街ですよ
ガタンッガタンッ
進むたびに大きく馬車が揺れ、荷台に腰を下ろしていると若干お尻が痛い。
だが、偶然通りかかった馬車に街まで乗せてもらえる事になったのは本当に運がよかった。
「あ!アリア様、街が見えてきましたよ!」
「綺麗……!真ん中に見えるあれは時計塔かしら?とても高いわね!」
馬車の荷台から顔を覗かせ、私達は思わず感嘆の声を上げた。
ようやく見えたラズティアの街は高い防壁に囲まれ、中心に立つ時計塔が夕日に照らされていて幻想的だ。
久しぶりに年相応の反応を見せるアリア様は目をキラキラと輝かせ、食い入るように街を眺めている。
しばらくそうしていると、御者台からおかしそうな笑い声が聞こえてきた。
「お前らは本当に田舎から来たんだなあ!街を見てそんなに喜ぶやつは初めてだぞ!」
髭の生えた口を大きく開きながら笑うこの男性はラズティア王国の商人らしい。
どこから来たのかという問いに正直に答えるわけにもいかず、仕事を探して村から出てきた姉妹であるという設定で話をしてある。
「ところで二人の名前はなんていうんだ?」
「えっと、…姉の私がレーナで、妹がリリアです。」
さすがに本名で旅をするのはまずいだろう。
アリア様が驚いた顔でこちらを見ているが、申し訳ないが今はそれを無視する。
「そうかそうか!にしても姉妹だっていうのに全然似てないなあ!」
「それは…その、私は引き取られた孤児なので両親とは似てないんですよ。」
親切にしてくれた人に嘘をつくのは心苦しいが仕方ない。
それに、私がアリア様と本当の姉妹だなんて嘘でも畏れ多くて言えない。
「そうだったのか、悪いことを聞いちまったな。…もうすぐ街に到着するが、今夜の宿は決まってるのか?」
「いえ、街に着いてから探そうと思ってます。」
「それなら憧憬の宿屋ってところがおすすめだぞ!値段も安いがなにより女主人の店なんだ。二人はかなり目立つ容姿をしてるからな、少しでも安全な宿の方がいいだろう。」
「あはは…。ありがとうございます、今夜はそこへ行ってみます。」
宿屋は街についてから探そうと思っていたのでこの情報はとてもありがたい。
それにしても、私達はそんなに目立つだろうか?
アリア様だけならまだしも、私はただの田舎者としか見られないと思うのだが。
念の為、街に着いたらローブを買った方がいいだろう。
その後も商人の男性と話をしていると、気が付けばあっという間に街へ到着していた。