表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

無力な自分

作者: 契聖 朔冬

イジメ描写ありです。苦手な方は気をつけて下さい。

 どうして俺には何も出来ないんだろうか。

 後悔するぐらなら殴りかかれば良かったのに。

 後悔すると解っていて連れ出す事しか出来ない自分。

 無力すぎる−−−………。





 葵先輩と知り合って数週間経ち、更に葵先輩を虐めてる現場に行って数週間が経った。

 四月も終わり、五月の真ん中。

 じめじめとした暑さに俺は隣の人物−−−葵先輩を見た。

 葵先輩は黒く長い髪をポニーテールにして机に突っ伏して寝ている。

 寝返りをうち、顔を俺の方に向ける葵先輩。

 長い睫毛に淡いピンクでふっくらとふくらんだ唇。白い肌には暑さからか、汗が出ていてうなじを伝う。

 俺は慌て首を横に振った。


「襲いたいって思うなんて……」


 ぽつりと呟いた言葉と共に、葵先輩は小さく欠伸をしながら起きた。

 まだ眠たいのか、目をこすっている。


「おはよぉー……」


 眠たそうな声で挨拶する葵先輩に優しく微笑みながら

「おはようございます」と言った。

 葵先輩は携帯で時間を確認すると、お弁当を持ってどこかに行ってしまった。

 表情が暗かったのは気のせいだろうか?

 俺がどうしたものかと考えていると、翠先生が現れた。


「時間が経っても葵先輩が帰ってこない場合は、葵の教室まで行って下さいね」


 俺は首を傾げる。


「どうしてですか?」


 冷たい瞳で俺を見据え、低い声で囁く翠先生。


「お忘れですか?先日、起こった事を」


 その声に俺は背筋が凍った。


「覚えています」


 翠先生は微笑むが、目が笑っていない。


「お願いしますね」


 翠先生はそれだけ言うと出て行った。

 俺は翠先生が出て行きながら呟いた言葉を聞き、怒っていると確信した。


−−理由も知らない子供がふさげた真似をしてくれますね……。


 そう、翠先生は呟いた。

 俺は課題をしながら葵先輩の事を考える。

 あの先輩は大丈夫なのだろうか。なんでも溜め込んで我慢して、泣かないでいる。無理して笑い、変な意地をはって……。


「いつか壊れなきゃいいけどな……」


 俺がそう呟いて課題に手をつけた。

 数十分しても戻ってこない葵先輩に、嫌な予感がした。

 もしかしたらと思い、俺は慌て葵先輩の教室に向かう。

 教室に着くと笑い声と悲鳴が聞こえた。

 その悲鳴は明らかに葵先輩のもので、俺は教室の扉を開ける。


「っ…ひっ……止めてっ……!!」

「あははっ!水無月は遊び人なんだろ?」

「ちが…ぅ……ゃ……!」


 目の前で繰り広げられている光景に、俺はさらに唖然とする。

 葵先輩が押し倒され、制服を乱されていた。


「!!」


 葵先輩は俺と目が合った瞬間、涙を溜めた瞳を見開き、固まった。

 そして口パクで

「助けて」と言った。


「葵先輩に何しているんですか……」


 俺の言葉に、男子生徒が笑う。


「水無月が遊び人だから襲ってるだけだ。悪いか?」


 その言葉に、俺は男子生徒を睨みつけた。


「葵先輩の事情も知らないくせになに言ってるんですか」

「はっ!男性恐怖症なんて嘘だろ」


 その言葉に、俺は言い返す。


「葵先輩には証明曙がありますから、嘘ではありませんよ」


 男子生徒は悔しそうに唇を噛み、そして無理矢理、葵先輩にキスをした。

 葵先輩が抵抗する前に、彼岸先輩が男子生徒を蹴っ飛ばした。

 男子生徒は壁にぶつかる。


「お前らがこんなことするから葵が怯えるんだろうが」


 黒髪をオールバックにし、前髪を数本たらしている目つきが鋭い先輩−−−黒月先輩がため息をつく。


「鬼壱、暴れるか…」


 赤髪でざんばら髪でこちらも目が鋭い先輩、汐涙セキルイ先輩はニヤリッと笑う。


「ったりまえだ。いいかげん、腹立ってたんだよ」


 俺は葵先輩に近寄りブレザーをかけた。

 葵先輩は俺に抱きつきながら

「恐かった」と呟いたのを聞いて悔しかった。

 俺はなにもできていない。好きな人さえ護れていない……。


「遥君…ありがとう……」


 葵先輩の嬉しそうな笑顔に、俺は胸の奥が痛んだ。


「遥、葵を連れて保健室に行け」


 彼岸先輩の言葉に頷き、俺は葵先輩を姫様抱っこして保健室に連れていった。





 葵先輩はひたすら怯えて口を開こうとしなかった。

 だけどゆっくりと喋り始める。


「教室に行ったらね、『水無月さんは先生騙して同居してるんだよね』って聞かれて、私が違うって言ったら髪の毛引っ張られたり叩かれたりされて……後…コレ……」


 葵先輩は襟元を下に引っ張りうなじを見せる。

 そこには赤い痕がついていた。


「…遥君…恐かった……!」


 半泣きになりながら俺に抱きついた。


「わ…たし…男なんて……嫌い……!大嫌い……!!遥君…わかん……な……やだぁ…」


 葵先輩の言葉を聞きながら俺は、ただ無言のまま葵先輩の背中を撫で続けた……。

 何もできない自分を罵りながら……。




 なんて無力なんだろうか。

 なにもできない。

 好きな人が傷つき、涙を堪えているのに 俺はなにも言えない。

 無力過ぎる……。

 葵先輩。

 俺は貴女になにもしてあげれません。

 優しい言葉もかけれません。

 貴女が傷ついているのに俺は助けることもできません。

 こんな無力な自分を赦してください。



 なにもできない自分は、愚かな自分は、

無力な自分は―――



 貴女の傍にいていいですか?



 俺は無力な自分を罵りながらでも



 俺は貴女の傍に−−−…………。


契聖 朔冬です。この度は『無力な自分』を読んでいただき、ありがとうございます。サイトにアップしていた小説を、もっと多くの方に読んでいただきたかったので編集をして、書き上げてみました。最後の方が変だと思うのですが…どうでしょうか…?とりあえず、気に入って下されば幸です。次はこの二人のお花見話しでも編集して、書き上げてみたいです。それでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 まず気になったのが「−」でしょうかダッシュでやった方がいいと思います。 先輩がなぜ同じ教室にいたのか、いきなり現れた先輩について、数週間前から知っていてこの時勇気を…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ