冒険を始めるなら前準備を
「魔女の箒亭」というのが私が最初の拠点に選んだ宿屋だ。
宿屋の質で言えば中級辺りになるだろう宿屋。渡された支度金では一ヶ月もすると底を付く予定。
実際にはもっと安価な宿もあるが、紹介した冒険者からは女の冒険者であればその辺りの方が安心できるとの事。安宿は下手をすると個室が無く大部屋という事もままあるからだ。
私が戦士職で腕力が有ればそれでも多少の危険になるそうだが、女神官となると危険度がそれの比ではないからと勧められた。
未だ正式採用でもない10級な事を考えれば身の安全は確保するべき重要事項だろう。
取りあえず10日分の部屋の予約を入れてから街に繰り出すことにした。
とはいえ向かったのはギルドだったけども。
昨日教えて貰った通りにギルドの2階でまずは調べものだ。2階に上がって見ると人は殆ど居らずかなり空いている様子だった。利用率が低い程大した情報を得られないのではないかとも思ったが、込み過ぎていても困るので良かったとしておいた。
取り敢えず下調べしたのは、近隣の森についてだった。情報提供をしてくれた強面の冒険者からは初心者はとにかく一番近い森の浅い所だと断言されたからだ。
生息するモンスターや動物の類と薬草類などについてメモを取っていく。
近隣の魔物・動植物の分布が書かれた冊子の他に、基本の基本パーティーの組み方のアドバイス。冒険に出かけるときの装備に関するアドバイスなど余り気にしていなかった情報も集める事ができた。
パーティーについては、同じ等級で組むメリットとデメリットやら編成する職業の例などが載っていた。尚、神官職は後衛に辺り単独行動は厳禁であると記されている。
師匠の事を考えるが神官でも戦えるのではないのか?と疑問が抱くが世間一般では、回復の奇跡を行使するのが仕事のようだ。
とはいえ今の所はパーティーを組もうにも何も当てがない。
冒険の装備については今の自分に足りて居ない物を確認できた。例えば薬草などの採取に必要な袋や魔物の討伐部位及び素材の回収用の袋など何も持っていなかったからだ。
当分は日帰りに必要な物だけだが、遠出などがあれば宿泊する為の装備が要る様だ。まあそれを揃えるだけの稼ぎがなければそもそも日帰り以外の選択肢が出ないわけだが。
ある程度の情報をメモをし終わったので1階の依頼板に足を運んでみた。
次に確認しておきたかった情報は依頼の内容だ。とは言え張り出されている依頼書は少ない。
ギルド内に居る人の数を見るに、朝早くから依頼を受ける人が多くまだ張ってあるのは残り物という事だろう。この辺りも慣れないと"美味しい仕事"を逃してしまうのかもしれない。
今受けれるのは常設依頼と説明冊子に書かれていた薬草採取ぐらいだろう。非常に単価が安いのだが、まずは肩慣らしも必要だろう。何事も慣れが必要なのだから。
ついでにパーティー募集の板も見たが、10等級と組んでくれそうな募集は張り出されて無かった。