登録完了ですよ
「すみません、冒険者登録をしたいのですが。」
「はい。それではこの用紙に必要事項をご記入ください。文字が書けない方にはこちらで代筆もしておりますが、どうされますか?」
「結構です。ありがとうございます。」
登録用紙を二枚受け取りほとんどの欄を偽の情報で埋め、受付嬢へと用紙を手渡した。
よほど変な事を書かない限りは簡単に登録できるとは聞いているが、それでもバレやしないかと緊張で胸がバクバクしてしまう。
「………あれ?」
「ッ!!……なにかありましたか?」
「お二人は姉妹なのですね。すみません、家族で登録されに来る方は珍しいので、つい。」
「そうでしたか。いえいえ、お気になさらず。」
一瞬心臓が飛び出るかと思ってしまった。
嫌な汗がじんわりと背中に滲むのを感じながら、なんとか平常心を保つ。
「はい、これで登録は完了です。発行した冒険者証は他国でも身分証明として使うことができます。無くさないように気を付けてくださいね。」
「分かりました。ありがとうございます。」
冒険者証を受け取り受付カウンターから離れる。
これで今日の目標は達成だ。
「冒険者証って案外小さいのね。カードみたいだけど、なにが書いてあるの?」
「これには本人の名前とランクと発行した国が書いてありますね。」
「?ランクってなにかしら?」
「依頼は難易度によってランク付けされていて、ここに書かれているランクの一つ上までを受けることができるみたいです。」
現在のランクは一番下のFなので、Eランクの依頼を達成するとEランクへと上がり、Dランクの依頼を受けることができるようになるのだろう。
ランクが上がれば上がるほど報酬金も高くなるようだ。
「あ、宿屋へ戻る前に魔石を売ってきてもいいですか?シルバーベア以外にも道中で倒した魔物の魔石がいくつかありますし。」
「そういえば宝石以外にも売れる物があったわね。ええ、いいわよ。」
アリア様の了承を得て買取カウンターへと向かう。
色々あって魔石を持っていることをすっかり忘れていた。
「合計58000ダラーで買い取らせていただきます。」
「!?そんなに高く売れるんですか…?」
「はい。Cランクの魔石も数個ございますのでこの金額となります。魔物の討伐証明となる素材もあれば、これだけで冒険者ランクを上げることも可能だったのですが…。」
「そうですか…。いえ、大丈夫です。では買い取りをお願いします。」
まさか魔石がこれほどお金になるとは思わなかった。
倒した魔物から魔石を抜き取るのは手間だったが、保管しておいてよかった。
思わぬ臨時収入で上機嫌となった私をアリア様が不信げに見つめていることに気づき、慌てて顔を引き締める。
「アリア様、予想外の収入で多少お金に余裕ができましたので、この後は買い物に行きませんか?屋敷から持ち出した服はボロボロになってしまいましたし、冒険者となったからには相応の格好をした方がいいかと。」
「…それもそうね。たしかに今持っている服はどれもみすぼらし過ぎるわ。」
ローブで隠れてはいるが、今着ている服もところどころが破れていたりしている。
他にも、私はエレン様から頂いた剣があるが、アリア様にも護身用の短剣くらいは持っておいてもらった方がいいだろう。
私達は来た道を戻り、再び店が立ち並ぶ大通りへと向かった。