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やりたい事をやる為に  作者: 千月 景葉
第一章 黒き森
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101. 掴めない妹

お読みくださりありがとうございます。

遅くなりすみません!

「美的感覚……色の組み合わせをクロエが考えた?……そんな筈……」

 と又呆然と部屋を見回すオーウェン。

 ミラベルがフフッと笑い、部屋のテーブルを擦り

「ビックリなさって当たり前ですよ。未だホントに歩き始めたばかりの時、あの子がこの優しい薄紅の格子柄が良いって、つたない言葉で言ったんです。で、この格子柄を基本にして、2人の部屋だから反発しないこの2色を互いの差し色にしたら、きっと女の子らしい色合いの部屋になるよって。後、家具はこの色が映えるように白で纏める事もあの子の提案です。……母も一緒に居たので、もし信じられなければ聞いてくださっても構いませんわ。母もあの時感嘆していましたから……」

 と部屋を見渡しウンと満足そうに頷く。

 そしてオーウェンを振り向き

「あの子ったらその後何て言ったと思います?

「ミラベルお姉ちゃんがこの部屋に立っている姿を考えたの。お姉ちゃんに似合う部屋にしたかったの」

 って、あの子言ってくれたんです。

 ……未だ1才の妹なのに、いつも周りの人の事ばかり考える。それがクロエなんです。無理してるんじゃなく、ホントに自然にそんな気遣いを常にあの子はしてくれる……。たまに焦れったくてもっと甘えてっ!って言っちゃう位、謙虚で優しくて……強い子なんです。

 ……あの子を愛さずにはいられません。あの子の為なら、アタシは何でも出来ますわ。あんな素敵な妹……きっとあの子だけだわ……」

 と最後は自身で噛み締めるように呟く。

 オーウェンは眩しいものを見るように目を細め

「本当にあの子を……クロエを大事にしてくれているんだね。ミラベル殿が……羨ましいな。僕もあの子がどんな子か益々知りたくなってきました。

 滞在させていただく間、あの子と親しくなれれば良いな。クロエはとても人懐っこそうに思えたけれど……」

 と彼女に質問する。

 ミラベルが答えようとすると、コリンが

「クロエはとーっても人懐っこいですよ!家族皆が僕に怒った時も、クロエは寄ってきて笑ってくれる位だもん!話を一生懸命に聞いてくれるんです。

 ……クロエは絶対に怒らないし優しいの。だから僕と違って人見知りなんかしませんよ!」

 とにっこり笑う。

 オーウェンはコリンから意外なことを聞いたとばかりに見つめ

「さっきも聞いたけど……本当にコリンが人見知りや駄々っ子だったのかい?

 確か、クロエのお陰で変わったって……何かあったの?」

 と聞く。

 コリンはモジモジしながら、だが後悔を滲ませた表情で

「僕、少し前まで……未だ歩けないクロエをいじめてたんです。甘やかされてたから、後から生まれたクロエが何だか僕より大事にされてるって、憎らしかったの。でも僕がクロエをいじめると、又皆がクロエを守って僕を叱る。それがとても悔しかった。

 でもある日、家族皆から本当にめちゃくちゃ叱られて、自分でも流石に不味いって……でも急に良い子になんてなれないし、何か皆の言う通りにするのも腹が立つしって考えてて。

 その後直ぐ僕、又とんでもない失敗しちゃって。余りに酷かったし、おまけに僕がその酷い失敗を謝らないで茶化したから、誰も口を利いてくれなくなったんです。

 そしたらその失敗の後始末をして、疲れて寝てしまったミラベル姉ちゃんを優しく撫でてたクロエが、そっと話をしてくれたの。僕の話を先ず聞いてくれて……。上手く言えない時は質問してくれて。

 でね最後に優しく、でもキッパリ母さんと姉ちゃんに謝らなきゃ駄目って言ってくれたんです。謝ったら大丈夫だけど、謝らないとこのままだよ、さびしいのに良いの?って。

 何だかその優しい静かな声が、僕には凄く響いて。すぐにクロエに返事が出来なかった……。だけどあの子の言う通りだって思った。

 だからその後直ぐ謝ったら、本当にクロエの言う通りになったんです。凄くホッとしたの。クロエの言う通りにして良かったなって、それからクロエを見る目が変わり始めました。

 でもその後クロエが倒れて……。あんな怖いこと無い!クロエを失うなんて、考えられない。今までで一番怖かった。思い出したくもない!でも、そうなって初めてクロエは大事な妹だって身に染みてわかったんです。

 だからクロエが回復してからは、クロエのお兄ちゃんとして恥ずかしくないよう頑張るんだって決めてるんです!だってクロエに駄目なお兄ちゃんって思われたくないし、頼りにして貰いたいから!

 でも、クロエのが賢いから……ホントに大変です……はぁ」

 と肩を落とす。

 オーウェンは僅か3才のコリンの独白を聞いて、彼の優秀さに改めて感嘆すると共に、益々クロエを掴めなくなってしまった。

(一体僕の妹って……この兄弟からここまで一目置かれてるなんて、どんな子なんだ?!早く色んな話をしてみたい……あの子をもっと知りたい)

 オーウェンが様々なクロエの話を聞いて考え込んでいると、その姿を見ていたライリーが

「さぁオーウェン様。もう家の探訪はこれくらいにして、リビングに行きませんか?先ほどお教えした遊びをしましょう。きっと楽しんでもらえます!

 ……内緒ですけどこの遊び、ディルク先生も大層気に入られて、父とものすごい勝負をなさった位なんです。ああ、テオ殿はディルク先生に手酷くやられてました。父とは最初良い勝負だったのですが、父が少々興が乗り始めるとこれ又コテンパンに……。でも楽しんでおられましたよ。

 ね、やりませんか?」

 とオーウェンに聞く。

 オーウェンはディルクも気に入ったと言う言葉に牽かれ

「へえ!先生がそんなに?是非やってみたいな!早速教えてくれるかい?」

 と乗り気になった。

 ライリーはにっこり笑って頷き

「じゃ、早速リビングへ。あ、そうだ!遊びは3種類あります。一番基礎になる遊び。それから応用する遊びが2つ。

 正直遊び始めると時間を忘れます。ご注意を。

 そしてこの遊びには秘密があるんです。遊びをお教えした後で、秘密もお聞かせしますからね。楽しみにしていてください」

 といたずらっぽくウインクした。

 オーウェンは笑って頷き

「なんかワクワクしてきたよ。遊びなんて久しぶりだな!秘密も気になるし、何だかここへ来てからは僕は驚いてばかりだ!」

 と楽しそうに言った。

 ミラベルが嬉しそうに

「フフッ!これからですよ~。いっぱい楽しいことや不思議なこと、滞在中に体験してくださいね。

 まぁ一番不思議なのはクロエだけど」

 と笑い、コリンも

「うん、クロエが一番楽しくて一番不思議だよね~!クロエと居ると楽しいことばかりだもの、オーウェン様もいっぱい笑って楽しく過ごせますよ~!

 クロエってホントに笑いの女神様なんだから!」

 と両手を広げてオーウェンに力説した。

 オーウェンはフッと笑って

「笑いの女神様か……。僕も君達を見ていると本当にそう感じるよ。クロエの話をするとき、皆嬉しそうに笑ってるから……。良いな、そういうのって」

 と少し悲しげな笑みを一瞬浮かべた。

 コリンはそれを見逃さず、オーウェンの手を握り

「きっとオーウェン様もクロエとお喋りしたらそんな風に笑えます!でも今は遊びましょ?実はこれからする遊び、僕がいっちばん強いんだから!ホントですよ?さあ、行きましょー!」

 と元気良く彼を引っ張っていく。

 そんなコリンに引き摺られるようにして、オーウェンは女の子部屋から出ていき、ミラベルとライリーもその後に続いた。



 廊下を楽しそうに話しながらリビングに向かう子供たちを見てコレットは微笑み、モニカとアレクは楽し気なオーウェンを見て感動したように目を潤ませていた事を、勿論当の子供達は知るよしもない。



 リビングに着いた4人は、先ずオーウェンにじゃんけんぴょんから教える。

 じゃんけんぴょんの説明の際に必ずぶつかる疑問、『パーが何故グーに勝てる?』については、オーウェンもやはり「紙が石より強い筈無いじゃないか!」だった。

 皆に説き伏せられて、首をかしげながらもそういうものかと無理矢理納得した彼は、じゃんけんぴょんから中々の強さを見せる。が、天真爛漫なコリンと案外腹黒なライリーには少々翻弄された。

 オーウェンの飲み込みの早さを見て、早々に次の遊びに進む3人。

 次のあっち向いてヒョイも盛り上がり、オーウェンは何故自分が指し示された方向を向いてしまうのかと悔しがった。

 ライリーはそんなオーウェンに

「この遊びをやると先を読む力が付きますよ。後、騙し手も上手くなります。相手の呼吸を読んで、それを利用したりとか……。中々に奥深いです。それだけに手練になると勝負がなかなかつかないんですよ。先生は特に騙すのがお上手ですよ。でも先を読みすぎて、コリンには案外アッサリ負けて、暫く納得がいかなかったみたいでした。……まるで子供みたいでしょ?誰でも子供に戻れるのは、この遊びの魅力の一つですね。

 さて……では最後の遊びに移りますか。じゃあコリン、悪いけど出してくれないか?いつものアレ」

 と話し、コリンに指示をする。

 コリンは頷き

「うん!これが一番燃えるんだよね~!

 オーウェン様、覚悟してくださいね?3才の僕に負けるのは悔しいと思いますが、これ、僕大得意だし!」

 と玩具箱らしき木箱に頭を突っ込み、ゴソゴソ何かを探す。そして

「あった、あった~!」

 と嬉しそうに何かを持って振り向いた。

 コリンの手に握られていたのは、布で出来た片手剣と、木で作られた小さな、しかし精巧に作られている盾だった。

「剣と盾?これで戦いごっこでもするのかい?」

 と少し戸惑いの表情を浮かべるオーウェン。ライリーはフフッと笑い

「じゃあ、コリンとミラベル。やって見せて差し上げて。

 これは『叩いて被ってじゃんけんぴょん』って言うんですよ。

 ……盛り上がると、一番場が荒れますからね。

 じゃあ、やって!」

 と2人に合図した。

 オーウェンはコリンとミラベルが始めたその遊びの激しさに唖然とした。

「す、凄いね……、アア!ミラベルがやられた……。コリンがホントに強いんだ。

 これって……楽しそうだね。僕もやりたいな……ライリー、良いかい?」

 とライリーを挑戦的に見る。

 ライリーがニヤリと笑い

「受けてたちましょう、喜んで!……ああ、やはり3対0でミラベルが負けたか。

 何で勢いはあるのにミラベルは負けるのかな?やっぱりじゃんけんぴょんの弱さがここでも祟るんだ……」

 と妹弟を見ながら頷く。

 ミラベルが頭を抱え

「何で~!アタシ、クロエにも練習付き合って貰ってるのに~!最強のクロエにやってもらっても駄目なの~?!」

 と嘆くとコリンが

「アーッ!やっぱりクロエに頼んでたんだ!ズルいよ、2人で楽しむなんてさっ!僕も仲間に入れてよ、姉ちゃん!」

 とミラベルを指差して糾弾する。

 ミラベルがコリンをキッと睨み

「一番弱いのアタシだもの!特訓したって良いじゃない!絶対にアンタをコテンパンにやり込めるんだからーっ!

 アンタが居たら特訓になんないのっ!」

 と言い放つ。

 コリンがアカンベーをして

「幾らクロエに頼んで練習しても、姉ちゃんには僕勝てるもんね~!いつでもかかって来なさいっ!」

 と腕を組み、鼻息荒くふんぞり返る。

 ミラベルがそんなコリンを見て、歯軋りしながら

「ぐ、ぐやじい~!いつか見てろーっ!」

 とポケットのハンカチを取り出し噛み締めた。

 ライリーはそんな2人を宥めて場所を空けさせ、オーウェンにも定位置に着くように案内する。

 一通りの流れとルールをもう一度説明し、ゲームスタート。

 やはり最初はおずおずとやっていたオーウェンだったが、慣れてくると凄まじいスピードに変わり始めた。

 ライリーも負けじと応戦する。

「……ぴょん!よし!とおーっ!」

 とオーウェンが雄叫びを上げて剣を振り下ろすと、負けたライリーが

「……ぴょん!クッ!……だが、甘いっ!」

 と盾を素早く展開する。

 コリンとミラベルも大盛り上がりで、声を出して応援する。

 すると客間に居た護衛騎士のテオとシュナイダーもいつの間にかリビングにやって来て

「反応が速い!が、大振りだっ!惜しい!」

 とシュナイダーが言うと、テオも

「アッ!クソッ……上手い!防いだ!盾が速い!」

 と拳を握って、2人の勝負を楽しむ。

 しかしこの勝負はやはり慣れているライリーが勝った。

 悔しそうなオーウェンにライリーは再戦を申し出ると、彼は直ぐ様頷いた。

 やがて騎士のテオとシュナイダーも遊びに興味を持ち、コリンとミラベルが説明をし始める。

 そんな騎士達と妹弟を楽しそうに見ながらああそうだ、と手をポンと叩く。

「オーウェン様。先程お話すると申し上げた“秘密”ですが……お教えしましょうね。

 秘密って言うのは、この遊びを作った人のことなんです。

 実はこれ全て……クロエが思い付いた遊びなんですよ。……ビックリでしょ?」

 とオーウェンに語ると、彼は顎が外れたように口をあんぐり開けて驚愕した。

「……何だと!これを……クロエがっ!」

 とライリーの肩を握って揺らした。




次話は明日か明後日投稿します。

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