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平民侍女は引きこもり令嬢を更生させたい  作者: いとまる。
ラズティア王国編
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お買い物ですよ





両手で大きな紙袋を抱えながら、夕暮れの街を歩く。

さすがは王都の次に栄えていると言われている街だ。

冒険者や旅人向けの服を扱っている店も多く、満足のいく買い物ができた。


「ドレス以外を着るのは初めてだけれど、とても動きやすいのね。」

「機動性を重視したデザインですからね。見た目の可愛らしさはありませんが、旅をする私達には最適です。」


ローブを着ているので見た目では分からないが、アリア様は初めて着る厚布の服と革ブーツに興味津々だ。

その上には毛皮の外套も羽織っており、寒さ対策もばっちりである。

できれば皮鎧や籠手なども欲しかったが、さすがにそこまでのお金の余裕は無かった。


「さて、では次に武器屋へ行きましょうか。」

「武器屋?予備の剣を買うの?」

「いえ、アリア様のですよ。アリア様を戦闘に参加させることはありませんが、念の為一つは持っていた方がいいでしょう。」


武器屋は街の中心である大通りからは離れた場所にあり、街の西側が鍛冶屋の集まる区域らしい。

狭い路地を迷わないように進みながら、私達は武器屋へと向かう。




店内には大量の剣や槍などの武器が置かれていて、ついつい目移りしてしまいそうだ。

カウンターでは、いかにも職人といった風貌の厳つい男性がこちらを見ている。


「アリア様、こちらはいかがですか?軽くて使いやすそうですし、護身用としても良さそうです。」


棚にあった短剣の殺傷能力は低そうではあるが、護身用としてならば充分だろう。

だが、それを見たアリア様はなぜか微妙そうな顔をしている。


「アリア様?」

「…護身用ではなく、私の使い慣れた剣を選んでもいいかしら?」

「え?アリア様は剣術を嗜んでおられたのですか…!?」

「あの家で育ったのよ?幼い頃から剣の訓練だけは受けていたわ。」


まさかアリア様が剣を扱えるとは驚きだ。

屋敷にいた頃はほとんど引きこもっている姿しか見ていなかったので、剣を持つアリア様の姿は想像もできない。


「いくら努力をしたところで魔法が使えなければ評価なんてされなかったから、正直剣は好きではなかったのだけどね。今となっては有難いと思うわ。」


そう言ってアリア様が手に取ったのは、細く長い刀身に装飾が施された柄が特徴のレイピアだった。

短剣よりも値段は上がるが、買えないほどではない。

アリア様が選んだレイピアを購入し、店を後にする。




宿屋へと戻る道中、アリア様から再び驚きの言葉を告げられた。


「セレナ、私もギルドの依頼を受けるわ。」

「ッ!?いけません!いくら剣術を嗜んでいたとはいえ、それは危険過ぎます!!」


慌てて説得をするが、アリア様は聞き入れようとしない。

簡単な依頼ならばいいかもしれないが、それでも何が起こるか分からないのが冒険者だ。

できるだけアリア様を危険な目には合わせたくない。


「その危険な依頼をあなたは受けようとしているのでしょう?私だけが安全な場所にいるだなんて、とても許されることではないわ。」

「ッッ!!私のことはいいのです!もし、アリア様がお怪我などをされたら私は自分を許せなくなります…ッ!」

「あら。だいぶ鈍ってしまったとは思うけれど、これでも私、剣の筋は良かったのよ?それにランクが低いうちは危険な依頼も少ないでしょうし、二人でいれば問題ないでしょう?」



どれだけ説得してもアリア様は頑なに意志を曲げようとしない。

アリア様が剣を握らなくても私が全てなんとかしてみせると言っているのに、私はそんなに信用が無いだろうか。


「大丈夫よ、無理はしないから。ね?お願いセレナ。」

「……そんな顔で頼まれたら断れるはずがないじゃないですか…。危険だと判断したらすぐに後ろに下がってもらいますからね。」

「ふふっ、なんだかんだ言ってセレナは私に甘いものね。ええ、分かっているわ。」


上機嫌に歩くアリア様を複雑な心境で見つめる。

一人でも生きていけるようになりたい、とアリア様は昨夜言っていたが、あれは比喩ではなかったのだろうか。

いつか本当に私を置いていってしまうのではと、一度生まれた不安は消えることなく私の胸に留まり続けた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! 引き続きも期待しています〜
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