとカエルは、噛み合わない会話をしながら、葉っぱを選ぶ。
「葉で恋が作れるわけ……待てよ。相手に届きそうなものなら作れそうだ」
「……?」
突然、去っていったアメにカエルは眉を寄せたが、追うことはしなかった。
しばらくして、カエルと長老は試行錯誤をし、枝に葉っぱを巻き付けて、こいのぼりを作った。
しっかり、目や鱗も描かれている。
「わーい! できたー!」
「まあ、本当は赤とか青とかなんじゃが……全部みどりになったのぉ。かえるらしくて良き良き」
カエルと長老が手を取り合って喜んでいるところへ、アメが慌てて戻ってきた。
「はあ、はあ……お、俺もできたぞ!」
「え? どれ? みせてー!」
期待のこもった目のカエルに、アメは頬をやや赤く染めながら作ったものを差し出した。
「こ、これだ!」
「……!?」
アメが差し出したものはハート型に結わいてあるレンゲの冠だった。
「え……えー……と……」
「気持ちだ」
アメは得意気に鼻を鳴らすと、レンゲの冠をカエルに押し付けた。
「あ……、ありがと」
カエルの顔は困惑していたが、顔は上気していた。単純に照れくさかったのだ。
「青春じゃのー! いいのぉー!」
そんな二人を眺めながら、長老はひとり、上機嫌だった。




