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第六十四話「シルヴィオの過去」

甘沢林檎先生が描く


『冒険者の服、作ります! ~異世界ではじめるデザイナー生活~』の、


第2巻がいよいよ、本日4月12日より全国の書店で発売です!


【 コミカライズ 】が大きく目立つ帯を目指してくださいね♪

「今でこそソロでやってるけど、駆け出しの頃は仲良い奴もいたんだよ。相棒って感じのね」


 相棒とは、本当に信頼している相手にしか使わない言葉だ。何でも一人でやっているイメージのシルヴィオにそんな相手がいたなんて私は純粋に驚いてしまった。


「あ、びっくりしてるね」


「まあ……」


「あのスレッスレにすれまくったシルヴィオからは想像できないよね~。ま、そいつがいなくなったからこそすれたわけだけど」


「え、いなくなった……?」


「うーん、いなくなったっていうのは語弊があるか。正確には冒険者を辞めざるを得なくなったのね」


「辞めざるを得ないって、ケガをしたとかですか?」


「そう、正解~! ただ、それは防げたはずだったんだよ。そいつもシルヴィオも……」


 シルヴィオとその相棒は、冒険者登録の時期が近く同い年。口数が少なく人見知りだったシルヴィオに、相棒の方から話しかけてきて何かと行動を共にするようになったらしい。


 物怖じせず、社交的な相棒だったようだ。


 二人は着実に依頼をこなしていった。そして、Cランクにランクアップ目前で、ランクアップに必要なパーティー依頼を受ける必要が出てきた。


 二人でもパーティーとしては成り立つ。しかし、その時はちょうど三人以上でなければ受けられない依頼ばかりしかなかったという。


 社交的な相棒は、同じくランクアップ目前の冒険者を誘い、四人でパーティー依頼を受けた。


 それがいけなかった。


 この時受けたパーティー依頼は、四人で行うもの。Dランクとしては難易度が高く、ただその分報酬も高かった。


 シルヴィオも、そして相棒も慢心があったのかもしれない。



 それは野営中に起こった。


 シルヴィオは異変に気付いて飛び起きた。慌てて相棒を起こす。


 交代で見張りをしながら、仮眠を取る手はずだったが、その見張り役がいない。正確には、パーティーを組んだ二人のうちの一人の姿がなかった。


 残る一人は見張りなのにぐーすか寝ていて、起こして聞いてみるが、わからないと言う。


 どうやらそいつは一服盛られたらしい。


 しかも、異変はそれだけではない。自分たちの持ち物の中から、お金やポーションなどのアイテム、道中で狩った魔物の討伐証明がごっそりなくなっていた。


 三人ともである。


 いなくなった奴が盗んでいったらしい。どうやら武器や防具などの売ったら足がつきそうなものは残っているあたりずる賢く、常習犯のようだった。


 さらに、不運は続く。


 三人は魔物の群れに囲まれていた。その時は気付かなかったが、そう簡単に魔物が集まるとは考えにくい。おそらく盗人が魔物をおびき寄せるアイテムを使っていたらしい。


 囲まれては戦うしかない。


 シルヴィオと相棒、そしてもう一人の冒険者は戦った。


 しかし、臨時のパーティーメンバーである冒険者は恐れをなして逃げ出した。シルヴィオが静止するもパニック状態の彼は、聞かずに飛び出してしまった。


 まだ群れに囲まれた状態で出ていったら格好の的だ。予想した通り、彼は魔物によって命を落とした。


 冒険者は自己責任の職業だ。その選択をした彼を可哀想に思うものの、自分を律することができなかったのだから仕方がない結果だ。


 シルヴィオも相棒も憐憫の思いはあるが、そうも言っていられない。気を抜くと次は我が身だ。


 背中合わせに魔物と戦い続ける。


 けれど、数も多く、シルヴィオたちは疲労もしてくる。それを回復してくれるポーションは手元にない。


 そして、ふっと気が緩んだ瞬間だった。


 相棒が足をやられた。


 痛みに歯を食いしばりつつ戦い続けるが、魔物たちはダメージの大きい相棒を狙いはじめた。


 相棒は、シルヴィオに自分を置いて逃げろと言った。


 囮になるから、その隙に逃げろ、と。


 これにシルヴィオは怒った。そんなことできないと。


 でも、このままでは埒があかないこともわかっていた。


 相棒の負傷した足がまた狙われ、このままでは危ない状態になった時、シルヴィオは決死の覚悟で群れの中に飛び込んだ。


 狙うは群れのボス。


 その攻撃は功を奏して、シルヴィオはボスを倒した。しかし、左腕を負傷。無傷とはいかなかった。


 ボスがやられたことで、群れは瓦解した。


 残党をどうにか追い払ったものの、シルヴィオも相棒も傷は大きい。


 這々の体で町に戻った二人は、冒険者ギルドに預けていたお金でポーションを買い、回復。


 シルヴィオはある程度治ったが、相棒の方は傷が深く、さらに負傷から時間が経ってしまったことにより冒険者としては致命的な傷を負ってしまった。


 結果、相棒は冒険者を続けられなくなり引退。田舎に帰った。


 そして、シルヴィオは――



「元々人見知りだったのに拍車をかけて人間嫌いになったとさ。チャンチャン」


 軽い言葉で締めくくったけど、どう考えても重いよね……!?


 全然チャンチャンって感じじゃないんだけど……。


「その盗人のパーティーメンバーは捕まったんですか?」


「いいや~。冒険者は自己責任~。足がつかないものばっかり盗まれたっていうし、証明しようがない。もしかしたらシルヴィオは個人的に報復しているかもしれないけどね~」


 それは仕返ししたくもなるだろう。


 ディートリヒは話し疲れてのどが渇いたのか、手つかずのまま冷めてしまった私のカッフェーをごくごくと飲んでいる。


「……それで、なんで私にシルヴィオさんの昔の話を? いいんですか?」


「あの口下手シルヴィオが話すわけないし、いいのいいの~。なんで話したかの理由だっけ? それはね、マリウスくんがかつての相棒にすごく似てるんだよ」


「マリウスが?」


「どことなくね。赤毛で元気で社交的なところはそっくり~。マリウスくんの方がしっかりしてるけど。だから気になるんだろうね。シルヴィオが新人冒険者に教えてるって聞いて驚いたけど、マリウスくんを見て納得しちゃった」


 シルヴィオがマリウスにいろいろアドバイスしているのはそういう理由があったのか。


「シルヴィオさんはマリウスを相棒にしたいんですかね?」


「うーん、それはないんじゃない? シルヴィオは今のスタイルでAランクまでいったし、マリウスくんとはランク差があるしね。まあ、いつか肩を並べて戦うくらいに強くなってほしいとは思ってそうだけど」


「なるほど……」


「でね、ミナちゃんはその盗人のパーティーメンバーとそっくりなんだ~」


「え!?」


 私は予想外の言葉に唖然とする。


「ってこれは言い過ぎか。ミナちゃんと似てるところは、髪が長いところと身ぎれいなところくらいかなぁ。でもシルヴィオには相棒によく似た新人冒険者をいいように使ってるように見えたのかもね、はじめは」


「ええ~……」


 たしかに私はマリウスにお世話になっている自覚はあるけど、いいようには使ってないし……。


 マリウスがいないとスライムさえ倒せなかったし、こちらの世界のことは全くわからなかったし。


 でも、よくよく考えたら、出会った頃のシルヴィオは妙にとげとげしかったような……。


 元々そういう人だと思ってたけど、もしかしたら私にだけああだったの!?


「ま、今は信用してると思うよ~。僕に話したり、自分の装備を注文するくらいだしね。昔の一件があってシルヴィオの警戒心はめちゃくちゃ強くなったから、信用していない人に装備を頼むことはまずないし」


「そうなんですね。だったらいいかな……?」


 警戒されていたことは少し悲しい。何気に結構ショックだ。


 過去のことだけど、嫌われていたのかもしれないと思うと、胸が疼いた。


 でも今は違うというなら、いい。


 自分の力で信頼を勝ち取ったと思えば、気分も少し上がる。


「そんなこんなで、結構気難しいやつだけど、シルヴィオと仲良くしてやってよ」


「いいですけど、シルヴィオさん、ディートリヒさんに言われたくなさそうな気がします」


「あはは、そうかも~」


 ディートリヒはひとしきり笑うと、「さて」といって椅子から立ち上がった。


「僕はそろそろ帰るよ~。今度はちゃんと鍵をかけとくんだよ」


「そうでした……!」


「ふふふ、じゃあね~」


 そう言って、ディートリヒは帰っていく。私は彼が帰った後、しっかりと玄関の鍵をかけた。


 そして、作業を再開しようと食堂に戻る。


 ふと、ディートリヒは何をしに来たのだろう? と頭を過ぎったが、まあいいかと思って、私は続きにとりかかるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 女性が、しかも、冒険者でもない女性が、身ぎれいにもしないで生活してるって スラム位だよね 宿になんか、止まれないレベルって事 髪が長くて清潔にしてるだけで同じにみるなら、仕事な…
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