困った時は相談するのが吉
「......困った」
今思っている事が口からこぼれ出た。調べた限りでは森の浅い場所でも魔物と呼ばれる害獣の類が出るので、 単独ではなく 集団 で行くことを推奨していた。
もちろん自身に戦闘経験も師匠込みだがある。だがソロでは経験が無いのだから、注意事項としてわざわざ載せてあった事を破る必然を感じない。
しかし、パーティーが組めないと仕事が出来ないのでは生活費を稼げない。どうしたものか?
いや、寧ろパーティーを組んだとして依頼書のあった薬草採取だけでは人数で分配する分稼ぎが減るのではなかろうか?10等級の冒険者とは一体どうやって稼いで生きているのか......。
解らない。暫く考えてみたが解らないものは解らないので聞いてみる事にした。
「・・・というような事なのですが?」
今日も何故か飲んでいた強面の冒険者に酒を都合して聞いてみた。
「なんだ、そんな事かよ」
「そんな事なんですが、解らないもので」
「まず薬草採取だが、お前さんの言う通りそれだけを受けてれば当然食ってけるわけねえよ。よく見りゃわかるが青色の縁枠が書いてある依頼書は常駐依頼って言ってな、何時でも幾らでも受注できる代わりに依頼料は安い」
「そのようですね」
一株分を採取してきて銅貨1枚だ。それだけをやっていると食べていけないだろう。
「だから基本稼ぐなら常駐以外の依頼か魔物素材の売買が基本になるんだよ、もうこの時間にゃ10等級当たりの依頼は無いだろうがな。常設依頼なんざ片手間にやる小遣い稼ぎだぜ」
「というと、常駐以外の依頼か魔物素材の売買と並行して薬草採取なども行われていると?」
少ない稼ぎも複数で補っているという事だろうか、色々大変そうだな。
「しかし、パーティーの募集は今の所張り出していませんから結局ソロで活動するしかないのでは?」
「時期的に募集時期とずれちまってるからな、10等級ともなるとなおさらだな」
「結局冒険者としては活動していけない事になりますが」
ソロで森に入るという危険を伴う選択肢しか残されていないのでは、運が少し悪いだけで死体になる可能性がある。冒険者が荒くれ家業だとしてもわざわざ危険を増やすのはどうなのか。
「まあ、街中の依頼ってのも無い訳じゃないから朝早くから依頼を探すってのが一つ。もう一つは募集が無けりゃ自分で募集してみればいいだろうよ」
「自分で、ですか。しかし相当時間がかかるのでは?」
募集が無い状態なのに、こちらから募集を掛けても新規10等級を待つ形にならないだろうか。
「まあそりゃそうなんだがな、そこはお嬢ちゃんが神官だってのが助けになるな」
「助けに?」
「今パーティーを組んでる連中でも必ずしも神官を連れてるってわけじゃないからな、嫌な言い方だがポーション代わりにメンバーに欲しいと思うやついるだろうし。ぶっちゃけ殺られて欠員ってのも無い訳じゃない」
「そんなものですか」
「バランスのいいパーティーは当然好まれるが、必ずしも良い面子が組めるなんてこたーねーからな」
「でもそれだと不足分を募集してたりするんじゃないですか、募集板で」
「それはさっき言ったろ、ポーションで代わりが効くからな。それで十分って奴もいるし、10等級だと術もそれこそポーションより使い勝手が悪いとか言う奴もいる。実力何て人それぞれなんだがな」
なんにせよパーティーを組むには自分から募集してみるのがいいようだ。
「参考になりました、ちなみにパーティー募集の手続きは受付に話せば?」
「ああ、言えば俺より親切丁寧に教えてくれるぜ」
くはは、と意地悪そうに笑いながら男は酒を喉に流し込んだ。