4話 皆様を招待ですわ
「ようこそいらっしゃいました。カトレア様、デイジー様」
「ありがとう。今日はよろしくね、イベリス」
「久しぶり~。イベリス」
本日はお友達とお茶会です。と言っても招待したのは友人の2名ともう1人の計3名の小さなお茶会ですが。それでも凄い成果です。
そう、アリステラ様です!
ダメもとでお誘いしましたが、まさかのOK。
そうして当日、まずは友人2名が馬車にて我が家にやってきました。それを出迎えるのはイベリスです。
屋敷の案内は使用人の仕事で、ホストの私は一足先に庭でスタンバイしています。
2人は同じ馬車で来たようですね。おそらくどちらかが一緒に行こうと誘ったのでしょう。
そういえばお友達の名前って出てくるのが初めてだったような気がします。親しいクラスメイトは沢山いますが、特に仲良くしている方が、カトレア様とデイジー様の2人です。
良く私達3人でお茶会などを開いています。今回はアリステラ様もいらっしゃるとのことで私が主催をさせて頂きました。
そうしてイベリスに案内された2人が私の待つ庭にやってきます。
「ようこそおいでくださいました。カトレア様、デイジー様、本日は楽しんでいってください。」
「リリア様。本日はお招きいただきありがとうございます。」
「リリアさん。今日はよろしく」
お決まりの挨拶をしてそれぞれが席に着きます。上品なカトレア様とフランクなデイジー様。一見正反対の二人ですが何かの馬が合うようです。
しかし、まだ始めるわけには行きません。招待客がそろっていないのですから。それから少し――と言っても開始時刻を決めていたので本当に少しですが、待っていると最後の招待客がいらっしゃいます。
「本日はお招きいただきありがとうございます。」
庭に現れた、アリステラ様はそう言うと一礼して、イベリスの引いた椅子に座りました。
招待客がそろったのでお茶会開催です。
「こういった小規模な会は今まで参加したことが無くてな。今日はよろしく頼む。」
アリステラ様がそう言ってきます。そうなのです。アリステラ様はマナーは心得ていますが素のしゃべり方はどちらかというと男の方のような感じです。
「ええ、お任せください」
そう自信を持って答えます。何せ今日のために震電に手伝って貰って準備してきたのですから。
そうして……お茶は運ばれてきません。イベリスも側に立ったまま動こうとしません。その様子に他の3名は「?」を浮かべます。
「今日はお茶会と聞いていたのだが? ……何かあるのだろうか?」
疑問に思ったアリステラ様がそう聞いてきます。他の2人も疑問には思っていたようですがアリステラ様の存在に緊張してしまって声を出せなかったようです。
「まずは皆様に紹介したい者が居ます。こちら、私の使い魔の、」
『お初にお目にかかります、お嬢様方。ワタクシ“震電”と申します』
私の横からスッと震電が現れます。
皆様、突然現れた震電を見て驚いていらっしゃいますね。小さな悲鳴も上がります。ちゃんと説明しないと
「私が、金クラス冒険者だと言うのはカトレア様とデイジー様はもうご存じでしょうが、その功績にはこの震電も一役買っていますのよ。」
実際には使い魔では無いのですが、その辺りの事を詳しく言ってもしょうが無いですしそういうことにしておきます。
それと、現在の文明レベルでの宇宙人との大々的な交流は時期尚早だとの震電とイベリスの意見です。
「噂には聞いていたが、本当に金冒険者だったのだな。それに使い魔まで……私が見たことがあるのは猫の使い魔だったのだが、これはまた珍しい」
アリステラ様が興味深そうに震電を見ていらっしゃいます。アリステラ様はさすが侯爵家の令嬢だけあって他の使い魔も見たことがあるようですが、震電のようなタイプは初めて見るのでしょうね。まあ、使い魔では無いので当たり前ですが。それ以前に生き物でも無いそうですし。メタリックなカクカクボディーは今日も輝いているようですね。何よりです。
「さて、今日はアリステラ様もいらっしゃるとのことで、実は秘密の場所を見つけていますの。と言うわけで一応こちらにサインを」
そうなのです。今日行うお茶会は、私の屋敷では無く
「そうなのか、わざわざすまない」
「まあ、穴場ですか? 楽しみですわ。」
「でも、今から移動するの?」
そう言いつつ皆、目の前に出された用紙に目を通します。その用紙は一種の契約書ですね。と言っても、金冒険者として私が見つけた秘密の場所なので必要に迫られない限り口外しないようにと言う単純な物です。念のためです。
皆、意図をくんでくれたようでサインしてくれます。
金冒険者とは正直関係が無いのですが、その方が真実味や期待感が増すのでそのためです。
「金冒険者としての伝手か。楽しみだな」
アリステラ様も楽しみにしてくださっています。皆がサインをし終わったので早速案内します。
「震電、お願いね」
『イエス、お嬢様』
そう言うとアマテラスへとワープしました。ちなみに擬装用に転移魔方陣を足下に浮かび上がらせています。
「おお!」
そう漏らしたのは誰だったか。やってきました。私のお気に入り、アマテラス内の第1ジオプラントです。
既にテーブルや茶器などはイベリス指導の下、震電によってセッティング済みです。
「ではお嬢様方、あちらへどうぞ」
イベリスが皆をテーブルに案内します。周囲に人はいません。当然ですね。草原や花などが咲き乱れ少し先には木々が生い茂る。そんな場所の真ん中でのお茶会です。
イベリスが紅茶を入れ各々の前に出していきます。
皆がイベリスに案内されたテーブルに座りながら周囲を見回します。
「本日は私のお気に入りの場所でお茶会を行いたいと考えましたの。ここから見る景色は最高ですのよ。」
「確かに綺麗だね~。見たことの無い花もあるし、外国なの?」
デイジー様が質問してきますが、フフン! 此処は、国内ではございませんのよ。
「これは…………な、なん、だ……アレは……」
周囲を見回していたアリステラ様ですがその視線が上に行くとそこでピタリと止まり、絞り出すような声を出します。
「何ですか、アリステラ様。なに……が……」
「ん? どうした…………の?」
皆がアリステラ様の視線につられて上を見上げてそして息をのみます。上――すなわち宇宙には綺麗な星空とそして――私達の世界【フォレスタ】が存在します。
「皆様、本日は此処、【月の庭園】へ、ようこそおいでくださいました。」
ようやく出てきた友人の名前。そう主人公の脳内友人では無く実在するのです。
それにしても秘密とかどこ行っちゃったんでしょうね?