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第七十七.五話「ダンジョン偵察」上

 冒険者ギルドでミナに「いってらっしゃい」と見送られた俺たち偵察隊が向かったのは、アインスバッハの南門。町にある二つの門のうち、ダンジョンがある方面の門だ。


 冒険者ギルドからはほど近い。


 到着した南門の前は閑散としていた。いつもは出入りする行商や冒険者たちで賑わっているのだが、明らかにダンジョンの影響だろう。


 普段は開けたままの門も閉まっていた。


 俺たちは門の前にいる門兵に近づく。


「通りたいんだが、いいか?」


 シルヴィオがそう声をかけると、門兵は困ったような顔をした。


「この門の外のすぐ近くで魔物がうろついてますけど……」


 出入りの人がいないだけでなく、魔物が近くにいるから門を閉ざしていたようだ。


「僕ら、ダンジョンの偵察パーティーだから大丈夫」


 ディートリヒがシルヴィオの後ろから顔を出して言うと、門兵は彼の顔を見てぎょっとした。


「ディートリヒ様!?」


 門兵は領主が雇っている兵隊だ。領主のお抱え魔法使いであるディートリヒは上司に当たるのだろう。


 二人の門兵は途端にピシッと姿勢を正し、敬礼した。


「いつもお疲れ様。ちなみにすぐ外の魔物の種類は?」


「スライムとニードルワームです。ただ、数がとても多いです」


 ディートリヒの言葉に、門兵は簡潔に答える。


 スライムもニードルワームも討伐すること自体は子供でもできる弱い魔物だ。ただ、数が多いとなるとやっかいではある。


「なるほど。そのくらいなら大丈夫でしょう」


「ああ。とりあえず外に出ないことにはどうしようもないしな」


 ディートリヒにシルヴィオが同意する。


「わかりました。お戻りの際には、門を五回叩いてもらえたら開けますので」


「五回ね。了解」


 門兵の言葉に、俺たちは頷く。


 そして、門が開いたらすぐ出られる位置に移動する。


 冒険者ギルドで軽く打ち合わせをした時に決めた並びになる。


 先頭はシルヴィオ、その次に俺。イリーネとティアナが続き、殿がディートリヒだ。


 偵察なので、なるべく戦闘は避ける方向で進むらしいが、万が一戦闘になったらこのフォーメーションが一番効率良く戦えるのだ。


 シルヴィオの後ろとはいえ、俺も前衛として戦わなければならない。


 五人のパーティーははじめてなので、連携がうまくとれるか少し不安ではある。


 緊張で早くなる鼓動を深呼吸して落ち着かせる。


 先頭のシルヴィオが後ろを振り向いて、俺たちの顔を見た。


「準備はいいか?」


 俺は頷いて、いつでも抜けるように腰に差してあるショートソードに手をかけた。


「開けてくれ」


 シルヴィオの言葉に門兵は閂を外し、閉ざされていた門を開けた。


 その瞬間、門に張り付いていたらしきスライムが上から落ちてきた。


 しかし、それはすぐにシルヴィオの剣によって一閃された。


 素早く門をくぐっていくシルヴィオに続いて俺も外に出る。


 門兵の言葉通り、門の外には見たことがないほどのスライムの大群がいた。


 足を取られると困るので、足下にいるスライムをショートソードで払うように倒していく。


 門の前にいるスライムを一蹴して、全員が外に出る。


「皆様、くれぐれもお気をつけて」


 そう言って、門兵はスライムが入ってくる前に扉を閉める。その向こうで閂を再びはめる音がして、門は閉ざされた。


「では、いくぞ」


 シルヴィオの合図で俺たちは駆けだした。


 数ばかりいるスライムに構っていては先に進めない。邪魔なスライムは走りながら払って、先に進む。


 シルヴィオから離れないようにしながらも、俺は周囲を警戒する。


 後ろからは三つの足音が聞こえてくるので、後続も付いてきているのがわかる。


 スライムとニードルワームの大群を抜けると、ホーンラット、ホーンラビットがちらほらと見える。


 ホーンラットもホーンラビットも比較的弱い魔物だが、いつもならこんなに数がいない上に、生息地はもっと町から離れた場所だ。


 スライムやニードルワームと違い、それらは襲いかかってくるため、倒していかなきゃいけないのがなかなかに手間だ。


 五人もいるのでそれぞれ手分けをすればそれほど時間もかからないが、そのたびに足を止めざるを得ない。


 ダンジョンまではそう遠くないはずなのに、まだ半分も来ていなかった。


「もう! しつこい!」


 草むらから飛び出してきたホーンラビットをティアナが一撃する。普段は弓を使うティアナだが数が多いため、今日は大きめのナイフで仕留めている。


「数が多いとねぇ……」


 殿にいるディートリヒは、前衛があらかた対処するとはいえ、それでも討ち漏らしがあるためそれを対処しなければならない。


 「よっ」と軽いかけ声と共にディートリヒは杖を振る。すると、ホーンラットの首がスッパリと切れた。


 あれが魔法なのか……。


 ディートリヒが戦うところをはじめて見た。魔法使いもこれまで会ったことがなかったので、魔法とはどういうものかよくわからなかったが、刃もついてないおそらく木製だろう杖を振っただけで魔物が切れたところを見ると、なにかの魔法を使っているのだと思う。


 いろいろと気になるが、今は話している時間はないので、とにかくシルヴィオの後を追う。


 草原の中にある大きな岩のところでシルヴィオは足を止めた。


 シルヴィオの背丈ほどある岩陰に隠れるようにして全員が集まる。ここで一度止まるのは打ち合わせ通りだった。

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