第十六話 入学式放課後~さてさて、どう料理しましょう?~(塩沢優理)
取り敢えず投稿。後に修正予定。
ハンデは全て無くなったわけだけど、今度はどうしようかなぁ。
第2セットが終わった直後、ラケットを肩に置きながら私はそんな事を考えていた。
実際やってみて分かったんだけど、第2セットまでの私の背負ったハンデって、結局の所大したハンデになってないんだよね。それにも拘わらず、私はかなり苦戦した。
校長先生から与えられたスコア制限の話も、後半は殆ど忘れてたし。結果的に4-6,6-4と指定通りになっただけ。
そう思えるという事は、私と白水さんとの実力差がここ一年で相当縮まったという事。それしか考えられない。
「って、そんな事考えている場合じゃないわ。先ず何か食べないと」
そんな時、私はふと何時もの習慣を思い出し、自分のバッグへと近寄る。
テニスの試合をこれまで幾度となくこなして来て、身についた習慣を実行する為だ。
①1時間を超える試合の時は、休憩中に水分を取るだけではなく、必ず何か固形物を口に入れる。
・これは空腹を感じる前に必ず何か口に入れる事が前提としてある。
「今日はチョコレートの気分かなぁ。むぐむぐ」
②集中力が最後まで続かないと思った時は、一度頭の中をリフレッシュする。
・これに関しては、テニス以外の全く関係無い事を考えるのが一番望ましい。
「あー、早く帰って寝たい。偶にはステーキでも食べたいなぁ」
③最終セットまで縺れ込む様な時は、何か一つ普段とは違った試みを試してみる。
・相手との均衡を打破する時は、常に自分が先手であるのが好ましい。
「最初の数ゲームはちょっと遊んでみようかな。うーん、余りやり過ぎるとただの傲慢かな? まぁ、そこはフィーリングで…むぐむぐ」
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「試合前は最終セットで力の差を見せつけて勝つつもりだったんだけどなぁ」
エネルギー補給を終えた私は、改めて一言そう述べては今後の事を思案する。
日本で今、私を除いて同世代で一番強いと言われているだけの事はあるよね。面白い素材だわ。
もしかしたら私の探していた人材に、彼女はなりうるかもしれない。そう思っているのだ。
その観点から私が相手に求めるのは主に3点。ボールコントロールの正確さと視野の広さ。白水さんはその内の二つはクリアしていると思うけど、一番重要なのはそこではない。私が一番求めているのは、いざという時の精神的な部分。その1点のみだ。
「決めた。ちょっと揺さぶってみようかな」
彼女に期待している考えからか、その結論に至ると同時に、私はイメトレを開始するのだった。