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第五十一話「ブレザーとプリーツスカート」

 ティアナとイリーネの服作りがはじまった。


 まずはデザインから。二人一遍に受けるのは初めてのことだけど、これはこれでやりやすくもある。なぜなら二人のデザインに共通性を持たせることができるからだ。


 見た感じ二人は同じパーティと言うより、相棒と言った方が当てはまっていると思う。冒険者としてのタイプもそして性格もお互いが補っている感じだ。


 だから服のデザインも違ってくるけど、だからこそ共通したテイストを取り入れたいなと私は漠然と考えていた。


 宿屋アンゼルマの倉庫兼アトリエで、エルナが簡単なスカートを作るのを見守りながら、私はデザイン帳に二人のデザインを描いていく。


 冒険者としてフィールドワークをすることもあれば、護衛依頼も多いと言っていた。


 冒険者は圧倒的に男性が多い。その中で女性二人組の冒険者は珍しいのだろう。しかし、需要は多い。女性が護衛を頼む場合、男性より女性の方が精神的にハードルは低い。


 冒険者の中にはこう、粗野な人もいるからね……。


 護衛を依頼したのに、冒険者が恐いのは本末転倒だ。その点、若くて明るいティアナとイリーネは、護衛として向いているのである。


 力では叶わなくても、そういった依頼を熟すことで二人は着実に冒険者ランクを上げている。


 もちろん冒険者の腕もいいらしい。前衛を槍のイリーネが、後衛を弓のティアナが。二人の連携はなかなかのもののようだ。


 その二人にぴったりな服かぁ……。


 動きやすくて、なおかつ護衛依頼を受ける二人に似合うもの。


 ペンを指でくるくると回しながら、私は考える。


 護衛って言ったら制服かなぁ。学生服って丈夫だし、意外と動きやすいんだよね。


 女の子の制服って可愛いの多いし、テイストを取り入れたら結構いいかもしれない!


 パッと頭に思い浮かんがデザインを私はデザイン帳に書き起こす。


 まずティアナは、弓を使うからなるべく弓が引っかからないようなものがいい。ベストタイプのブレザーを基調にして、ティアナに合うようなデザインに落とし込んでいく。


 上はシャツにベスト。ベストは襟がないダブルベストにして、ボタンはあまり多く付けないようにする。ティアナはあまりバストがあるタイプじゃないけど、ウエストは細いしスタイルがいいので、背中をレースアップにしてもいいかもしれない。


 弓を使うためか、ティアナは普段からグローブをしている。なので、腕はロンググローブをしやすいように袖のボリュームは抑えめで。


 下はやっぱりプリーツスカートかな。フレアスカートより動きやすいし。靴はブーツだから、タイツかレギンスにすれば下着も見えない。


 ティアナのデザインが書き上がったところで、次はイリーネだ。


 彼女はブレザーのジャケットのようなデザインにしようと思う。前衛ということもあって、なるべく防御できる服がいいと思ったのだ。


 上はシャツの上に、ティアナと似たデザインのダブルのジャケット。こちらも背中をレースアップに。手にはショートグローブ。


 下はティアナ同様プリーツスカート。ただ、イリーネの方が丈は少し長めにした。


 並んだ二人のデザイン画を眺める。


 うーん。なんか普通だ……。


 ブレザーっぽいデザインにしたからなのか。何か足りない気がする。


 素案だからこれからブラッシュアップすればいいだけなんだけど……。


「うーん……」


 声に出して唸っているとエルナが気になったのか横から覗き込んでくる。


「わぁ! 可愛い!」


 デザイン画を見て、エルナが目をキラキラとさせた。


「そう?」


「このスカートのデザイン珍しいね!」


「プリーツスカートっていうんだ」


「プリーツスカート……」


「普通のスカートより布を多く使うから贅沢だけど、すごく動きやすいんだよ」


「へぇ~!」


 やはり同性の服の方が興味が大きいのだろう。私もレディースの方がやっぱり作るの好きだし。


 一般的に女性の方がファッション好きな人も多いし、将来的に作る機会も多いだろう。


 マリウスの服を作った時とは、エルナの食いつき方が違っていた。


「あと上はブレザーっていう服をモチーフにしてるんだ。私が前いたところでは学校の制服によく使われたの」


「学校って勉強をするところだよね?」


「そうそう」


「制服って同じ服着るの?」


「そういう学校が多かったかな。服が自由な学校もあったけどね」


「こんな服が着れるなんてやっぱりお金持ちじゃないと行けないんだね……!」


 こちらの世界の学校制度がどうなっているかはわからないが、エルナの状況を考えると、学校は富裕層が通うものなのかもしれない。


 とはいえ、こっちの世界の学校に制服があるかわからないから、こういうものがあったよ程度にエルナが思ってくれたらいいかな。


「それで、ミナお姉ちゃんは何か悩んでたの?」


「いやぁ、何か足りない気がしてね」


「足りない? こんなに可愛いのに……」


 エルナはデザイン画から顔を上げて不思議そうに首を傾げた。


 なんとなくまだしっくりきてないんだよね。


 ひとまず本人にデザイン画を見せてから、細かいところを詰めようかな。本人たちの希望もあると思うし。


「さて、とりあえずデザインを考えるのは終わり! スカートはできてる?」


 デザイン画をパタンと閉じて、エルナの方に体を向ける。途端にエルナはハッとしたように、スカートを持ち上げた。


「あともうちょっと!」


 見ると確かにあと少しだった。慌てたように再開するエルナを微笑ましく見ながら、私も日課となりつつあるミサンガ作りに取りかかるのだった。


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