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月に酔う煙  作者: 君嶋空
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ーーー曇ってて今日は月が見えないね。


どうせ新月だしどのみち見えてないよ。


月がきれいですね。


みえてもないのに?


意地悪だなあ。


お互い様でしょ??


それはそうだけど。


本当にこれで良かったのかな。


それがわかったら後悔なんて誰もしないよ。


君は後悔する?


そりゃね。君は?


私は毎日後悔するよ。でももうどうしようもないじゃない?


そうだけど…


私が後悔するっておかしいのかな?


おかしくはないよ。悪いのは僕だから。


じゃあ毎日後悔しよっと。


苦しいなぁ。


だから後悔するんだよ。


苦しいならしない方がいいんじゃ?


私が苦しい分、君も苦しくなるでしょ?


うん、そりゃ。


だからするんだよ。毎日私を想ってくれるから。



それじゃあもう遅いし帰るね。


うん。


ばいばい。ーーー




交互に起こる会話。


涙ながらに手を振る少女を抱きしめることが出来なかった。自分から切り出した別れに嘘をついてしまうから。もっと傷つけてしまうかもしれないから。全てが曖昧で答えだけが出てしまったこの場に、残っているのは僕の後悔だ。










「げっまた寝てた。」


スマホを開くと既に夜の八時を過ぎていた。


「月がきれいですね。か。」


使い古された言葉。チープで詩的で心の芯に鋭く刺さる。

今は高校2年生の8月23日、夏休みが終わろうとしている。

僕は4月の頭に大好きだった、いや今でも好きかもしれない彼女を振った。

理由は大した物ではなくて、幸せな日々が続かないことを恐れてしまったこと。彼女を幸せでいさせ続けられる自信がなかったから。自分勝手で残酷だ。

被害者のつもりは無いけれど、あの日から後悔が消えず僕の頭を渦巻いている。


「はぁ…何度目だろう。」


日付が変わるのを待ってから外に向かう。


人のいない空の元。深い溜息をつきながらぼんやりと月を眺める。こんな日常がずっと続いている。別れを告げたあの日から。自分から放った言葉からの痛みにこうして悩まされ続けている。全て自分のせいなのに。被害者ぶるつもりは無いけれど、どうしようもない痛みに耐えるにはただただ夜に浸ることしか出来ない。

朝に飲み込まれる前に家路に着く。

僕は夜に取り憑かれていた。君に取り憑かれている。


「今日も月が綺麗だったなあ。」


臆病な彼女だから、新月の日を選んだずるい自分。逃げ道を作ってその行為が余計苦しめられることになると分かっていたけれど、返す言葉を探せる気がしなかった。



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