転生は五歳から 前編
「さて、いったい何から話そうか?何がいい?」
自称神様は気軽に話しかけてきた。
”何がいい?”と聞かれても、
そもそも特典に何があるのか知らないので答えようがない。
転生特典と言われてもさっぱりわからないのだ。
何の能力でも状況により選ぶ能力は変わるだろう。
そもそも、転生するとどの様な状態になるのかもわからないのだ。
それに記憶はどうなるのか・・・。
「ああ、そうか。
転生について話していなかったね。
それに記憶か・・・。
よし、それなら転生に関する話をしようか。」
転生に関する基本的な話?
「そう、基本的な話。
転生にはポイントが存在する。
生まれに関する誕生特典と言う物がある。
特典が
“貴族生まれ”なら貴族の家に生まれ変わりポイントを減少し、
“貧民生まれ”なら貧民に生まれ変わるがポイントが増加する。
種族は世界によって変わるが、基本的にポイントは変化しない。
これは種族による差は無いことを表している。」
なるほど。
よくある設定の様だ。
「この辺りは凝った設定にする必要が無いからね。
そして、転生で記憶が蘇るのは最低5歳となっている。」
最低5歳?
5歳にならないと以前の記憶が取り戻せないのか。
もっと若いころ、
それこそ赤ん坊の時から記憶を持っていた方が良いのではないのか?
「残念ながら、それは間違いだ。
赤ん坊の頃から記憶存在すると碌なことにならない。
それは今まであった何百と言う事例がそれを示している。
その一つ、“チャールズ”について話そうか。
転生者、チャールズはシヤドウライツ家の長男として生を受けた。」
―――――――――――――――――――――
・・・眩しい。
ん?
誰かいるようだ?
ぼんやりと人影が見えるがよく判らない。
「|おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ(誰かいるのか?)」
・・・・・
赤ん坊らしく、“おぎゃあ”としか言えない様だ。
これでは意思疎通がままならない。
「グンカノオコンベイド」
「エノコゴシアツアリネジョノアコ」
「ホーアモモヅシイェ」
何を言っているのかさっぱりだ。
言語能力は取っている。
ちゃんと聞こえない所を考えると、目と同じ様に耳もまだ機能していないのだろう。
どうするか?
・・・・・・・・・・
そうだ!
この世界には魔法と言う物があると“神様”と名のる者が言っていた。
その魔法でどうにかできないか?
確か俺は魔法の素養を特典にもらっていた。
その中に
探知、音声解析
と言った呪文がある。
この二つを応用しよう。
まず探知呪文だ。
周りの情報を知らない事には話にならない。
俺は探知呪文を使用した。
使用と同時に魔力を持った波、魔力波が俺を中心に広がる。
ふむふむ、なるほど。
魔力波の反射波を拾う事で形を特定するのか。
まてよ?
見る代わりであるなら、魔力波は必要ないのではないのか?
受け取る物を魔力波でなく光に替えれば・・・
!!
思った通りだ。
光を受け取る様に呪文を変えると周りの景色がはっきり浮かび上がった。
俺は大きなベッドに寝かされており、
横には女性が寝ている。
ベッドの傍らには男が一人立って横に寝ている女性と何か話をしている様だ。
この二人がこの世界の両親、父上、母上なのだろう。
美男美女のカップルである。
それと、うれしい誤算がある。
どうやら三百六十度、全方向の視界があるようなのだ。
これならば易々と不意を打たれることは無いだろう。
音声の方も同様に受け取れるようにする。
よしよし。
よく聞こえるぞ。
「あなたどうしましょう。
チャールズが泣きませんわ。」
「つい今さっきまで泣いていたのに、
病気か何かなのだろうか?
先ほども妙な波動を感じたが・・・
嫌な予感がする。」
「あなた・・・」
まづい。
魔力波を出したのは良くなかったのか!
だが、今の方法なら魔力波は出ない、問題ない。
それよりも早急にコミュニケーションを取る必要がある。
音を伝えるのは空気を振るわせればいいから・・・
「アタエシンアキイシンカンヌチュヒ」
低く深く野太い音が出る。
「ぬ!何だ!今の音は!!」
父上は剣を抜き辺りを警戒する。
母上は俺を庇い震えている。
いかん!
変な音を出したから両親はすっかり警戒している。
どうする・・・・・
仕方がない。
ここは普通に、
「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ」
取り敢えず泣いて、この場を誤魔化すことにした。